2017年02月08日22時10分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201702082210023
文化
パレスチナの占領下を生きるための演劇 俳優、ムハンマド・ティティ さんに聞く Mohammed Titi (actor , "Yes Theatre " in Hebron) "Theater changed a lot of my personality, I became more optimistic."
パレスチナのヨルダン川西岸地区の最大の都市、ヘブロン。人口21万人のこの町に2008年、1つの劇団が生まれました。名前は「Yes Theatre」(イエスシアター)。劇場は手作りで、住民の大半は演劇体験がなかったそうです。
ヘブロンにはユダヤ教徒が今も入植しており、その警備のためイスラエル軍の兵士が銃を手に住民の監視と検問を行っています。強い緊張とストレスにさらされた状況に生きる少年少女に演劇を通して自己表現の道を拓き、状況を客観的に見つめ、生き方を深く考えさせる演劇活動を行ってきたのがイエスシアターです。その舞台は近年、海外の演劇祭で賞を受けるなど、クオリティの高さも評価されています。今回、イエスシアターの中心的な俳優の一人、ムハンマド・ティティ(Mohammed Titi)さんにどのようにして演劇に取り組むようになったのか、お話をおうかがいしました。
9years ago, "Yes Theatre" was established in Hebron, Palestine, where many residents had no experience of playing drama. In Hebron, children of Palestine live under heavy stress because Israeli soldiers watch them with guns. So "Yes Theatre" teaches young students the way to express themselves and think deeply observing their circumstances through drama education. I interviewed leading actor ,Mohammad Titi on his activity in the theater and his motivation for acting.
(以下はティティさんへのインタビュー)
1)about Al-Fawwar Camp:
Q Al-Fawwar難民キャンプについて
It is a camp for the Palestinian refugees, inhabited by 10000 people, in 1km2. the original people of this camp were expelled from their villages in 1948 (Al Nakba)*. This camp lacks all minimum infrastructure for human living. Houses are intensively located close to each other; there is no privacy. Streets are narrow. Those factors make it hard to live in such circumstances. If you want to know more about Palestinian refugees you can search the web.
僕が生まれ育ったのはパレスチナにある難民キャンプ、Al-Fawwar Campです。1万人が1平方キロの中に暮らしていています。このキャンプの人々はもともとは1948年のナクバ(※ Nakba)の時、(イスラエル兵士によって)村を追われた人々です。この難民キャンプでは人間の生活に必要な最小限のインフラもありません。たとえば住まいについて言えば、あまりにも隣の家族と互いに近い距離にあります。プライバシーというものがないのです。通りも狭いです。こうした環境で暮らすのは本当に辛いです。もしあなたがもっとパレスチナの難民キャンプについてお知りになりたいなら、インターネットで見ることができると思います。
2)How did you become an actor?
Q どのようにして俳優になったのですか?
Since my childhood I love to imitate people and make them laugh, so when I heard from the Ministry of Culture that there are workshops of drama, and theatre I joined them; and that was my first step in theatre.
僕は子供時代から周りの人たちを真似するのが好きだったんです。そしてみんなを笑わせるのが好きだったんです。そんなわけであるとき、文化省からドラマと演劇のワークショップがあると言う話を聞いて参加しました。これが僕が劇場に関係した最初のステップとなりました。
3) Why did you begin acting?
Q 演技を始めたのはなぜでしょう?
First of all, as I lost my mom in an early age, and went through a hard childhood in the camp, I had no clue about living; therefore, acting helped me to express myself in addition to getting rid of negative things that affected me. Actually, this is what happened, theatre changed a lot of my personality, I became more optimistic.
まず話さなくてはならないのは、僕が幼い頃、母を失ってしまったことです。そのため僕は難民キャンプで辛い少年時代を過ごしていました。生きていくための手がかりもなかったのです。ですから、演技することで自分にマイナスの影響を与えるものを取り除くことができ、さらに自分を表現することができるようになったのです。実際、その通りで演劇は僕の性格を随分変えてくれたのです。僕はずっと楽天的になったのです。
4) what are you doing now?
