2017年01月02日00時23分掲載
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文化
読書家の新年の挨拶 〜 本の価値を守り、次代へ受け継いでいく 〜 書評家・ジャーナリスト、ジャン・ビヤンボーム(Jean Birnbaum)
フランスのルモンド紙で書評を扱う「本の世界」を担当しているジャーナリストのジャン・ビヤンボーム(Jean Birnbaum)氏の新年に臨んだ挨拶です。
Voeux pour 2017
謹賀新年 2017年
Il y a plus de quarante ans, mes parents se rencontraient a la Bibliotheque nationale, situee alors rue Richelieu.
僕の両親がパリのリシュリュー通りにある国立図書館で会うようになってから40年以上になります。
Aujourd'hui, je savoure le bonheur de m’y lover a mon tour comme on s’enfonce au fond d'un berceau, ne serait-ce que pour quelques journees fugaces.
今日僕自身がこの図書館に身を沈めて、まるで揺りかごの底に身を沈めるかのように、幸せをかみしめています。たとえそれがはかない数日の間のことであろうとです。
Bonheur surtout de m'y trouver en ce 31 decembre et donc de vous souhaiter la bonne annee depuis ce lieu fecond ou l’on peut se blottir dans le tissu des lettres, recevoir la haute chaleur du papier, se livrer corps et ame a la << caresse graphique>> dont parlait Roland Barthes.
なんといっても12月31日にこの場所にいられる幸せ。そしてこの豊饒な場所から皆さんの新年の幸せを祈ることができる幸せを感じています。国立図書館の中でこそ人は無数の文学作品の織物(※)の中に身を寄せることができるのです。ここで人は紙が高い熱を放射するのを感じ、ロラン・バルトがかつて言っていた「文字の心地よさ」を心身に受けとめることができます。
Alors, courage et joie pour cette annee 2017 qui s’annonce si perilleuse, protegeons la force vulnerable des livres, defendons-les contre ceux qui les meprisent ou qui voudraient simplement les couper de la vie, escortons cette tradition de textes et de gestes, cette chaine de transmission dont nous savons qu’elle seule nous permet de tenir bon, de nous tenir bien.
思うに、2017年は危険な年だと言われていますが、勇気と喜びを忘れないようにしたいものです。傷つきやすい書物の力を保護し、本を蔑む人間たちから書物を守りましょう。あるいは書物を人生から単純に切り離そうとする人間から守らなくてはなりません。 文章や言動など人文の伝統を守り、またその価値を次世代へ伝えていきましょう。その行為によってのみ、私たちが頑張ることを可能にしてくれ、また気を確かに持つことを可能にしてくれるのです。
ジャン・ビヤンボーム(Jean Birnbaum)
ルモンド紙の書評欄「本の世界」を担当。
※ロラン・バルト著「テクストの快楽」の中に次の一節。
「『テクスト』は『織物』という意味だ。しかし、これまで、この織物は常に生産物として、背後に意味(真実)が多かれ少なかれ隠れて存在するヴェールとして考えられてきたけれど、われわれは、今、織物の中に、不断の組み合わせを通してテクストが作られ、加工されるという生成的な観念を強調しよう。この織物―このテクスチュール(織物)―の中に迷い込んで、主体は解体する」(沢崎浩平訳)
※フランス国立図書館 =Bibliotheque nationale
ウィキペディア 「フランス国立図書館(フランスこくりつとしょかん)(仏: Bibliotheque nationale de France、略称:BnF)は、フランスのパリを中心とした国立図書館である。1367年にシャルル5世によって創立された王室文庫(Bibliotheque du Roi)を起源とする。フランス革命により国立図書館(Bibliotheque Nationale)となり、以後帝政期には帝国図書館(Bibliotheque Imperiale)などとも呼ばれたが、1994年に現在の名称であるフランス国立図書館となった。
2区のリシュリュー通りにあるリシュリュー館(旧館)を母体とし、2014年現在は7つの施設で構成される。その中でも1994年に完成した13区のベルシー地区(トルビアック地区)にあるフランソワ・ミッテラン館が中心的な施設となっている。このほか、世界中から閲覧できる電子図書館「ガリカ」も運営している。現在も有効な1537年の法令により、フランス国内で出版される全ての印刷物は、必ず1部この図書館に保存されることになっている。図書館には1000万を超える書籍と35万束の原稿・写本に加え、地図、コイン、文書、版画、レコードなどが所蔵されている。」
■サンジェルマンデプレで行われた人類学者ルネ・ジラールへの追悼の集い ジャン・ビヤンボーム(Jean Birnbaum)
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■ジャン・ビヤンボーム著 「宗教に対する沈黙 〜ジハーディズムに直面した左翼〜」
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