2017年02月06日13時16分掲載
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http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201702061316041
遺伝子組み換え/ゲノム編集
米国 遺伝子組み換えリンゴが店頭に 2月から試験販売
リンゴの切り口を放置すれば、酸化して褐色に変色するのが普通だが、3週間たっても切り口が褐色に変色しないリンゴがある。このリンゴは、遺伝子組み換え果実開発のベンチャー企業オカナガン社(カナダ)が開発した遺伝子組み換え(GM)のリンゴだ。このGMリンゴが、明確な「遺伝子組み換え」の表示のなしに、2月から米国の小売店で売られることが明らかになった。
(有機農業ニュースクリップ)
遺伝子組み換えリンゴを開発したオカナガン社はこのほど、同社の切り口が褐変しない遺伝子組み換えリンゴを、米国中西部の10店で試験的に販売すると明らかにした。販売するこのGMリンゴには、明確な「遺伝子組み換え」の表示はされず、代わりに、サイトにアクセスして情報を表示するQRコードが表示されるという。
CBC(カナダ)は、このGMリンゴの試験販売用に6.8トンが準備されていると報じている。オカナガン社は、米国でのテスト販売の結果をみてカナダでも販売する計画だという。しかし研究者は、消費者にこうしたGMリンゴへの需要がなく、あまり売れないのではないかとみているという。
このGMリンゴは、変色に関係する遺伝子を機能しないようにした(遺伝子サイレンシング)もので、2015年3月、米国食品医薬品局(FDA)とカナダ保健省により食品として承認された。米国農務省も15年2月、2品種の栽培規制を撤廃し、さらに16年9月にも1品種を追加承認している。遺伝子サイレンシング技術には、その安全性が十分に調べられておらず、健康影響への懸念が指摘されている。また、カナダ・バイオテクノロジー行動ネットワーク(CBAN)によれば、オカナガン社のこの遺伝子組み換えリンゴは、抗生物質カナマイシン耐性遺伝子を含んでいるという。
オカナガン社は2015年、米国のバイオ・ベンチャーのイントレクソン社に買収された。遺伝子組み換え昆虫を開発しているオキシテック社(英国)、遺伝子組み換えサケを開発しているアクアバウンティ社(カナダ)も、買収によりイントレクソン社の傘下にある。
・CBC, 2017-1-22
Non-browning apple coming to U.S. next month but
Canada will have to wait
http://www.cbc.ca/news/technology/gmo-apple-canada-1.3943058
・Eco Watch, 2017-1-20
GMO Arctic Apples to Hit Shelves Next Month
Without Clear Labeling
http://www.ecowatch.com/gmo-arctic-apples-hit-shelves-2201013702.html
● 農民は反対 外食業界も使わず
オカナガン社のGMリンゴについては、カナダのブリティッシュ・コロンビア州のリンゴ農民は、花粉が拡散し遺伝子汚染が起きることや不評被害による売れ行き不振を懸念して反対してきた。
また、オカナガン社が主なターゲットとしている外食業界などにも不使用を明らかにするところも出てきている。米国の外食大手のマクドナルドやウェンディーズが、また、ベビーフードメーカーのガーバーは使用する計画がないことを明らかにしている。
● 交配で褐変しないリンゴが作出
生産者や消費者が懸念するような遺伝子組み換え技術を使うことなく、これまでの交配による品種改良で褐変しないリンゴは、開発も終わり、出荷も間近なところまできている。米国ワシントン州立大学で開発された赤いWA38は、普通のリンゴよりも褐色に変色するのが遅いのが特徴のリンゴで、コズミック・クリスプと名づけられ手炒る。2014年には、ワシントン州に限定した苗木の配布が始まっている。2017年に出荷されるようだ。
・Washington State University
Cosmic Crisp
http://cahnrs.wsu.edu/cosmiccrisp/
● 台湾では健康懸念
台湾では、輸入される可能性があるとして懸念の声が上がっていると報じられている。台湾の毒物の専門家は、GMリンゴが妊産婦や子ども、老人にアレルギーの可能性があるとみているという。
・Focus Taiwan, 2017-1-22
Genetically modified apples may trigger allergies: scientist
http://focustaiwan.tw/news/asoc/201701220013.aspx
日本では、このGMリンゴの承認申請はまだ出ていない。
● QRコード導入は情報隠し
オカナガン社の遺伝子組み換えリンゴに表示されるQRコードは、昨年、米国の遺伝子組み換え食品の表示義務化でも導入された。米国の表示法では、QRコードなどがあれば「遺伝子組み換え」の表示は不要とされている。消費者はパッケージを見ただけでは、GM成分が含まれているかは分からない。情報を得るにはスマホが必要で、消費者から情報を隠すための方法である。
消費者庁は、来年度から遺伝子組み換え食品表示の「対象拡大」に向けて議論を始めるという。おそらく、これから詳細が決められる米国のGM表示制度を横目でにらみながら議論は進むと思われる。その中で、このスマートラベルの導入が俎上に上ることは確実だろう。QRコードの導入は、消費者庁の「消費者がより安心して食品を選べるようにする」という狙いとは逆行するものでしかない。
【写真】
QRコードを使ったスマートラベルの一例.jpg
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