2017年02月19日15時16分掲載
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本山美彦著 「売られ続ける日本、買い漁るアメリカ」
本山美彦著 「売られ続ける日本、買い漁るアメリカ」を初めて手にしたのは2007年の頃で、本書が出版されてまだ間がない頃だった。副題は「米国の対日改造プログラムと消える未来」。タイトルはセンセーショナルなものだ。岩波でも、成文堂でもなく、ビジネス社という出版社から出ている。
バブル経済が崩壊した1990年代以後、長銀が消滅して外資に売却されたり、巨額の負債を負った日本企業がハゲタカファンドに買収されたり、派遣労働が規制緩和されたり、郵政が民営化されたりと様々な変化が起きた。その後、非正規雇用が当たり前になり、全労働者の40%にまで広がっている。格差は広がる一途で、高等教育の学費は信じられないくらい高騰して親の年収で子供の人生もほぼ決まる時代になりつつある。
本書ではそうした一連の事態の背後にある事実がこれでもか、これでもか、というくらい次々と述べられていく。その背後にあるアメリカから日本に働いている力の構造が指摘される。なんといっても僕はその事実と情報の密度に驚いた。こういう本を日本で手にしたのは初めてだったからだ。著者は経済ジャーナリストというような肩書ではなく、京都大学大学院教授で日本国際経済学会の会長を務めたような人である。日本の学者ははっきりものを言わず、政治的リスクを避け研究室に埋没しようとする人が圧倒的に多いのだが、この著者に関してはその真逆だから実に驚きだった。
今なぜ本書に触れるか、というと、TPPが消え去った今、トランプ政権のもとで、再び「米国の対日改造プログラム」の後半戦が始まろうとしているからだ。愛国を旗印にしている安倍政権だが、実際には日本をアメリカに都合の良い国へと作り替える日本改造を目論むトランプ大統領に協力を惜しまないだろう。これから始まるのは国民健康保険制度の改造や医療の改造、アグリビジネスの規制緩和、労働法制のさらなる規制緩和、金融の規制緩和、憲法改正と兵器産業への投資拡大などだろう。日本企業をアメリカのインフラ整備の公共事業に参入させる代わりに日本にもっと投資させろ、投資しやすい環境を作れと迫って来るだろう。ヒラリー・クリントンという一応はもっともらしい普遍的な理屈をつける大統領ではなく、アメリカファーストの本音を売りにしているトランプ大統領の登場である。だからこそ今のうちに日本人は本書を紐解いて前半選をもう一度振り返っておくべき時ではなかろうか。
※本山美彦(「変革のアソシエ」共同代表・京大名誉教授)
日本国際経済学会・元会長。著書に「金融権力」(岩波書店)、「倫理なき資本主義の時代─迷走する貨幣欲」(三嶺書房)、「売られ続ける日本、買い漁るアメリカ」(ビジネス社、2006年)、「姿なき占領」(ビジネス社、2007年)、「格付け洗脳とアメリカ支配の終わり」(ビジネス社、2008年)など。
■ギリシャ問題1 〜ギリシャ債務危機を引き起こした金融権力〜 本山美彦(「変革のアソシエ」共同代表・京大名誉教授)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507111630296
■ギリシャ問題2 〜SYRIZAの勝利とギリシャの政治的風土〜 本山美彦(「変革のアソシエ」共同代表・京大名誉教授)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507120139250
■ギリシャ問題3 〜SYRIZAへの希望と不安〜 本山美彦(「変革のアソシエ」共同代表・京大名誉教授)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507120549390
■本山美彦著 「金融権力 〜グローバル経済とリスク・ビジネス〜」
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201401170608015
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