2016年12月05日22時54分掲載
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核・原子力
原発の廃炉費用を国民にまわすな 根本行雄
11月27日、東京電力福島第1原発事故の賠償や廃炉などにかかる費用が総額20兆円超に上り、従来の政府想定のほぼ2倍に膨らむと経済産業省が試算していることが判明した。11月29日、チェルノブイリ原発4号機を覆う巨大な鋼鉄製シェルターの設置が完了し、式典が行なわれた。福島第一原発はまだ汚染水対策も十分ではなく、廃炉作業もろくろく進んでいない。こういう現状でありながら、日本政府や原発推進者たちは、老朽化した原発の運転期間をさらに延長し、再稼動をしている。このような現状を維持しながら、彼らは廃炉費用の負担を国民にまわそうとしている。
2011年3月11日、東日本大震災が発生し、地震と津波により、東京電力福島第1原子力発電所は4基のうちの3基の原発が炉心溶融(メルトダウン)を起こし、別の1基では燃料プールでの燃料溶解を起こした。この事故は、チェルノブイリ原発事故に次ぐ、(国際原子力事故評価尺度によれば)レベル7の事故である。現在もなお、事故処理は遅々としており、原発を安全に動かし、管理していく科学技術は達成されていない。それは未来においても、確立されることのない科学技術である。しかし、日本政府は2014年4月、原発を安定的な電力供給に必要な重要な電源であると位置づけ、15年7月に電源構成で原発の比率を「30年度は20〜22%」にするという方針を決めた。そして、九州電力川内原子力発電所1号機(鹿児島県)は2015年8月11日に再稼働し、9月10日から営業運転に入っている。再稼動は、もう一度、レベル7の事故が起きる危険性があることを無視した暴挙である。
日本政府は未曾有の原発事故を経験しながら、今もなお、原子力発電を推進しようとしている。しかし、このまま再稼働を進めていこうとしても、現在の原発だけでは「安定的な電力供給」を達成することはできない。どうしても達成しようとすれば、原発を新規に増設するか、老朽化した原発の運転期間(原則40年)をさらに延長することが必要となることは明白だ。政府と原発推進派は、お金をばらまきながら、「福島の事故を教訓に、より安全な原発を」とデマを広めているのが現状だ。
□ 廃炉の費用
11月27日、東京電力福島第1原発事故の賠償や廃炉などにかかる費用が総額20兆円超に上り、従来の政府想定のほぼ2倍に膨らむと経済産業省が試算していることが判明した。政府は拡大する費用の一部を東電を含めた大手電力と新電力(電力自由化で新規参入した業者)の電気料金に上乗せする方針であり、国民負担の増大は必至である。
毎日新聞2016年11月27日より、宮川裕章、岡大介両記者の記事を引用する。
政府の従来の想定は、賠償=5.4兆円▽除染=2.5兆円▽汚染土を保管する中間貯蔵施設の整備=1.1兆円▽廃炉=2兆円の計11兆円となっていた。
新たな試算は、賠償が約8兆円、除染が4兆〜5兆円程度に膨らむ見通し。廃炉も従来の2兆円が数兆円規模で拡大する公算が大きい。中間貯蔵施設の整備費は変わらないが、全体では20兆円を上回る見込みとなった。
政府の従来想定は2013年末時点に見積もったが、賠償や除染の対象が増加している。廃炉も原発内に溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出し費用などが拡大。経産省は既に現状で年800億円の費用が年数千億円程度に達するとの試算を明らかにしている。
□ チェルノブイリ原発の4号機を覆う新しいシェルター
30年前に事故を起こしたウクライナのチェルノブイリ原発4号機は、事故後、コンクリート製の「石棺」で覆われたが、老朽化で再汚染の危険が高まり、対策が急務となっていた。新しく、4号機を覆う巨大な鋼鉄製シェルターの設置が完了し、11月27日、同国のポロシェンコ大統領らが参加して式典が開かれた。このシェルターの設置は放射性物質を封印するのが目的であり、耐用年数100年で約15億ユーロ(約1780億円)が国際支援により投じられたという。今後はシェルター内部で4号機を解体し、溶けた核燃料を取り出す最も困難な作業に移る手順となるが、さらに膨大な資金が必要になることは必至である。
□ 廃炉の費用負担
毎日新聞2016年11月27日より、宮川裕章、岡大介両記者の記事を引用する。
費用の工面について、政府はこれまで、賠償は国の原子力損害賠償・廃炉等支援機構がいったん立て替え、東電を中心に大手電力が最終的に負担金を支払い▽除染は国が保有する東電株の売却益を充当▽中間貯蔵施設は電源開発促進税を投入▽廃炉は東電が準備−−との枠組みを示してきた。
政府は、賠償費の増加分について、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の立て替え増額を検討。これとは別に、大手電力や新電力が送電会社の送電線を利用する料金への上乗せも検討している。この料金は政府の認可制となっており、最終的に電気料金に転嫁される。
除染費も東電株の売却益で賄えない可能性が高く、東電などに負担を求める案が検討されている。その場合、最終的に電気料金に転嫁される可能性がある。
廃炉費は、東電が他社との提携などによる経営効率化で捻出した資金を積み立てる制度の創設を検討する。ただ、東電が経営努力のみで賄いきれるかは不透明で、電気料金の引き上げにつながる可能性もある。
廃炉の費用は、チェルノブイリ原発の例をみれば容易にわかるように、さらに膨大な資金が必要になることは必至である。福島第一原発はまだ汚染水対策も十分ではなく、廃炉作業もろくろく進んでいない。こういう現状でありながら、日本政府や原発推進者たちは、老朽化した原発の運転期間をさらに延長し、再稼動をしている。このような現状を維持しながら、彼らは費用の負担を国民にまわそうとしている。こういう陋悪をいつまでも許しておく訳にはいかない。
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