2017年02月01日12時17分掲載
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国際
トランプ大統領の大統領令とは? アメリカでの報道から 「テロ対策」なら 指定国になぜ9・11の首謀者オサマ・ビン・ラディンを生んだサウジアラビアは含まれていないのか?
トランプ大統領令で入国を一時的に厳しく制限されている国は7か国で、イスラム教徒が多数を占める国であることから「ムスリム禁止令」とも揶揄されています。ただ、大統領令はイスラム教徒の入国禁止令ではなく、テロリストの入国を認めないための命令であり、軸は危険性であるとしています。
入国を一時的に制限されている国はイラク、シリア、イラン、スーダン、リビア、ソマリア、イエメンですが、この中になぜサウジアラビアがないのか、と思う人もいるのではないでしょうか。あの9・11同時多発テロを組織したオサマ・ビンラディンはサウジアラビアの人間でした。そして、その後の取り調べでもアメリカに滞在していたサウジアラビアの外交官が彼らを支援していた、とか、サウジアラビアの王子が資金援助を与えていたといった報道がこれまでなされてきました。
https://www.theatlantic.com/news/archive/2017/01/trump-immigration-order-muslims/514844/
Atlantic誌は大統領令の解説記事”What Trump's Executive Order on Immigration Does and Doesn't Do”を掲載しています。この中で、今回入国を禁じられた7か国はオバマ政権時代に出された”visa-waiver program”で指定された7か国を引き継いだものだとされています。これは短期滞在ならビザは免除するシステムをオバマ政権が立ち上げる時に、例外として指定した国々だということです。この7か国は以下のImmigration and Nationality Act(略称 INA)にリストされている、とのことです。
”These seven countries are listed under section 217(a)(12) of the INA, 8 U.S.C. 1187(a)(12) of the U.S. code, and it is this code that Trump’s executive order cited while banning citizens of those nations.”
イランとの国交正常化など、オバマ政権のレガシーに否定的とみられるトランプ大統領ですが、入国禁止令で指定した7か国を選んだのはオバマ政権なんだ、と前政権に倫理的な責任を負わせているかの印象もあります。
国に対する危険な人間の入国を禁じる処分ですが、イラク戦争のように不当な戦争を仕掛けられて政府をつぶされたイラクや、反政府勢力を一方的に軍事支援して政府が転覆させられたリビアのことを想像するといかにも身勝手な処分とも言えるでしょう。もちろん、それぞれの国家には独自の移民政策があってもよいわけですが、他国を武力で破壊し、大量の難民を生み出した原因を作った国が難民の受け入れを拒むのは倫理的におかしいのではないかと思えます。それならば軍事介入はするな、と言うべきではないでしょうか。入国制限の対象となっている7か国に関して、たとえば最も厳格に対処されているシリアの場合もアサド政権をつぶすために、自由シリア軍をトンネルにしてアルカイダなどのイスラム原理主義勢力に武器支援を行ってきたのは米国とサウジアラビアなどの湾岸諸国ですが、それらの国々は対象に指定されていません。こうした表看板では自由と民主主義を標榜しながら、裏では仲間と敵に対象を選別し、仲間であればその政治は民主主義であろうとなかろうと現実的な意味でのテロ支援国であろうとなかろうと中身は問わず優遇する、という姿勢はオバマ政権と同様のようです。
これを見ると、本気でテロ対策をしているのか、「大統領にしてくれてありがとう」という感謝のアピールを票を投じてくれた米国民向けにをやっているのかわかりません。このことはアトランティックの記者も指摘していることです。
一方、下のリンクはNPRが報じた大統領令のテキストです。記者による疑問の提起も挿入されています。英語の好きな方は是非目を通してみてください。
http://www.npr.org/2017/01/31/512439121/trumps-executive-order-on-immigration-annotated
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