2016年11月10日00時07分掲載
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環境
ヨーロッパエコロジー=緑の党(EELV)地方支部長に聞く 〜その1〜 現在のフランスの原発問題と福島原発事故について Interview : Nadine Reux, Secrétaire régionale EELV Rhône-Alpes
原発大国フランスで目下、電力の危機が起きています。日本の原発部品業者がフランスに納品した部品の強度が基準値以下であることが摘発されて現在、18基の原発が稼働停止となっているのです。今、フランスの原子力政策の見通しはどうなっているのでしょうか。今回、フランスの環境政党であり、来年は大統領候補も擁立するヨーロッパエコロジー=緑の党のローヌ=アルプ地域圏支部のナディーヌ・ルー(Nadine Reux)支部長にインタビューを行いました。
ローヌ=アルプ地域圏はアルプス山脈を擁し、フランス第二の都市リヨンを含んでいます。地理的にはフランス中東部に位置し、スイスやイタリアと国境を接していますが、行政区的には今年からオーベルニュ地域圏と合併し、オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏となりました。
(以下はナディーヌ・ルー支部長へのインタビュー)
1) L’opinion sur Fukushima
Europe Ecologie - Les Verts a tout d'abord une pensee forte pour les populations japonaises impactees par ce desastre, pour les familles de victimes, pour les personnes blesses ou deplacees loin de Fukushima. Nous pensons egalement aux consequences sur l'environnement, qui sont elles aussi desastreuses, et ce pour des centaines ou des milliers d'annees. La terre, l'air, mais aussi l'ocean est impacte, ce qui est un phenomene nouveau, inconnu lors de l'accident de Tchernobyl. Depuis 30 ans et la creation du parti ecologiste en France, nous luttons pour l’arret et la fermeture des centrales nucleaires, afin d'eviter justement d'avoir a gerer les consequences de tels evenements. Meme si ceux-ci sont rares, ils se produisent et ont des consequences tragiques a court, moyen, et long terme pour les populations et l'environnement. C’est la tragique demonstration que le risque zero en matiere nucleaire n’existe nul part.
ヨーロッパエコロジー=緑の党(EELV)はまず福島原発事故の被害者の方々のことを非常によく考えています。被害を受けた家族や負傷した方々、そして遠くへの移住を余儀なくされた方々のことです。さらにまた福島原発事故が環境に及ぼす影響を考えないではいられません。しかも何百年も何千年にも及ぶ影響です。大地と空気とさらに海洋が汚染されました。海洋汚染はこれまでなかった新しい事態です。チェルノブイリ事故の時も海洋汚染はなかったのです。
チェルノブイリ事故から30年が過ぎました。フランスにはエコロジー党が生まれて、チェルノブイリ事故のような事態の悪影響を避けるために原子力発電所を閉鎖するための闘争をしています。そのような事故は稀であったとしても、ひとたび起きてしまえば短期、中期、長期にわたる悲劇的な事態を住民と環境にもたらすのです。原発事故は原子力に関しては危険性がゼロというようなことはあり得ないことの悲劇的な証明なのです。
Aujourd'hui, il est necessaire de mettre tous les moyens pour contenir la propagation des radiations autour de Fukushima, et ce tout en respectant drastiquement la securite des travailleurs. Enfin, il ne faut surtout pas re-ouvrir toutes ces centrales et investir massivement dans les economies d’energies et les energies renouvelables.
今日、福島の周辺に放射能が広がることを防ぐためにあらゆる手段を講じるべきです。しかも、その手段においては対策に携わる労働者の安全を徹底的に尊重しなくてはなりません。最後に、すべての原子力発電所は絶対に再稼働してはいけません。そして、エネルギー産業に投資を行い、再生可能なエネルギーを開発すべきなのです。
2) Sur l’ electronucleaire en France
Encore plus qu'au Japon, la France est dependante de l'energie nucleaire. Un vaste programme de nucleaire civile a ete lance dans les annees 1960 pour permettre au pays d'avoir une soi-disant independance energetique et une electricite a bas cout, mais surtout d’acquerir la force de dissuasion nucleaire pour etre un ” grande puissance militaire ”. La promesse d’une electricite abondante, peu chere et "100% francaise" a longtemps ete au coeur du recit de la modernisation de l’appareil productif francais, un progres technique profitant a tous et permettant une avancee scientifique sur le reste du Monde.
