2017年02月25日16時11分掲載
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文化
大富豪に対する失業家族の闘いを描いた「メルシー・パトロン!」がセザール賞(最優秀ドキュメンタリー映画賞)を受賞 フランソワ・リュファン監督
フランスでセザール賞の発表があり、最優秀ドキュメンタリー賞にフランソワ・リュファン監督の「メルシー・パトロン!」が選ばれた。この映画は報道によれば50万人の観客を動員した異例のヒット作となった。だが、それだけでなく、大富豪と闘う失業した労働者の家族のために監督自ら出演して知恵を貸し、ともに闘う映画として、フランス人に勇気を与えた。立ち上がれば政治は変えられる、という思いを抱かせ、2016年は1968年以来の政治の熱い季節となった。
フランソワ・リュファン監督はパリ近郊の町、アミアンで「Fakir」(ファキル)という名前の定期刊行物の編集長をしている。まだ20代の時にこのメディアを自ら立ち上げ、労働者のために闘ってきた。リュファン氏の報道姿勢は客観的知識を伝えるだけでなく、立場の弱い労働者に寄り添い、情報を武器にして、ともに闘うことにあった。
アミアンにはダンロップなどの自動車部品工場があり、自動車産業の町として戦後繁栄したが、EU加盟以後、工場が国外に移転して空洞化し、失業者が増えた。リュファン氏がペンを握って報道を続けてきた裏にはこのような背景があった。ドキュメンタリー映画「メルシー・パトロン!」は同じようにフランス北部のアパレル産業の工場で繁栄した町が、工場の東欧移転をきっかけに空洞化し、疲弊した姿を描いている。この工場を所有していたのがフランスの大富豪ベルナール・アルノー氏で、リュファン監督は失業家族とともに補償を求めてアルノー氏を追いかける。その追っかけと闘いに笑いがあるところが特徴であり、「ロジャー&ミー」という作品のあるアメリカのマイケル・ムーア監督の影響を受けたと語っている。
昨年、パリの共和国広場で始まったNuitdebout(ニュイドゥヴ)という運動は3月31日に広場で「メルシー・パトロン!」をみんなで見ることからスタートした。その意味でフランスに新しい時代を切り拓いた映画と言える。そして、今年、リュファン監督は自ら地元アミアンで国会議員に立候補することも検討しているという。
※リュファン監督の受賞演説の動画あり
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村上良太
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