2017年05月04日19時31分掲載
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人権/反差別/司法
【資料共謀罪】「すでに共謀罪は始まっている」 岐阜・大垣市で警察が常時監視し企業に通報
岐阜県大垣市上石津町と不破郡関ケ原町に連なる山の尾根に、中部電力子会社である(株)シーテックが大型風力発電施設の建設を計画した。風力発電施設(風車)による健康被害、環境被害などを懸念した地元自治会や市民グループが勉強会を開いていた。地元大垣警察が、それら市民の個人情報を、事業者シーテックに提供し、「反対運動をさせないための意見交換」を行っていた。(大野和興)
事件の経過はこうだ。
朝日新聞名古屋板が2014年7月24日付けで「岐阜県警が個人情報漏洩」とトップ記事で報道して、事件が明るみに出た。
2017年2月4日の東京新聞と中日新聞に、次のような記事が掲載された。
「岐阜県大垣市での風力発電事業計画をめぐり、岐阜県警が反対派住民を監視、収集した情報を事業会社に提供した問題で、住民らは昨年十二月、表現の自由を公権力に干渉されたとして、県に損害賠償を求める訴訟を起こした。警察の市民運動などへの監視や情報収集はかねて繰り返されているが、政府が今国会に提出予定の共謀罪法案が成立すれば、同罪を盾に監視が一段と強まることは確実だ」
大垣署とシーテック社は2013年から14年にかけ、4回にわたって情報交換会を重ねている。住民は2014年11月10日、県公安委員会に「苦情申立て」を行い、同日岐阜地検に警察を「地方公務員法に基づく守秘義務違反」で告発した。岐阜県警は2014年11月19日、これは「通常の警察業務」であると回答。告発を受けた岐阜地検は翌年の2015年12月14日、「不起訴」とした。こうした経過を受けて4人の市民が2016年12月に国家賠償請求訴訟を起こし、第1回口頭弁論が2017年3月8日に岐阜地裁で開かれた。
住民側は警察とシーテック社の意見交換会の議事録を入手している。回覧印も押された生々しいものである。そのなかから大滝警察の発言をいくつか拾いだしてみた。
「同勉強会の主催者である M輪…夫氏やM島氏が風力発電に拘らず、自然に手を入れる行為自体に反対する人物であることを御存じか」
「大垣市内に自然破壊につながることは敏感に反対する『K藤…子氏』という人物がいるが、御存じか。本人は、60歳を過ぎているが東京大学を中退しており、頭もいいし、喋りも上手であるから、このような人物と繋がると、やっかいになると思われる。 このような人物と岐阜コラボ法律事務所との連携により、大々的な市民運動へと展開すると御社の事業も進まないことになりかねない。大垣警察署としても回避したい行為であり、今後情報をやり取りすることにより、平穏な大垣市を維持したいので協力をお願いする」
「M島住職が、平成26年度「岐阜コラボ法律事務所友の会」の役員になった。また、M輪…夫と交代で友の会役員を行っているようである」
「M輪…夫は、岐阜コラボ法律事務所の事務局長である「F田…子」と強くつながっており、そこから全国に広がってゆくことを懸念している。現在F田…子は気を病んでおり入院中であるので、速、次の行動に移りにくいと考えられる」
「今後、過激なメンバーが岐阜に応援に入ることが考えられる。身に危険を感じた場合はすぐに110番して下さい」
これをみると、警察が監視して得た情報をすべて事業者に流していることがわかる。共謀罪が成立すると、政府や地方公共団体、企業のすることに異議を唱えたり反対するものは、常時当局の監視・捜査対象になると懸念されているが、この岐阜・大垣の怒っていることは、されが懸念などではなく、すでに実際に起こっていることがわかる。
◆大垣の事件については、「大垣警察市民監視違憲訴訟の勝利をめざす『もの言う』自由を守る会」ホームページに詳しい。
https://monoiujiyu-ogaki.jimdo.com/
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