2016年11月09日01時36分掲載  無料記事
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国際

米大統領選の泡沫候補たち  メディアに無視され続けた緑の党のジル・スタイン候補とリバタリアン党のゲイリー・ジョンソン候補

  11月8日、いよいよ米大統領選の投票日。ニューヨークタイムズの常連漫画家 Chapatteが米大統領選を風刺する漫画を出したばかりです。夜の選挙特番で居間のテレビの前に幼い子供が一人。テレビ画面は2016年大統領選の結果。ソファの裏で両親が耳をふさぎ、目を覆っています。どちらが勝っても悪夢なのでしょう。 
http://www.nytimes.com/2016/11/07/opinion/chappatte-on-pre-election-jitters.html?rref=collection%2Fbyline%2Fpatrick-chappatte&action=click&contentCollection=undefined®ion=stream&module=stream_unit&version=latest&contentPlacement=1&pgtype=collection 
  ヒラリー・クリントン候補(民主党)が勝っても、ドナルド・トランプ候補(共和党)が勝っても、どちらも悪夢だ、というアメリカの多くの市民の思いを代弁しているのです。ところでいつもこうした風刺漫画を見て不思議に思うのは緑の党とリバタリアン党からも候補者はいて、クリントン候補もトランプ候補も嫌なら、残る二人に投票したらいいんじゃないか、ということです。しかし、メディアは二人をほとんど黙殺状態。大統領選の3回のテレビ討論からも二人ははじき出されていました。 
 
  これってどこか変じゃないですか? 4つの政党から4人の大統領候補者が出ているのに二大政党の候補者しか恒例のテレビ討論会に登場させないことが、です。もちろん、自己宣伝目的の泡沫候補で、見解も非常識ならともかく。緑の党のジル・スタイン候補は内科医で政策もしっかり持っていますし、リバタリアン党のゲイリー・ジョンソン氏も政策見解を持っています。過去を思い出せば1992年の米大統領選ではビル・クリントン候補(民主党)、ジョージ・H・W・ブッシュ候補(共和党)の二大政党の候補者に加えて、ロス・ペロー候補もテレビ討論会に参戦しているのです。この時、ロス・ペローはブッシュ候補の票を食ったため、ビル・クリントン候補の勝利に寄与したと言われています。 
 
  今回、報道番組の「デモクラシー・ナウ!」は緑の党のジル・スタイン候補に独自にスタジオで発言の機会を与えました。とはいえ、ゲイリー・ジョンソン候補は招かれませんでした。スタイン候補は二大政党制はもうアメリカに適していない、と発言していました。二大政党の二者択一で本当に有権者は自分の政治を託せると言えるのか、と言うのです。これは大統領選挙だけでなく、上院と下院、そして地方議会を含めたアメリカの政治システム全体を視野に入れた発言であり、もし大統領選で敗れたとしても、スタイン候補の発言を忘れない有権者もいることでしょう。 
 
  もし、今回の大統領選でスタイン候補がメディアの注目を浴びれば、ヒラリー・クリントン候補の票を食った可能性があります。ゲイリー・ジョンソン氏の場合は共和党のトランプ候補の票を食ったかもしれません。二大政党の候補が伯仲している場合はこうした二大政党以外の候補者が大統領選の勝敗に影響を与えるのは確かです。そのことが、今回メディアが緑の党やリバタリアン党の候補者らを無視したことに関係している可能性はあると思います。泡沫候補をどう報道するか、を通してメディアは米大統領選挙を左右できる可能性もあると思います。今回の大統領選挙がどちらが勝っても絶望だ、という声ばかりが聞こえてくるのは、二大政党しか報じない偏った米メディアの責任でもあると思います。絶望だ、絶望だと言っている割にはその他の選択肢の可能性に自ら目を閉ざしているのです。 
 
 
■米大統領選 緑の党のジル・スタイン候補の発言  「Democracy now !」が独自編集して組み込んだ拡大討論会 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201610111307142 
 
■追い詰められたオバマ大統領〜NYTの漫画より〜風刺漫画家 Patrick Chappatte 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201308311044236 
 
■あの大富豪兄弟が自由貿易推進のため新たな草の根運動を展開  コーク兄弟VSトランプ候補 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201609081654304 


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