2016年09月08日16時54分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201609081654304

TPP/脱グローバリゼーション

あの大富豪兄弟が自由貿易推進のため新たな草の根運動を展開  コーク兄弟VSトランプ候補

  今日のニューヨークタイムズ国際版には興味深い記事が出ていました。今、揺れている大統領選挙との絡みで、アメリカの大富豪コーク兄弟が新たな政治運動を展開しているというものです。今年の大統領選は波乱に富んでおり、たとえば共和党ではTPPも含めて一切の自由貿易を批判するドナルド・トランプ候補が指名されました。これは自由貿易を推進してきた共和党では異例の事態です。そうした文脈の中で、危機感を抱いた大富豪のコーク兄弟(共和党支持者)はトランプ以後を視野に入れた長期的な自由貿易推進のための草の根運動を始めたというのです。 
 
  記事によれば兄弟が政治活動の基盤にしている財団、Americans For Prosperity Foundation(AFP)が、その草の根運動としてGrassroots Leadership Academy(草の根リーダーシップアカデミー)を立ち上げたのです。この草の根リーダーシップアカデミーでは参加者に、自由貿易の大切さを原理として教え、その推進のために各地で選出された国会議員へのロビー活動を行ってもらい、さらに地域レベルで政治のリーダーを育成し、足腰の強い新自由主義運動を展開していこう、というものだそうです。これは大統領選で民主党に2連敗を喫したことを教訓として、コーク兄弟が、オバマ政権の強さの基盤が草の根運動にあることから学んだものだと言われます。コーク兄弟は共和党の支援者の中でも影響力が大きな人々です。 
 
  コーク兄弟の草の根運動は今に始まったものではなく、2009年に誕生したオバマ政権の「改革」を骨抜きにするために、共和党右派のティー・パーティをテコ入れし、各地で草の根保守運動を推進し、2010年の国会議員選挙で大勝したという実績があります。 
 
  そして、気になるのが今年6月のニューズウィークの「トランプ正念場、共和党の巨大スポンサー・コーク兄弟のご機嫌伺いへ」という見出しの記事です。ウォール街をスポンサーに多額の選挙資金を得たヒラリー・クリントン候補に対抗するため、トランプ候補がコーク兄弟にアプローチをしている、というものです。果たして、その結果、どういう影響が出るのか未知数です。自由貿易の旗振り役であるコーク兄弟に財政支援してもらった場合、トランプ候補は自由貿易反対を実現できるのでしょうか。ここはこれから先のTPPの実現性を考える上で1つのポイントではないでしょうか。 
 
 
■ロイターの今年8月2日の記事’Powerful Koch brothers rebuff big donors' calls to back Trump for White House’(コーク兄弟は、トランプを応援せよ、という献金者たちの声を拒絶) 
 
  コーク兄弟は一人最低で年間10万ドル以上の拠出によって作られている富豪のネットワークを組織していると記されており、その会員は700人に及ぶという。このネットワークで政治資金をプールして、大統領選や議員選挙などにつぎ込むという。今回、富豪の会員たちの中からトランプ候補を支援してほしい、という声があがったが、この8月の記事の時点では領袖であるコーク兄弟は「今の状態ではどちらの大統領候補も支援できない」と語ったという。ただし、予備選の時に会員から出たトランプをつぶせ、という声にも動じなかったそうである。 
 
■Americans For Prosperity Foundation(AFP) 
https://americansforprosperity.org/find-many-jobs-state-lose-15-minimum-wage/ 
  コーク兄弟が作った政治活動の財団で自由貿易推進や小さな政府、規制緩和などを訴えている。また、民主党予備選のバーニー・サンダース候補が提案した時給15ドルになれば全米で900万人の職が失われる、と警告を発している。 
 
■Grassroots Leadership Academy(草の根リーダーシップアカデミー) 
http://grassrootsleadershipacademy.org/ 
 AFPが運営しているという草の根保守政治運動。NYTによれば各自治体レベルで政治を変えていくためのリーダーを育成する。6週間の研修を2回行い、その課題をクリアしたリーダー候補はAFPの本部で3日間の最終研修を受ける。交通費やホテル代などの費用は財団から拠出されるという。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。