2017年02月10日02時47分掲載
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ほとんど本邦初公開の現代戯曲7作に7人の演出家と俳優たちが挑む 「海外戯曲リーディング」(調布市せんがわ劇場)
戯曲を舞台で上演する形式とは違って戯曲を俳優たちが観客を前にして読むのがドラマリーディングです。リーディングと言っても単なる朗読と違って第一線の演出家と俳優たちが舞台を作るだけに演劇の醍醐味はたっぷり味わえます。そしてこれは少ない予算で世界の優れた戯曲を紹介するには最も優れた方法でもあるのです。
今回、調布市せんがわ劇場で上演される「海外戯曲リーディング」は世界7か国からほとんどが本邦未公開の作品7本をセレクトしたものです。それらに取り組む演出家と俳優たちも個性に富む実力派ぞろいです。上演は2月9日(木)から19日(日)まで。
調布市せんがわ劇場によると、海外の戯曲7作品は次のようなものです。
▼『うちの子は Cet enfant (2003)』
現代フランスを代表する劇作家の一人ジョエル・ポムラが
親と子の関係を描く10のオムニバス作品。
実在の人物の取材を元に書かれたこの作品は、出産間近で育児のプレッシャーと戦う女、我が子を家から出さない子ども依存の母、病気で仕事ができず息子に馬鹿にされている父など、「親子」にまつわる10のシーンからなるオムニバス作品。彼が住むフランスという国に留まらず、国を越え、普遍的ともいえる家族の姿を映し出す。
これを演出するのは松本祐子(文学座)。
上演時間は約60分。
▼『いつも同じ問題 The Same Problem (2010)』
3人の男たちの暮らしからあぶりだされる、ヘブロンを中心としたパレスチナの問題や困難の数々。
目の前に大量のゴミが堆積する13号アパート。隣同士で暮らす3人の男たち。彼らは、隣人の生活にはクレームをつけるが、他者が捨てるゴミには何も言わず、我が暮らしを嘆くばかり。訪れる人々も忙しさや自分にふりかかる不幸を憂いてばかりで、解決の糸口は見出せない。そして、3人が選ぶ未来は。
これを演出するのは大原渉平(劇団しようよ)。
上演時間は約60分。
▼『ノームとアーメッド Norm and Ahmed (1968)』
1968 年初演から現代までコンスタントに上演を重ねる、オーストラリア小劇場運動の先駆的作品。
シドニーの真夏の夜、パキスタン人留学生アーメッドは、白人の中年男性ノームに呼び止められる。相手のペースに巻き込まれて、目的も分からぬままに、この国の歴史、体制、国民性から日々の孤独にいたるまで語り合うことになるアーメッド。思いがけない出来事が待ち受けているとも知らず・・・。
これを演出するのは日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)。
上演時間は約60分。
▼『アイスランド Iceland (2012)』
カナダ文芸界の最高賞「総督賞」受賞作。カナダと世界の現状が透けてくる衝撃作。
カナダ最大の都市トロント、とあるアパートの一室。バスルームに身をひそめ隠れる女。その部屋のリビングでは、なぜか血まみれで倒れている男とその傍らに立つもう一人の女。奇妙な偶然が3人をこの部屋に導き、事件は起きた。偶然の重なりが人の運命を大きく変えてしまうスリリングな作品。
これを演出するのは菊池准(演劇企画JOKO)。
上演時間は約60分。
▼『悲しい心は どこへ行く A donde van los corazones rotos (Where Do Broken Hearts Go) (2012)』
アルゼンチン国民文化賞最優秀新人作家賞受賞のシンシア・エドゥルが描く、家族の現実と未来。
灯台周辺のビーチ。ここは夏になると、父の兄弟家族と集まり、賑やかに休暇を過ごした思い出の地。父不在のなか、バラバラになった家族が何年ぶりかにこの地に集まる。風が徐々に砂を巻き上げ、日は暮れ灯台が点る。想いを馳せるも、それぞれ苦い思い出ばかり。街は変わりゆく。あの頃と変わらない浜辺で彼らは・・・
これを演出するのは加納幸和(花組芝居)
上演時間は約60分。
▼『神の絶望 Desperation of God (2005)』タイ
もしも神に人間同様の感情があったなら…をコメディタッチに描き、再演を重ねる話題作。
