2016年12月30日00時25分掲載
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人権/反差別/司法
50歳という名のトンネルを壊そう フランスの女優たちが立ち上がる 成人女性の2人に1人が50歳以上なのに登場の割合が10%未満なのは納得できない・・
フランスにはAAFAという名の1年前に生まれたばかりの新しい俳優協会があります。発足時の会員は325人です。筆者の知り合いの女優も参加しています。この俳優協会で今、熱心に取り組んでいるテーマの1つが「50歳のトンネル」という問題です。50歳のトンネルというと、日本のテレビ産業でもディレクターは50歳を越えたら仕事がなくなる、と言われています。変化の激しい世界で50歳を越えたらもう「アウト」という常識があるのです。実は40代になるとすでにディレクターはプロデューサーに転じていき、次第に現場に出なくなっていきます。もちろん、人によっては70代まで現役で活躍している人も中には存在しています。とはいえ、現場で取材をしているディレクターの大半が40歳未満ということは日本のテレビ界の1つの特徴と言えるでしょう。
さて、今、フランスの俳優協会であるAAFAが訴えている「50歳のトンネル」というのは正式に言えば「女優の50歳のトンネル」です。男優のことではないんですね。女優が50歳を過ぎて65歳まで仕事の機会がぐっと激減してしまうことを批判しているのです。批判というより憤りと言ってもよいかもしれません。テレビに出演する俳優全体を年齢別に統計したら(2012年)、50歳以上の女優はわずか10%未満だったと言うのです。AAFAによれば成人女性の二人に一人は50歳以上なのに、なぜ映像では10%未満なのか。そして、65歳以上になるとお婆さん役で少し出演の機会が増えるそうです。
このことはちょっと不思議な気がしませんか。フランスというと、日本の少女趣味と比べると、成熟した女性を好む風土と言われてきました。実際、女優でもナタリー・バイやカトリーヌ・ドヌーブ、イザベル・ユペールなど、いわゆる熟女と言う年齢になっても映画でバリバリ活躍している女優は少なからず存在しています。しかし、全体像を見たら女優全体のごく少数に限られているのかもしれません。実際の社会では50歳から65歳の女性たちは社会の中核として様々な現場で活躍しているにも関わらず、ビジュアルな作品の世界で10%未満の出演割合しかなければその映像はかなりバイアスのかかった世界ではないか、という問題提起です。「女性には老いる権利はないの?」というのが彼女たちの真摯な問いかけなのです。
そうした社会への怒りや疑問を蓄えた彼女たち(と共鳴する男優たち)が1月6日にパリでシンポジウムを催します。タイトルは「50歳以上の女性たちの奇妙で不思議な運命」です。女優や社会学者、医師、映画監督、雑誌編集者など多彩なパネラーが参加する予定です。
村上良太
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