2016年09月23日02時12分掲載
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国際
アメリカのシリア軍「誤爆」と米国防総省 NYT社説(9月16日付)に潜む暗示
中東に詳しい平田伊都子氏が触れたように9月17日、アメリカ軍が停戦違反とも受け取れるシリア軍への爆撃を行いました。この概要については平田氏の記事を参照していただくとして、振り返ると、9月16日付のニューヨークタイムズ国際版の社説がシリア停戦の見通しが不透明であることを匂わせていたことに注目せざるを得ません。
http://www.nytimes.com/2016/09/15/opinion/americas-mr-diplomacy.html?_r=0
その社説は’America's Mr. Diplomacy'(アメリカのミスター外交)と題するもので、通常は2つの社説が入るスペースをこれ1本で埋めた力の入ったものでした。アメリカのミスター外交とは国務長官のジョン・ケリー氏を指しているのですが、このケリー長官の3年間の功績を振り返り、不可能なミッションに挑戦して欲しい、という願いの入ったものでした。社説ではケリー長官とオバマ大統領が2013年の秋にシリアの化学兵器撤去を条件にシリア政府軍の空爆を回避したことに触れながら、今回、9月12日に発効した停戦が先行き不安定であることを書き、だからこそ、最後のチャンスを固めてほしい、としています。
ここで気になるのはNYT社説が停戦の先行き不安定のアメリカ側の要因として触れていることです。ケリー長官がロシアと合意した停戦合意が1週間継続すれば、米ロ間でシリア国境線内のイスラム国の拠点の情報をシェアすることになっていたというくだりです。これはロシア軍がイスラム国を攻撃すると言いながら、実際には米国と有志連合が軍事的にテコ入れしているシリア反政府軍を攻撃しているじゃないか、と米国が非難したことに端を発します。それなら、対象とする軍事目標の情報を米ロ間でシェアしよう、ということになったのですが、社説によれば米国防総省長官のアシュトン・カーター氏が強く反対していたというのです。そして、米国防総省の高官たちは停戦合意の条件を順守するかどうか明言することは拒否した、とまで書いていました。
停戦が始まったのが12日ですから、1週間後の19日まで停戦が続けば軍事情報のシェアが要求されたことになります。この件は今後、どのように推移していくのでしょうか。今回の誤爆とは無縁だったのでしょうか、それとも誤爆の理由だったのでしょうか。そして、共闘を呼び掛ける米軍がなぜロシアとイスラム国の情報共有を頑なに拒んでいるのか、そこも今後、注目されるところです。
■シリア誤爆 米露の確執、拡大必至 国連で非難応酬(毎日)
http://mainichi.jp/articles/20160919/ddm/002/030/070000c
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