2017年05月05日14時38分掲載
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人権/反差別/司法
【資料共謀罪】「すでに共謀罪は始まっている」 山城博治逮捕は「共謀罪先取りであり予防拘禁」だ
普通の市民も、普通のグループ・団体も取り締まり当局がそうだと見込みさえすれば、具体的な実行行動はなくても犯罪者・団体とみて捜査、拘束できる共謀罪。すでにそれを先取りするような事件も起こっている。沖縄・高江のヘリパット建設反対運動の現場で逮捕され、五か月もの長期間、再逮捕を繰り返されて拘束された基地反対闘争のリーダー山城博治さん(沖縄平和センター議長)の例は、その典型といえる。(大野和興)
山城さんは2016年10月17日、沖縄県の米軍北部訓練場において、有刺鉄線を1本切ったとして器物損壊容疑で逮捕された。同20日に勾留が決定、その後当局は、軽微な犯罪での逮捕・勾留・起訴を繰り返した。その間、山城さんは、家族とも面会できない状態が続いた。裁判所が長期にわたって家族も含めた接見禁止処分を認めていたからだ。
また、靴下等の生活必需品の差し入れも2カ月以上禁じられ、さらには那覇地検は、国民の最低限度の権利である弁護士との接見にさえもさまざまな注文をつけ続けた。山城氏にあてられた励ましの手紙約400通も全く本人のもとに届かないようにされていた。国際人権団体アムネスティは国際的にもまれにみる国家による人権侵害として、日本政府に抗議、その状況を世界に発信した。
山城さんが保釈されたのは年を越した2017年3月18日。五か月後ということになる。同じように現場で逮捕され、長期拘留された市民は複数いる。
この山城さんの微罪・長期拘留に共謀罪の先取りをみる人は多い。報道記者でテレビキャスターの金平茂紀さんは、沖縄タイムスの執筆しているコラムでこれは治安維持法下で行われた「予防拘禁だ」と書いている。
「山城氏はなぜやられたのか。彼は非転向を貫く米軍基地建設反対運動の象徴的存在であって、まさにそのことが彼が長期勾留を課された理由なのである。それを裏付ける種々の事象がある。
僕らの国の司法にはかつて『予防拘禁』という仕組みが合法的制度として存在していた。戦前、あらゆる社会運動を弾圧する機能を果たした法律に治安維持法があった。この法律に違反したとして摘発された受刑者のうち、非転向、あるいは転向が不十分だとみなされた者は、『再犯のおそれあり』として出獄を取り消し勾留し続けることができる制度が「予防拘禁」だった。
僕は山城氏の尋常ではない長期勾留や接見禁止措置を考えた時に、この治安維持法下の「予防拘禁」のことをすぐに想起した。今、政権は『平成の治安維持法』と言われている共謀罪法案(彼らによる呼称はテロ等組織犯罪準備罪法案だが)を国会に上程し成立を急いでいる。この動きと山城氏逮捕・長期勾留の動きは連動したものと思わざるを得ないのだ」
金平さんは、この指摘に続いて以下のように述べる。
「実は山城氏逮捕の捜査を顧みる時に見過ごせない司法警察・検察の動きがある。山城氏の逮捕・再逮捕と相前後して東京、神奈川など全国十数カ所で家宅捜索が行われ、主にパソコン、USBメモリーやハードディスクなどの記録媒体、携帯電話などを集中的に押収していった。パソコンの押収点数は計8台、記録媒体が15台、携帯電話も7台が押収された。
捜査当局はこれらの押収物から、メールやラインなど会員制交流サイト(SNS)での通信記録を細かく掌握しチャートを作成していった。なぜそんなことをするのか。彼らは、米軍基地建設反対運動を、山城氏を「首謀者」とする壮大な犯罪組織に見立てようとしているのである。「一味」が事前に「共謀」してあのような大反対行動を企てているのだと。
「山城氏の公判に証拠申請されている膨大なビデオ映像の記録(ブルーレイディスク数十枚)はどのようにして撮影されたかを想起してみるといい。彼の行動の一挙手一投足をバーの先に取りつけた小型ビデオカメラ20台以上で、警察、防衛局等の『撮影班』がよってたかって撮影したものがそれである」
金平さんは最後に、「沖縄ではプレ『共謀罪』捜査が先取りされている」と結論づけている。
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