フランスでは日本以上に原子力発電に依存しています。フランスで原子力発電プロジェクトが大々的に始まったのは1960年代です。当時はエネルギーで他国に依存しないようになることの大切さや電気代の安さが盛んに訴えられました。しかし、一番の理由は核抑止力を得て「軍事大国」の地位を得ることだったのです。豊富で安く、100%フランス製の電力を供給するという約束こそフランスにおいて長い間、科学振興という神話の中心に位置していたのです。それは生産施設を近代化することが、そして技術が進歩することが国民すべてのためになり、世界全体の科学技術の発達を推し進めるのだ、というものでした。
Les Ecologistes ont longtemps ete les seuls sur la scene politique a critiquer ce choix, notamment des la candidature aux presidentielles de Rene DUMONT en 1974. Le contexte actuel de crise energetique, de l’aberration du nucleaire civile, tant d’un point de vue economique (investissement colossaux de nouveaux programmes, absence de provisionnement du cout du demantelement), technique (non maitrise du risque, l’alea dans la gestion des dechets), environnemental et surtout humain, remette profondement en causale dogme energetique francais. De plus, la France n'est pas du tout independante car tout l'uranium est importe, principalement d'Afrique. Selon les evolutions geo-politiques, la France pourrait tres rapidement etre a court d'approvisionnement. Enfin, le risque d'accident est toujours present, il y a regulierement des incidents, heureusement sans consequences jusqu'ici.
エコロジー運動はそんな中、フランスの原子力政策に反対したフランスで唯一の政治的勢力でした。フランスのエコロジー運動は1974年には(先駆的な理論家である)ルネ・デュモンを大統領候補として送り出しています。今日のエネルギー危機や原子力の民生開発における異常は、いずれもフランスのエネルギーに関するドグマに起因するものです。というのは、まず原子力発電はまったく経済的に見合わないということです。新しいプロジェクトには巨額の投資が必要ですし、原発解体に必要なコストの事前の準備は皆無です。また、技術の面においてもリスク管理ができていませんし、放射性廃棄物の管理においても不測の事態がないとは限りません。さらには環境対策でも労務管理でも問題だらけなのです。
さらにフランスは電力を100%自給しているどころか原料のウランは全量輸入しているのです。とくにアフリカからの輸入がメインです。地政学的な今後の変化を考慮すればフランスは急激にウラン不足になる可能性があります。結局、事故の危険性は常に付きまとっています。事故は定期的に発生しています。ただ、幸いなことに今日まで大きな事態には至っていないということです。
De nombreuses centrales sont placees en zones inondables ou sismiques (meme si nous ne sommes pas sur une faille comme au Japon), et aujourd'hui meme, en novembre 2016, 18 des 58 reacteurs nucleaires sont a l'arret pour raison de securite, ce qui n'augure rien de bon. C'est pourquoi il est indispensable de realiser une transition energetique, en promouvant les energies renouvelables pour remplacer le nucleaire a l’horizon 2050. Plusieurs etudes et scenarios prospectifs, notamment de l’ADEME (agence nationale pour l’environnement) en ont demontre la faisabilite technico-economique.
フランスの多くの原発は洪水で水没しうる場所に設置されています。また、地震が起きる地域にも数多く設置されています。ただ、日本のような断層の上にはありませんが。2016年11月には〜今日も同じですが〜58基の原発のうち、18基が安全面での不安から稼働停止になっています。こういうわけで、2050年を目標に原子力発電から再生可能エネルギーへの移行を実現することが欠かせないのです。すでに数多くの研究や移行のためのシナリオが作成されており、特にフランス環境・エネルギー管理庁(ADEME)によるものが挙げられますが、これらの研究が代替エネルギーの技術的・コスト的な実現可能性を実証しているのです。
インタビュー
村上良太
Ryota Murakami
■ヨーロッパエコロジー=緑の党(EELV)地方支部長に聞く 〜その2〜 自由貿易協定とミツバチについて Interview : Nadine Reux, Secretaire regionale EELV Rhone-Alpes
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■ヨーロッパエコロジー=緑の党(EELV)地方支部長に聞く 〜その3〜 来年のフランス大統領選とBrexit (英国のEU離脱 )について Interview : Nadine Reux, Secretaire regionale EELV Rhone-Alpes
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■山田文比古著「フランスの外交力〜自主独立の伝統と戦略〜」(集英社新書)
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■日仏共同声明「原発は重要です」〜フランス大統領の核政策〜
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■フランスの核政策 社会党の大統領選候補者を反核団体はこう見る
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