2016年12月15日21時18分掲載
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アジア
モンゴル:都市再開発で住民数千人がホームレスの恐れ
国際人権団体アムネスティの国際ニュースは、モンゴルの首都ウランバートルでは、住民数千人が都市再開発に伴う強制立ち退きによりホームレスとなる恐れがあると報じた。モンゴルでは、何十万という遊牧民世帯が草原での生活をやめ、都市郊外にゲル(放牧民の伝統的な移動式住居)を組み立て。住みついている。都市再開発事業はそうした地域を対象としたものだが、住民の声の聞き取りや状況把握が不十分なため、当事者の住民は、さまざまな人権問題、特に適切な住居に住む権利の侵害を受けやすい、とアムネスティは伝えている。(大野和興)
アムネスティはウランバートルの都市開発状況を調査結果を次のように報じている。
モンゴルの首都ウランバートルでは、住民数千人が都市再開発に伴う強制立ち退きによりホームレスとなる恐れがあるが、当局は住民を切り捨てようとしている。
アムネスティは、ウランバートルの都市開発状況を調査し、報告書にまとめた。その中で、住民が置かれている窮状を取り上げ、立ち退きとそれに伴う補償、再定住に関する情報不足により機能不全を起こしている都市再開発計画を検証した。
◆ウランバートル再開発の課題
現在のウランバートル再開発計画は、24のゲル居住地域や構造上住むには危険と思われる公営住宅の住民を対象としている。同地域には、ウランバートルの人口130万人のおおよそ9%が居住している。
ゲル居住地域には、一般住宅とゲル(伝統的なフェルト製円形住居)が混在しているが、道路、水道、公衆衛生、暖房などの基本インフラが未整備であることが多い。住民の数は過去10年で倍増した。何十万という遊牧民世帯が草原での生活をやめ、都市郊外に住みついたからだ。彼らは、空き地を見つけ、塀で囲み、ゲルを組み立てるのが普通だ。そして生活を維持していくための糧を探す。
この再開発計画は、新旧の住民双方が住み心地のいい住居に住み、公共サービスを受けられるようになるなど、生活環境を大きく変える可能性を秘めている。さらに、土地利用方法の改革や暖房や水道の供給方法の改善などにより深刻な大気汚染の対策にもなリえる。
しかしながら、具体的で総合的な決まりがなく、住民の声の聞き取りや状況把握が不十分なため、当事者の住民は、さまざまな人権問題、特に適切な住居に住む権利の侵害を受けやすい。
◆法的保護の欠陥
住民を移転させる今回の政策の大きな問題は、土地所有権がない住民や住民台帳に氏名が記載されていない住民は、立ち退き・再定住の手続きから除外されていることだ。
十分な話し合いや補償もない立ち退きでは、強制立ち退きなど深刻な人権侵害が起こる恐れがある。また、都市再開発計画が掲げる「健康で安全、快適な住環境の確保」という目標と矛盾する。
現行の法律のもう一つの欠陥は、再開発により影響を受ける住民に対し、平等な扱いと事前協議を保障する具体的な策がないことだ。
◆高まるホームレスの可能性
近年、再開発に関する主要な法律と政策が改正され、時には正当な改正もあった。しかし、こうした法改正が、実際に立ち退きや移住に直面した時どう自分たちに影響するのか、住民たちには知らされていない。
ある住民によれば、彼女の家族はサインすれば不利益を被る可能性がある建築会社との契約書にサインせざるを得なかった。建築会社は、契約書の内容で拒否するならば、「強制立ち退きを認める法律があるんだぞ」と告げられた。
再開発計画の着工時に、住民には新しい家ができるまで一時的に住居を借りる資金を支給するという申し出がよくあった。しかし、開発業者は現在の景気低迷に対応する準備をしていなかったため、多くの計画が頓挫し、長期的な資金提供ができなくなった。住民には、転居先の家賃を自分で払う余裕はない。
政府は、住民の権利を第一とし、都市再開発により影響を受けるすべての住民が協議に参加できるようにしなければならない。関係住民に自分たちの権利を周知させることが政府の責任である。
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