2017年02月17日10時47分掲載  無料記事
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アジア

タイで政権批判の記者や弁護士、活動家が次々拘束されている

タイ当局は、表現と自由の権利を行使して政権を批判する多数の市民団体や政治活動家を犯罪者とみなし、処罰しようとしているとアムネスティ国際ニュースが伝えている。拷問などの虐待を報告したことで、あるいは汚職に懸念を示したために拘束された人もいれば、学問の自由を求めた人、政治問題に発言できるようにして欲しいと声を上げた人も捕まっている。多くは、弁護士、ジャーナリスト、弱者の擁護者として自分の仕事をしただけであった。アムネスティアムは最近行なった調査をもとに明かにした。(大野和興) 
 
アムネスティの調査は、以下のように述べている。 
 
軍事政権は、人権擁護や民主化の活動家ら数十人に厳格な法律や法令を適用して容疑者に仕立て、取り調べ、訴追している。そうすることで、逮捕や訴追を覚悟した上でなければ、対話や集会に参加できない風潮を作り出してきた。 
 
表現と平和的集会の権利の制限は、国の重要な問題への異論を挟むことを許さないという、政府の考え方をはっきりと物語っている。 
 
調査では、政治活動家、学生、地域のまとめ役、環境保護運動家など64人に対して進められている現行の刑事訴訟も扱った。訴訟は、調査員、弁護士、ジャーナリスト、学者にも及んでいる。拘束された人たちは、国際法のもとタイが尊重し保障する義務のある人権を行使したに過ぎない。誰一人として暴力に訴えたり、暴力を提唱したりしていない。 
 
拷問などの虐待を報告したことで、あるいは汚職に懸念を示したために拘束された人もいれば、学問の自由を求めた人、政治問題に発言できるようにして欲しいと声を上げた人も捕まっている。多くは、弁護士、ジャーナリスト、弱者の擁護者として自分の仕事をしただけであった。 
 
当局は、彼らの逮捕、取り調べ、訴追にさまざまな法律や法令を活用する。騒乱、名誉棄損、王室の侮辱に関する刑法や、コンピュータ犯罪法が、特に頻繁に使われてきた。 
また、軍事政府は2014年5月にクーデターで政権の座に就いて以来、2015年の公会法、2016年の国民投票法などの新法で複数の刑事訴訟を開始した。2015年、プラユット・チャンオチャ首相が発令した法令、国家平和秩序委員会令は、5人以上の「政治的集会」を禁止している。当局は、抗議行動に参加した人たちの拘束や起訴に、この法令を頻繁に適用してきた。 
 
多くの活動家は、軍事法廷で長期にわたる裁判を受けなければならない。軍事法廷では公正な裁判を受ける権利が守られない。複数の罪状で起訴された人もおり、有罪となれば数十年収監されるおそれもある。 
 
例えば、学生で人権擁護活動家のジャトゥパット・ブーンパタララクサさんは、昨年の国民投票を前に、抗議行動で憲法草案に反対するように訴える紙を配布したこと、フェイスブックに王室を批判するような記事を投稿したことで、5件の訴訟を受けている。保釈を取り消され、現在はコンケン拘置所に拘留されている。すべての容疑で有罪になると、最高40年の実刑が言い渡される可能性がある。 
 
活動家らを対象に表現や集会の権利を取り締まる国の対応は、来年に予定されている選挙に影を落としている。 
活動家らは、これまでの軍事政権による抑圧でかなり疲弊しているが、今進められている裁判で多数が有罪になると、さらに大きな痛手を被ることになる。被告の多くは、それぞれの分野の指導者であり、国の未来を形づくる上で欠くことのできない人びとなのだ。 
 
それだけに、当局は直ちに訴訟を取り下げなければならない。 
 
アムネスティが聞き取りをした一人、ナリサラワン・ケーウノパラットさんはこの1月、訴訟を取り下げられた。これがいい先例になってほしいが、見通しはあまり明るくない。クーデターの後、一時的な措置として人権が制限されたが、それが2年半たった今も解除されていない。それどころか、新憲法のもと正当性、合法性が認められ、恒久化する可能性がある。 


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