2017年04月17日23時01分掲載
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野村豊弘著「民事法入門」 (有斐閣アルマ)
有斐閣から出版された野村豊弘著「民事法入門」はちょっと感動ものだった。新書よりは少し幅が広いが全体に小ぶりな本の中に、民事法の基本が大変優しく解説されているからだ。民事法は民法や商法、そして民事訴訟法などのそれらの手続き法から構成されるのだが、筆者が法学部に在籍していた頃は民法も商法もそれぞれバラバラに学ぶだけで、全体を「民事法」という風に一望する勉強をしたことがなかった。卒業後に後悔しても仕方がないのだが、全貌をできるだけ初期につかむ、ということはその後の勉強にとってとても大切だ、と思う。
法学部に在籍すると六法全書を買って手元に置いていくものだが、この六法全書自体もできればざっと早いうちに全体を見て、どういう構成になっているのかをつかんでおくに越したことがないのである。必要な時に引くだけではなくて、ざっとでもいいから一度全体を読む、という姿勢が大切だ。それもなるだけ早いうちうちにそうした方がよい。全体を俯瞰できた学生と俯瞰できないまま、バラバラになった小さな部分部分だけに追われる学生とでは理解度や意欲で随分差が付くのではないか。
「債務不履行」「意思表示の瑕疵」、「無権代理」、「消滅時効」、「不法行為」、「夫婦間の契約取消権」、「共同親権」、「物権法定主義」、「限定承認」、「危険負担」、「許可主義」など様々な民事法上の基本概念をまとめて、その生まれてきた欧州の法学の歴史的背景、さらにはハムラビ法典まで遡りながら、法律の考え方を優しく解説している。野村教授はかつて学習院大学の1年生の法学入門を担当していたそうだ。高校まで法律になじんだことのなかった学生たちにまず、法律に親しんでもらうための工夫を凝らしていることが本書を読むとわかる。きっとよい先生だったのだろう。
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