2016年11月27日23時10分掲載  無料記事
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欧州

ヨーロッパ圏で広がるイスラム教徒への偏見

 9.11(米国同時多発テロ事件)以降、当初は米国とウサマビンラディンとの戦いが、米国主導の有志連合20か国とアフガニスタン・タリバンとの戦い、イラク戦争、IS(イスラム国)の誕生、そしてヨーロッパ圏やアジア圏でのイスラム過激派によるテロへと負の連鎖が続いている。 
 
<ヨーロッパ圏でテロが発生する要因> 
 ヨーロッパでのイスラム過激派によるテロの始まりは、2004年3月11日に発生したスペイン・マドリードでの列車爆破事件であった。このテロで191人が死亡している。 
 翌年2005年7月7日には、イギリス・ロンドンで同時多発テロが発生して56人が死亡した。 
 昨年11月13日には、フランス・パリで同時多発テロが発生し、130人以上もの死者が出た。 
 そして今年7月、ドイツ・バイエルン州でもテロが発生した。 
 ヨーロッパでこうしたテロが頻発している理由はいくつかあるが、まずは米国とアフガニスタンとの戦争にヨーロッパ諸国が米国に味方する形で参戦したことが挙げられよう。私の母国・パキスタンに住む友人・知人に聞いてみても、多くの者が「アフガニスタンと米国の戦争に、なぜヨーロッパがアメリカ側に立って参加するのか」と語っている。 
 また、ヨーロッパ圏とイスラム圏が地理的に近接していることも挙げられる。ヨーロッパ圏には現在46万人ほどのイスラム教徒が住んでいるが、その一部はジハードを信じている。ISは、その人たちに対してSNS等インターネットを通じて取り込みを図り、イスラム教の教義を利用してヨーロッパ圏で自爆テロを起こさせているわけだが、私が現在居住するイタリアでもISが自爆テロを起こすのではないかと言われていて、ローマやミラノでは厳戒態勢が敷かれている。 
 なお、ISの次の計画は、ヨーロッパ圏でISに代わる組織を作ることだと言われている。 
 
<広がるイスラム教徒への偏見> 
 ISが起こすテロにより、現在、世界の全宗教の中でイスラム教が最も嫌われていると言えよう。特にヨーロッパ圏では、ISのせいでイスラム教徒は嫌われ、「イスラム教徒=テロリスト」と偏見の目で見られ、差別を受けることが増えている。閉鎖に追い込まれたモスクも少なくない。イタリアでもイスラム教徒に対する差別は広がっていて、イスラム教徒の子どもが学校でいじめに遭ったことを耳にしたことがある。 
 しかし、私は「テロを起こしているのはISであって、本来のイスラム教徒ではない」と声を大にして言いたい。ISは、私を含めイスラム教徒の多くから反感を買っている存在なのである。 
 
<本来「ジハード」とは> 
 米国やヨーロッパ、日本の人々は「ジハード=自爆テロ」と思い浮かべるかもしれないが、元来ジハードという言葉にそのような意味はない。イスラム教の教えでは、ジハードという言葉には「悪いことはしてはいけない」という意味が含まれている。したがって、他国で活動資金を調達し、無差別に人々を殺すことはイスラム教に反するのである。 
 イスラム教は“平和の象徴”であって、テロリズムとは正反対の存在である。聖典コーランには「1人の人間を殺すことは、全ての人間を殺すことである」とも書かれている。イスラム教の教義がテロを引き起こしていると思われがちだが、正しく解釈すれば理由もなく人を殺すことはないのである。 
 イスラム教徒であるというだけで、そうでない人以上に警戒され、チェックを受けている日々であるが、「テロが引き起こされるのは、イスラム教が原因ではない。イスラム教は利用されているだけである」というのが大多数のイスラム教徒の思いなのである。(イタリア・ロンバルディア州=アシフ・ムハンマド) 


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