Q 今は何をしているのですか?
Now I work in Yes Theatre, an important theatre in Palestine; it works with children from different ages as well as adults. In the mean time, I train kids on a play based on the improvisation of kids taking into consideration all the aspects of their life. (marginalization) beside the theatre activities. In addition to my work for Yes Theatre, I participate in TV shows as an actor.
今、僕は「Yes Theatre」(イエスシアター)で働いています。これはパレスチナでは重要な劇場です。そこでは様々な年齢の子供も大人に交じって演劇に参加しています。そして上演活動とは別に、子どもたちに演劇指導もしています。それは日常の様々なシチュエーションを反映した即興芝居です。そこには様々な形の人間疎外があるのです。また、イエスシアターの仕事とは別に、TV番組に俳優として参加することもあります。
5) what is the joy of acting?
Q 演じる喜びとは?
Most of the time it is hard to show intimate things in general life, but in theatre you can express yourself and mention those things deeply. The authentic joy is when you reflect your real emotions that you have to the audience.
普通一般に生活の中の私的なものを見せるのは難しいですよね。でも劇場に来ると、人は自分を表現でき、さらにその思いをより深く掘り下げて表現することができます。演劇の醍醐味は自分の中に潜んでいる真の思いを観客に伝えることにあるのだと思います。
*AlNakba: occupying the Palestinian land in 1948 and expelling their indigenous people. There are those who immigrated outside and others inside Palestine.
※ナクバ =イスラエルが1948年にパレスチナの地を占領し、住民を追放した事件。以後、難民としてパレスチナを出た人々もいればパレスチナの内部にとどまった人々もいる。
Mohammed Titi ムハンマド・ティティ
actor at Yes Theatre
「イエスシアター」所属の俳優
Interview
Ryota MURAKAMI
村上良太
※Yes Theatre
イエスシアターの創設メンバーは3人。演出家のイハーブ・ザーハダと俳優のモハンマド・ティティはともに1977年生まれ。1997年にヘブロン出身の年長者ラエッド・シューヒイ(1969−)が創設した劇団テアトル・デイ・プロダクションに二人は参加し、意気投合した。演劇の素晴らしさにのめり込んだ3人はヘブロンに演劇文化を根付かせたいと切に思った。そこで3人が取った行動は「教育における演劇」という講座があるポーランドのグダニスク大学に留学することだった。趣味の領域に留まらず、教育に参画することで劇団を持続する財政上の支えが得られると同時に、未来をはぐくむ若者たちに演劇を教えることができる。3人が学んだのは子供たちが身の回りの問題を自ら発見し、状況を理解しながら、壁を乗り越えるための演劇だった。
抑圧された若者が暴力文化に染まらないように、困難な中でいかに平和に生きる道を切り開いていくか、演劇を通して考えてもらうのがイエスシアターの目標だ。過酷な状況に生きる少年少女とともに演劇を作ってきたイエスシアターは海外の演劇祭で賞を受けるなどクオリティの高さも評価されている。2012年からは沖縄や福島など各地を訪れ、地域の教育者向けに「演劇を通してどう子供たちのストレスと取り組むか」をテーマとしたワークショップを行っている。
"Yes Theatre for Communication among Youth (YT) is a Palestinian non-governmental organization that was established in 2008. Yes Theatre believes that theatre and drama can positively influence the children and youth to create a change in their society. Therefore, it works to inspire Palestinian children and youth in general and those in Hebron in particular to try out and to develop creative and constructive reactions to the challenges in their daily lives."( Yes theatre's website)
http://www.yestheatre.org/eng/index.php/en/homepage/about
■パレスチナの演劇人と共同制作の舞台 「ミラー」 9月9日から上演
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201609031841516
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。