2016年10月16日22時55分掲載
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文化
政治闘争の勝敗を最初に決めるのは言語をめぐる闘い ガエル・ノアン (Gaëlle Nohant 作家)
今日、日本では言葉の使い方が変わってきています。たとえば「保守」という言葉も過去とは異なる意味で使う政治学者が現れています。実は、同じ現象がフランスにもあるのだ、と言います。フランスの作家のガエル・ノアン(Gaelle Nohant)氏です。以下はノアンさんからのメッセージです。
Ma lecture utile du moment, absolument passionnante, me conforte dans l'idee que toutes les guerres et toutes les batailles politiques se gagnent d'abord sur le terrain du langage.
「今、私が読んでいる有益な本がこれです。非常に熱心に読んでいます。ビクトル・クレンペラー著「第三帝国の言語」です。この本を読みながら、私は自分の考えが固まっていくのを感じています。それはつまり、あらゆる戦争も、そしてあらゆる政治闘争もまずは言語の領域から勝ち取られていくものだ、ということです。
On assiste aujourd'hui a un "retournement" du langage : on qualifie de "bien-pensants", les gens qui combattent le racisme, qui defendent une certaine idee de la tolerance, de la democratie, un pays accueillant aux migrants.
今日、フランスでは言葉の使い方が転換しているのを日々体験しています。たとえば 'bien-pensants' = 「保守主義」という言葉がそうです。人種差別主義と戦ったり、寛容な考え方や民主主義を守ったり、移民を受け入れたり、こういう人を保守主義者と呼ぶようになりました。
Alors que dans l'Histoire de France, les bien-pensants etaient jusqu'ici les reactionnaires, ceux qui etaient pour le rejet de l'etranger, une Republique autoritaire, une liberte sous controle, notamment pour les femmes : interdiction de l'avortement, rejet de l'homosexualite...
しかし、フランスの歴史を振り返ると、保守主義というのは最近まで反動を意味したのです。たとえば外国人を拒絶したり、権威主義国家を志向したり、自由に制約をつけたり、とりわけ女性の自由を束縛したり〜たとえば中絶を制約したり禁止したり〜あるいは同性愛を拒絶したり...
Aujourd'hui on a inverse la definition pour laisser penser que les bien-pensants sont les defenseurs de la liberte et de l'ouverture aux refugies, et pour donner l'idee que ces "bien-pensants" sont les sectaires et que ceux qui defendent une vision raciste et reactionnaire de la France symboliseraient aujourd'hui "la liberte de penser" et l'impertinence.
今日では「保守主義」という言葉の定義を人々は転換したのです。保守主義とは自由を守り、難民に手を広げる、といった方向の考え方を指すのです。「保守主義」はこれらの価値を非常に厳格に守る態度を示しています。一方、人種差別主義的な考え方や反動的な考え方の人々は「思想の自由」とか、非常識さを象徴している、と見られることになりました。」
ガエル・ノアン(Gaelle Nohant 作家)
※ノアン氏のホームページ
http://gaellenohant.com/
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