2017年06月02日16時37分掲載
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アフリカ
【西サハラ最新情報】 モロッコ北部・リーフ地方の「職よこせデモ」 平田伊都子
2017年の断食月ラマダンが、5月27日に始まりました。 この日から、約一カ月間、日の出から日没まではいっさいの飲食を絶つようにと、イスラム教は命じています。 その間、タバコもセックスも禁じています。ラマダン明けは6月26日と予測されています。 但し、お月さま次第で、予測は外れます。 イスラム歴は月の満ち欠けで決められます。
ラマダンの前日は、厳しい<行>が始まるというので、イスラム教徒の善男善女はイスラム教礼拝所のモスクに出かけ、集団礼拝をします。 今年は金曜日と重なりましたので、世界中に、「ラー・イラーハ・イッラーラー、、(アラビア語で、神はただ一つ)」という祈りの声が響き渡りました。
(1)5月26日、キューバ到着:
断食月ラマダンの前日、ガリ西サハラ難民大統領はキューバに到着し、カストロ・キューバ大統領から大歓迎を受けた。二か国の首脳は、歴史的な友好関係を改めて確認し、西サハラ独立に向けての国際的な協力体制と連帯を約束した。キューバ大統領は。「西サハラ人の民族自決権行使である国連西サハラ住民投票は、一日も早く実行されるべきだ。そのためには、西サハラ人のみならず、世界中の自由を愛する人々が手を携えて、国連に迫らなければならない。キューバは変わらぬ支援を、西サハラ人民に捧げる」と、言明した。
RASD(西サハラ・アラブ・民主。共和国)をキューバは1980年1月20日に正式承認し、ハバナには西サハラ大使館を置いている。毎年、西サハラ難民の留学生を受け入れ、西サハラ難民キャンプに一つある病院にはキューバ人の医師と看護婦を、医薬品や医療器具ともども送り込んでいる。
(2)5月26日、モロッコ北部・リーフ地方のデモ:
同じラマダンの前日、モロッコ北部の漁港アル・ホセイマで、住民が「職をよこせ、」と訴えるデモンストレーションを起こした。デモを取り囲んだモロッコ警察の目標は、指導者ナセル・ゼフザフィの逮捕だった。彼も無職だ。警官は演説するゼフザフィに突撃したが、支持者たちが彼を守り脱出を助けた。
このモロッコ北部リーフ地方でデモがあるのは、初めてのことではない。2016年10月28日、アル・ホセイマでムフシン・フィクリ(31)という名の魚売りがモロッコ警察に惨殺された時、数千の住民が訴えてデモを蜂起した。魚売りは彼の魚と共に、モロッコ警官の命令一下、ゴミ処理ダンプの中で圧殺されたのだ。彼の死は、2010年に<アラブの春>を巻き起こしたチュニジアの果物売りに例えられた。それ以来、アル・ホセイマではモロッコ王政の<汚職、独裁、不正>を非難するデモが続き、デモの波紋はナドール、タンジェ、カサブランカ、そして首都ラバトにまで広がっていった。アル・ホセイマの人口は現在58097で、住人の20%近くがデモに参加したことになる。モロッコでは官製デモ以外のデモは禁じられている。
(3)5月29日、デモ指導者と仲間をモロッコ機動隊が逮捕:
5月30日、BBC、 ロイター、 アル・ジャジーラ、AFPなどが、デモ指導者のゼフザフィがモロッコ警察に逮捕されたことを伝えた。ゼフザフィとその仲間20人以上が、国家の治安を脅かしたという罪で、機動隊によって拘束された。30日の夕方、数千人の市民が、ゼフザフィたちの即時釈放を求めてデモを行った。デモは翌31日も続き、再び首都ラバトなどの都市に広がっていった。
モロッコ北部のリーフ地方に住むリーフ人の反骨精神は、突然爆発したのではない。
この地域は歴史的にモロッコ太守(後のモロッコ国王)から疎まれ、<リーフ人>は貧しく差別されてきた。1920年にリーフ人のアブド・アルカリームがリーフ地方で反乱をおこし、1923年にリーフ共和国を建国したが、1925年にリーフ共和国は太守とフランスに潰された。1956年3月2日にモロッコは独立し、フランスやスペインの援助を受けて経済再建を進めた。が、モロッコ国王は反抗心と独立心が旺盛な<リーフ人>の粛清を続けた。