芝居の稽古を始める3人の男と1人の女。稽古場の立ち退きが迫る中、1人の神が現れる。はじめは誰にも見えなかった神は、やがて姿をあらわし、彼らと一緒に稽古を始める。過激になっていく劇中の物語。現実と虚構の狭間に神がもたらしたものは・・・
これを演出するのは鈴木アツト(劇団印象-indian elephant-)。
上演時間は約60分。
▼『セブン・メニュー Seven Menus (1989)』アメリカ
断片的な場面の連続が、現代の刹那的な人間模様を想像させる。
とあるレストラン「セブンメニュー」のボックス席。2組のカップルが楽しそうに会話している。すると、突然ベルが鳴り、4人はストップモーション。止まったまま、2組のカップルのうち、1組の彼氏が退場し、彼が座っていたところに、新しい男が座る。再度ベルが鳴り、新しい男を加えた4人で、会話が始まる。
これを演出するのは宮崎真子(俳優座)。
上演時間は約40分。
以下は、調布市せんがわ劇場のプレスリリースから。
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7つの国と地域から集めた
現代をえがく短編戯曲を一挙上演
調布市せんがわ劇場の挑戦
『海外戯曲リーディング』
京王線仙川駅徒歩4分の公立劇場、調布市せんがわ劇場にて、2017年2月9日〜19日、せんがわシアター121 Vol.10「海外戯曲リーディング」を上演します。演劇翻訳の第一線で活躍する常田景子氏を企画中心者に据え、フランス・パレスチナ・オーストラリア・カナダ・アルゼンチン・タイ・アメリカから集めた7本の短編現代戯曲に、現在活躍中の演出家7名が挑みます。
ほぼ全作品が日本初上演。自国で評価の高い劇作家の描く現代社会。アフリカ大陸をのぞく4大陸から選ばれたのは、日本では無名ながら、本国では高い評価を受けている作家の作品です。いずれもそれぞれの国の社会をリアルに描いており、異文化を感じる一方で、現代日本に暮らす私たちの心にも痛烈に響く批評性を持っています。大人にこそ観てほしい、聴いてほしい公演です。
挑むのは、出身もキャリアもバラエティに富んだ演出家たち。
この作品群に挑むのは、大原渉平(劇団しようよ)、加納幸和(花組芝居)、菊池准(演劇企画JOKO)、鈴木アツト(劇団印象-indian elephant-)、日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)、松本祐子(文学座)、宮崎真子(劇団俳優座)の7名(50音順)。リーディングという手法でいったいどんな作品世界を創るのか、興味が尽きません。
公立の小劇場・せんがわ劇場の挑戦。
せんがわ劇場は2008年の開館以来、パッケージ公演を購入するという、公立劇場に多い事業形態ではなく、一から企画を立て、その都度スタッフや出演者を集める手法で事業を主催しています。今回は、2年近い時間をかけ、常田氏や劇場に集う若手演劇人たちと共に月1回の勉強会を行い、作品選定から始めました。都心から離れた公立の小劇場の取り組みにも、ぜひご注目ください。
日程 2月9日(木)〜19日(日)
会場 調布市せんがわ劇場 (121席)
〒182-0002東京都調布市仙川町1-21-5
(京王線 仙川駅より徒歩4分)
チケット全席自由 一般:2000円
調布市民(市内在住・在勤・在学):1600円 U-25:1500円
全作品セット:7000円 3枚セット:5100円
特設ホームページ http://www.sengawa-gekijo.jp/kaigaigikyoku/
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■パレスチナの占領下を生きるための演劇 俳優、ムハンマド・ティティ さんに聞く Mohammed Titi (actor , "Yes Theatre " in Hebron) "Theater changed a lot of my personality, I became more optimistic."
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201702082210023
■現代韓国戯曲は面白い ドラマリーディングを見る
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