2017年04月09日12時19分掲載  無料記事
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国際

トランプ政権のシリアへのトマホーク攻撃  化学兵器は本当に空軍基地にあったのか? アサド政権の化学兵器使用は確かなのか? 

  新聞報道によると、シリアのアサド政権が今月4日、ホムス郊外のハーン・シェイフンで反政府派に化学兵器を使用したとして、地中海に停留する米艦がシュアイラ―ト空軍基地に向けてトマホークを59発打ち込んだ。米政府によると、この空軍基地に化学兵器が隠されている、ということである。だが、化学兵器を使用したのがアサド政権だったのか、またシュアイラート空軍基地に化学兵器が積まれていたのか、その証拠は示されていない。 
 
  これを聞くとデジャビュ感に襲われる人は多いだろう。2013年のオバマ政権時代に、シリア空爆寸前になったことだ。この時も米政府はアサド政権が化学兵器を使用していると訴えていたが、ロシア側から逆の証拠が突き付けられていた。化学兵器を使用しているのは反政府側だという訴えである。化学兵器を使用すれば国際社会から軍事制裁を受けるのに、アサド政権がなぜあえて使用するか?というのが米側の告発の最大の論理的な弱さだった。一方、反政府軍には化学兵器を身内に対して使用することで劣勢になった戦闘に対し、外国による軍事制裁を得て挽回することが可能になるという動機はありえたのだった。実際、2011年に内戦中のリビアのカダフィ政権は一方的な軍事制裁によって崩壊した。現在は国家が崩壊し、液状化したイスラム原理主義勢力と地方勢力との内戦状態に陥っており、誰一人軍事介入の責任を取っていない。 
 
  今回、アサド政権にたてつくとどういうことになるかを警告するためにアサド政府軍が化学兵器を使用する動機があったというようなことを言っている人がいるようだが、不自然な苦しいこじつけではなかろうか。もし告発するのなら証拠をつきつけるしかなかろう。 
 
  2013年の秋、オバマ政権はロシアと交渉して空爆は回避した。その条件として2014年夏までにシリアのアサド政権が保有している化学兵器は一切が廃棄されることになり、その措置は監視されながら実行されたはずだった。だが、シュアイラート空軍基地に化学兵器が蓄積されているのだとすればその条件をシリア政府が実行しなかった、ということになる。その場合、シリアの化学兵器廃棄を監視していた米ロ当局はどのような見解を今回の告発に対して取っているのだろうか。 
 
 
 
■世界のベタ記事から 〜シリアの化学兵器処理で国連が声明「最も危険性の高い化学兵器の国外運びだしが年末期限に間に合いそうにない」 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201312301710281 
 
■フランスの「戦争」 リビア軍事介入の責任はいつ誰がとるのか 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201511181952183 
 
■燃え上がるリビア 「アラブの春」の果てに 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201602201728226 


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