疎外された<リーフ人>は食べるために、フランス領アルジェリアのワイン工場で季節労働者として働き、フランスの国籍を手にする者もいた。が、アルジェリアが独立し出稼ぎ移民が禁止されると、一部の<リーフ人>はヨーロッパに出稼ぎの場を求めてなだれ込んでいく。そして、ヨーロッパの交易中継点と言われるベルギーのブリュッセルに拠点を置くようになった。
イタリアのルクミニ・カリマッチとロレンツオ・トンドが2016年9月20日に、<モロッコ−IS−麻薬商売>という題の記事を流した。それによると、モロッコ北部リーフ地方産の麻薬ハシッシはモロッコ北岸で船積みされ、リビアの地中海沿岸に荷揚げされ、その後、陸路でエジプト、中東、シリア、トルコ、バルカン半島を経て、ヨーロッパに浸透していくという新ルートで運ばれているそうだ。一方、30分とかからないジブラルタル海峡旧ルートも生きている。ヨーロッパの街に辿り着いた麻薬ハシッシは、1キログラムが約10,000ユーロ(1,143,775円)に跳ね上がる。
ちなみに、IHS Country Risk(リスク状況に関する総合情報会社)が2015年度IS収入の7%は、ハシッシ麻薬密輸によるものだと報告している。
(4)2017年6月1日、昼の国連記者発表:
国連では毎日昼頃、記者発表を行っている。6月1日昼、(日本時間6月2日午前2時)記者会見室でリー記者が、「モロッコのリーフ地方で、6日間にわたってデモが続いている。このデモは、チュニジアに発した(アラブの春)住民運動に基を発している。逮捕された指導者ナセル・ゼフザフィは3日間のゼネストを呼びかけた。このニュースは世界中に流れている。国連と国連政治局は周知しているのか?」と、質問した。ステファン国連報道官は、「ノ〜、モロッコに関して、本日のコメントはない」と、短く答えた。さらに、リー記者は、「西サハラ国連事務総長個人特使の任命は決定したのか?」と、聞いた。ステファン国連報道官は、「任命の承認作業は終わりに近づいている。結果が出れば、即、お伝えする」と、答えた。前々日には、アブデル・サラ―ム記者が、「モロッコとアルジェリアとの国境で、41人のシリア難民が足止めを食らっている。国連はどう対応しているのか?」と質問している。これに対してステファン国連報道官は、「この難民問題は、UNHCR(国連難民高等弁務官)が扱っている。その結果を受けて我々は行動する」と、答えた。
6月2日の「パリ協定脱退」というトランプ宣告を待つまでもなく、国連最大のスポンサーであるアメリカが「国連分担金大幅削減」を強行するのは間違いない。グテーレス国連事務総長がニューヨーク大学で「仕送りを止めないで!」と、訴えたのに、、
「アメリカは当てにできない。私たちは私たちでやっていこう、、」という、メルケル。ドイツ首相の言葉がキラキラ光ってます、、
ハシッシの語源であるハシーシュはアラビア語で草を意味します。 麻薬ハシッシの原材料となる大麻草の大半が、モロッコ北部のリーフ山地で栽培されています。 が、リーフ農民の大部分は、安い賃金で大麻草を育てているのです。 麻薬ハシッシの製造から販売まで、金になる部分を仕切っているのは、巨大な国家単位の組織です。
「アッラーフ・ヤアリフ・クッラ(神様は何もかもご存知)」と、断食をズルして飲食する輩を、こんな言葉で宗教指導者は戒めます。 モロッコでは、最高宗教指導者の国王を、誰が戒めるのでしょうね??
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之 2017年6月2日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
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