2017年04月17日02時26分掲載
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コラム
亀がテレビの前にいるわけ 木村結
我が家のテレビの前には亀が何十匹も並んでいる。毎晩報道ステーションやNEWS23を観てはテレビ観戦ツィートをしているのだが、テレビを観ようとすると同居猫がテレビの前に立ちはだかる。それを防ぐためにコレクションしている亀の置物を並べ始めた。
亀は必然的に写真に写り込み、時折、亀はなぜ?との質問もいただいているが、亀が写真に写りこむことで、私が写した写真であることも判る。Twitterをしている方の中には、人が写した写真を断りもなしに使う方がいて、ある時、亀が写り込んだ写真を観てビックリ。悪用ではないようでしたが、「一声かけてくださいね」とダイレクトメールをしました。
さて、私が何故亀をコレクションしているのかをお話ししましょう。
基本は、せっかちな自分への戒め。ゆっくり考えながら歩きましょうと。特にコレクションするつもりはなく、旅先で亀を見つけると購入しているうちに、どこの街を歩いていても目に亀が飛び込んでくるようになり、「私を連れて行って!」と訴えてくる。それがウミガメだと私の財布は口を開くことはない。やはり亀は海中をスイスイ泳いではいけない。ゆっくりゆっくり歩いていなければいけないし、池に棲む亀は岩の上で甲羅干しをしているべきだと思っている。
子どもが生まれ、私は書店で絵本や童話を漁った。大学の時2年間新宿の紀伊国屋書店の童話の担当だった頃から絵本のコレクションはしていたが、その頃には日本に紹介されていなかったミヒャエル・エンデに衝撃を受けた。「モモ」を始め日本で翻訳されている全ての書籍を購入した。モモの中にも亀は登場するが、亀を主人公にした絵本「トランキラ・トランペルトロイ」が私を虜にした。
亀のトランキラ・トランペルトロイは、動物の王様レオ28世の結婚式があることを聞き、出席しようとプレゼントを持って出掛けます。歩みののろい亀は途中様々な動物に王様の結婚式に間に合うわけがないと笑われたり説教されたりしますが、亀は王様の結婚式に出席することができるのです。でもそれはレオ28世が亡くなった跡を継いだレオ29世の結婚式だったのです。あらすじを書いてしまうと味気ないものですが、途中に出てくる鳩の夫婦、蜘蛛、でんでん虫、蜥蜴、カラスなどとのやりとりがとってもユニークなのです。ただこの絵本はその後タイトルが変更され「がんばりやのかめ」などというつまらない名前になってしまいました。「トランキラ・トランペルトロイ」では売れないのでしょうか?
トランキラ・トランペルトロイは、頑張り屋には違いないでしょうが、がむしゃらではなく、旅の途中の出来事を愉しむのです。様々な動物や虫に意地悪なことを言われてもサラリとかわし旅を続けます。旅は目的地に行くことだけではなく、その過程を愉しむことでより豊かな時間を過ごすことができる。子どもにはゆっくり人生を愉しんで欲しい、そんな願いを込めてミヒャエル・エンデの絵本の数々を読み聴かせました。娘は毎晩5冊もの本を抱えてお布団に。私がウトウトすると足をバタバタさせて起こしては続きをねだり、5歳の頃には長編の「モモ」や「果てしない物語」にはまり、毎晩1時間は本を読まされ続けました。エンデが画家の父親との「父子展」のために来日した際、私は子安美知子さんを中心に進められていた「日本にシュタイナー学校を創る会」に所属しており、エンデを囲んでの円座の対話に参加、別れの際ハグしてもらったのが自慢。更に展覧会でエンデも亀をコレクションしているのを知り、それからはより積極的に亀を集めるようになったのは言うまでもありません。
我が家の亀たちは専用のチェストに収められ、月ごとにテレビの前に飾られるのを待っているのです。そして世界各地でも私の目に止まるのを待ちわびている亀がきっといると私は信じて旅をしているのです。
木村結
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