2017年03月03日23時08分掲載
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コラム
わが憧れ、二回目のブータン その2 宇崎喜代美 (バンコク在住)
ブータンはイギリスの植民地支配の時代に国土をかなり失っている、国土を失っても戦争を選ばないでいたように思う。最近も昔からの国境線を越えて中国が道路建設したりして国境問題が発生、以前よりも国土を狭めてしまった。それはあの冬虫夏草のせいではないのか。そのブータン特産物を中国が高価な漢方薬用に目を付けたからに違いない。
イギリスからインドが独立した折に、イギリスに代わりインドはブータンとかかわってきた。今も友好な関係で多額の援助をしている。内政に干渉せず、外交と軍事には助言するというスタンスである。ブータンの西隣のシッキム王国はインドに併合された。昨年10月に私と夫はブータンの真隣にあるそのシッキムを訪れたが、歩く人々はチベット系でブータン人と似ていた。 しかしブータンとは似ても似つかない国であった。北面のチベットは中国にやられた。そんな近隣国に囲まれながら、非同盟の独立国として、最貧と言われながら自国のアイデンティティーを守る努力をしているブータンを私は応援したいのである。
今回の一週間の滞在中に伝統医療の病院に行った。伝統医療も近代医療と共に守られている。ハーブの展示してある部屋に入った途端、呼吸がとても楽になった。近代医療と伝統医療はともに国民は無料だし、おまけに外国人も無料だと聞いていた。そこで体験してみたいとキンレイさんに頼んだ。「膝が痛い、筋も痛い。ダンスのしすぎだと思う」と言うと、「わぁ、面白いですね」と感心して、専門の先生のところに連れて行ってくれた。キンレイさんが「彼女は観光客で時間がないのですみません、先に入れてあげてください」と周囲に説明してくれ、順番を飛ばしてお坊さんの次に診察をうけた。大きな部屋の10m先に民族衣装を着た女医さんがいた。ハーブの薬を処方してもらい「ダンスは控えるように」とアドバイスされた。私は「ちょっとくらい痛くても、踊るほうを選びたい」と口答えしてしまった。薬局の前にある大きなマニ車(円柱状の転経器)を回せと言われてそれに従い診療は無事終了。この円柱を一周回すとお経を一回読んだことになるのだそうだ。それが薬を受け取るところにドカンと座しているのがいかにもチベット仏教らしくて興味深かった。
もしブータンに住めたら、この病院で働いてもいいと思った。働かせてもらえないかもしれないけど、夢に描くのは勝手である。伝統医療とハーブ処方薬の勉強をするのも楽しかろう。何百ものハーブが展示されている部屋は空気自体がもう薬みたいになっていた。あそこで働いたら私はすごく健康になるような気がした。
キンレイさんは「ブータンでダンスを教えたら」と言ってくれたが、はっきり言ってラテンもストリートダンスもボリウッドダンスも、実は下手の横好きなのである。
「夫にはその年齢で夢中になれるものがあってよかったね」と言って慰めてくれたが、下手なものは下手なのである。プナカの山の小学校を訪問した時生徒らが民族舞踊を披露してくれた。あれはかわいかったと想起しながら、あれくらいのダンスなら負けないと思った。
世界の歴史の中で奇跡的なことがいくつも重なって、ブータンは生まれたとおもう。こんな国に出会えた幸運を神様に感謝している。15年ぶりに訪れたブータンは健在であった。そしてブータン王国にいつか住むというプロジェクトXは私の中で静かに進行している。
宇崎喜代美 (バンコク在住 通訳・コーディネーター )
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