2017年04月26日09時59分掲載  無料記事
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国際

サウジアラビアが国連の女性の権利向上委員会のメンバーに選ばれる  「ご冗談を」という声が世界で続く  実は日本も選ばれていた・・・

  女性の権利を世界で最も抑圧している国の1つ、サウジアラビアがよりによって国連の女性の権利を向上させる委員会のメンバー国に選ばれたという。国連の監視グループが発したこのニュースがインターネットで世界中に流れると、あまりにも不可解かつ不条理だったため、「冗談か?」「本当のニュースなのか?」などと疑問視する声が相次いでいる。 
 
  以下のリンクはニューズウィークの記事。”WIDESPREAD CRITICISM FOLLOWS SAUDI ARABIA JOINING U.N. WOMEN'S RIGHTS GROUP”(サウジアラビアが女性の権利推進委員会のメンバーに選ばれたことで世界中から批判が相次ぐ)というのがタイトルだ。記事によると、任期は2018年から2022年までの4年間だという。 
http://www.newsweek.com/saudi-arabia-top-women-rights-group-united-nations-criticism-588974 
  一方、以下はオーストラリアのメディアであるABC.”Saudi Arabia elected to UN women's council despite gender inequality in kingdom”(サウジアラビアの国内では男女差別が行われているにも関わらずサウジアラビアが国連の女性の権利委員会に選ばれた)。 
http://www.abc.net.au/news/2017-04-25/saudi-arabia-un-womens-council-gender-equality-concerns/8469258 
  なかなか信じがたいので、さらに本当か信頼できるメディアを探してみた。するとCNNでも報じられていた。”Saudi Arabia's election to UN women's commission draws ire”(サウジアラビアが国連女性の権利委員会のメンバーに選出され怒りを呼ぶ)。CNNのニュースによると、新たにメンバーに選ばれたのは13か国で、選出の方法は秘密投票だったという。The World Economic Forumの男女同権ランキングによると、サウジアラビアは世界144か国中、141位と最低ランクに位置している。 
http://edition.cnn.com/2017/04/25/world/saudi-arabia-un-womens-commission-trnd/ 
  サウジアラビアでは女性が車を運転することも禁じられており、基本的に屋外で男女が同席することもほとんどないと言われている。女性が外出する時はすっぽりと全身が隠れる衣装を身のまとわなくてはならない。サウジアラビアの女性の映画監督が祖国で映画を撮影した時は始終車の中に身を隠して車に積んだモニター画面を見ながらトランシーバーで演出していたという。その映画とはサウジアラビアの少女が社会の抑圧をよそに自転車に乗ろうとする映画だった。さらに忘れてはならないことは女性の性奴隷を制度化しているイスラム国を支援してきた主要国がサウジアラビアだということだ。 
 
  だが、この記事について言えばもう一つ笑えないことがあった。サウジアラビアと同時に日本もメンバー国に選出されていたことだ。実は、そのことは記事ではまったく触れられていなかったのだが。日本は女性議員の比率が世界でも最低レベルにあると批判されている国である。昔から日本では女子供は政治に口を出すな、と言われていたものだ。先ほどのThe World Economic Forumの男女同権ランキングによると日本は世界144か国中、111位と底辺周辺に位置している。ネパールやエチオピアよりも低い。 
 
  さて、CNNの記事には国連のリンクがつけられていて今回の情報の出所がつきとめられた。国連の以下のリンクに様々な国連の委員会のメンバー選出の記事が掲載されている。その中に”Commission on the Status of Women”(女性の権利向上委員会)もあり、メンバー国に選出された国の記載が出ていた。この中に日本も含まれている。 
https://www.un.org/press/en/2017/ecosoc6824.doc.htm 
  ”Commission on the Status of Women: The Council elected by secret ballot 13 members to four-year terms, beginning at the first meeting of the Commission’s sixty-third session in 2018 and expiring at the close of the sixty-sixth session in 2022: Algeria, Comoros, Congo, Ghana and Kenya (African States); Iraq, Japan, Republic of Korea, Saudi Arabia and Turkmenistan (Asia-Pacific States); and Ecuador, Haiti and Nicaragua (Latin American and Caribbean States).” 
 
  日本史上で初めて男女の同権を基本に据えた戦後レジームを敵視する安倍首相が女性の活躍をうたっているのだから他国を笑えない。 
 
  安倍政権のスポークスマン的な役割を担う内閣官房副長官の萩生田光一氏は日本会議のウェブサイトで『入会直後直面した、「行き過ぎたジェンダーフリー教育、過激な性教育』対策では日本会議の識者の先生方の後押しもいただき、党内でも問題を喚起し、ジェンダーの暴走をくい止め、正しい男女共同参画社会へと路線を変更する事ができましたし、又、皇室典範改悪阻止に向け、『皇室の伝統を守る国会議員の会』を立ち上げ、日本の国柄を守る一助となる事ができたと自負するところです。」と記していた。ここで萩生田氏が批判している「行き過ぎたジェンダーフリー」が具体的に何かはわからないが、その意味から推測すれば女性の社会進出も含まれるのではないか、と思われる。さらに安倍政権がNHKの経営委員に抜擢した日本会議メンバーの長谷川三千子氏も男女共同参画社会に反対している。女性にとって一番大切なつとめは子供を産み育てることだと考える長谷川氏が男女共同参画社会に批判的になるのも無理はない。 
 
  日本政府の女性に対する姿勢は国会を見れば明瞭だ。女性の防衛大臣が答弁に立たされているのに脇から首相が代わりに答えに来たり、森友学園問題では本来、国会で責任ある答えをすべきはずの首相夫人の発言を封じ込めたりしていることだ。これらはいずれも女性には自分の力で社会に対して答える力がないという首相の考え方を示すものだろう。 
 
 
村上良太 
 
 
■The World Economic Forumの男女同権世界ランキング 
http://reports.weforum.org/global-gender-gap-report-2016/rankings/ 
  サウジアラビアは144か国中で141位、日本は144か国中で111位。両国がともに国連の世界の女性の地位向上のリーダーとなる国に選出された。 
 
■国連の監視団体 UN Watch 
https://www.unwatch.org/no-joke-u-n-elects-saudi-arabia-womens-rights-commission/ 
今回のサウジアラビアのメンバー入りを最初に報じたのがこの監視団体だったようだ。1993年に設立され、スイスのジュネーブに本部を置いている。創設者は米国の国連代表だったMorris B. Abram氏だったとウェブサイトに書かれている。サイトを見れば米国の(右派的な)価値観が感じられる。 
 
■「女性活躍社会」掲げる安倍政権、日本の女性議員比率が世界最下位レベル(鷲尾香一/ジャーナリスト) 
http://biz-journal.jp/2016/05/post_15056_2.html 
 
■NHK経営委員・長谷川三千子氏のコラムが波紋 「男女共同参画」批判でツイート1500超える(J-Castニュース) 
http://www.j-cast.com/2014/01/09193808.html?p=all 


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