2017年01月09日22時47分掲載
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コラム
4大学のメディアゼミの合同発表会を聴きに行く 木村結
学童疎開協議会のメンバーからのお誘いを受けて、立教大学、茨城大学、法政大学、大正大学合同によるメディアゼミの合同発表会に初めて参加させていただいた。現代の若者がどのようなことに関心を持っているのか興味津々。最初に私を含めた4名は学童疎開を経験された、つまり80歳以上の方々ですと紹介されてしまい面食らってしまったが、平均年齢20代の集団に身を置くのは何十年ぶり。どのゼミの報告も興味深く、5時間の長丁場ではあったが、報告会に参加して良かった。将来メディアで仕事をしようと考えている、漠然と憧れている若者たちが何に惹かれ、どう学び、解決しようとしているのかの一端を知ることができた。以下、率直な感想を綴ってみる。
〇 法政大学藤代ゼミは「バズるコンテンツは地域の課題を解決するか 〜島根県真砂地区を事例に 〜」
せっかく限界集落から情報発信して欲しいという依頼を受けフィールドワークしておきながら、その地域の住民との関係性や地域性の報告が全くない。ネットなどで話題にしてバズらせてしまったら地域を混乱させ迷惑をかけてしまうという遠慮から、その地域に取材せず、ネットで収集したバズった情報から推察して結論を導いている。何のためにフィールドワークしたのか、相手の懐に入っていかない、迷惑をかけたくない、面倒なことになるのは嫌だという若者たちが見えてくる。
注:「バズる」とは、SNSなどで話題になり一気に広まること。
〇 大正大学川喜田ゼミは「MANZAIを世界語に」
最初に仮説「言葉のカベを超えて漫才は世界へ羽ばたく!」を立てその仮説を証明するための資料を集めて結論を導いてしまったように感じた。吉本興業にプレゼンするなら、芸人が観客の前で直接ネタを披露する舞台に行き、漫才師たちの息遣いに触れたのだろうか?彼らに自分たちの研究課題をぶつけ意見を聞いてみたいとは思わなかったのだろうか?
〇 立教大学の砂川ゼミは「未来の被災者は私たち 〜東日本大震災に学ぶ、震災時の放送 〜」
東日本大震災直後に岩手、宮城、福島県を対象に行われた欲しかった情報の調査を基に分析し、近い将来起こりうる首都圏の地震のためにテレビ局とラジオ局が協力分担して地域情報を発信できるようにすることが緊急時の情報格差を解消すると具体的な時間割まで提案した。講評の石井彰氏も「テレビ局もラジオ局もそれが必要であると知りつつ結局話し合いを持つだけで進んでいない。それを学生が具体的に提言した意味は大きい。是非外に公表して欲しい」と絶賛した。
〇 茨城大学の村上ゼミは「メディア接触のリアルと感性の変化」
20代は1日7時間もSNSやスマホに接しているという調査結果のメディアの内容が曖昧である点から学生100人に聞き取り調査を実施。メディア接触をスマホ依存、ひたすらYouTube、ネッ友、スマホ検索、録画集中、とりあえずテレビ、編集、トリプルメディアの8タイプに分類し考察を重ねた。そして、自分が関心のある情報しか取らない、記憶はスマホ任せで、何でも検索。ついには「足臭い 辛い」や「21歳 1度も彼氏いない 辛い」など自分の悩みや感情を検索したり、Twitterでも「バイト 行きたくない」とつぶやくことで友達ではない誰かに悩みを打ち明ける若者像をもあぶり出している。これは調査票が時間経過に従って具体的に何をしていたかを記述する形式にしていたことが功を奏している。発表の女子学生も自分の言葉で語っていた。
〇 茨城大学の古賀ゼミは「多様性がキーワードLGBT〜ひとり一人が輝くために 〜」
冒頭日産が海外向けに作った同性婚カップルの家族を登場させたCMを観せ、企業や自治体ではLGBTへの取り組みは進んでいるが、国民の理解が進んでいない現状をWebや街頭調査のアンケート結果を示し問題提起している。ただ、LGBTの具体的な事例が見つけられなかったからなのか、女性差別、障がい者差別の情報も入れることで焦点がぼけてしまった。海外の事例や同性婚先進国のオランダやスェーデン諸国がどのように国民に周知されたかなどの情報が欲しかった。各国大使館などに資料を請求したりインタビューに行くなどの努力をして欲しかった。
5つのゼミにはプレゼンテーション賞など5つの賞が贈られ、最優秀賞は砂川ゼミに決定。5人の審査員が各々の発表を講評したが、中でも砂川ゼミの感想の中でも触れた放送作家の石井彰氏の講評が素晴らしかった。井上ひさしの「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」に務めて欲しい。舌を回すだけの話ではなく、吾を出し肌感覚で語って欲しい。また話の途中で声色を使って注意を喚起したり、観客を見て臨機応変にプレゼンをすることの大切さを具体的に示していた。人前で話すことが多い私にはとても刺激になった。
様々な講演会に出かけたり、本を読んだり、インプットばかりしている人たちが多い。アウトプットすることで知識は整理され情報は拡散される。学生のうちから如何に知識や情報を収集し、どのようにアウトプットするかを訓練する機会を与えられていることはとてもとても幸せなことだと思う。私の大学時代ゼミでの研究発表の機会はあってもゼミの内部のみだった。大勢のしかも他大学の学生と合同で行うことはとても刺激があり、賞が絡むと益々切磋琢磨する。学生は口々にお正月休み返上で徹夜したと言っていたが、この経験は彼らを大きく成長させているに違いない。5人のゼミ担当の先生たちと審査員諸氏に敬意を表し、機会があれば来年もお邪魔したいと思った。
木村結
東電株主代表訴訟事務局長
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