2017年06月05日00時07分掲載
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政治
日本は秘密警察国家になった 公安情報を握り、操る安倍官邸
安倍政権がもつなんとも嫌な感じや暗さはどこから来るのか、かねてから疑問だった。その謎が解けた。政権を批判する個人、元公務員、ジャーナリストらへの誹謗中傷を含む人権侵害が続いている。さらには、重大犯罪を犯し、逮捕状まで出たジャーナリストを官邸でかばい、もみ消すという前代未聞の事態も明らかになった。私的な会食の場で政権の外交批判を話したら、どこでどう伝わったのかその外交官が更迭されるという出来事もあった。これらの行為すべてに公安警察が関わり、警察当局から出向した安倍首相の補佐官がその指揮を執っていることが次第に明らかになっている。いま、この国は次第に秘密警察国家化している。安倍政権の薄汚さの原因はここにある。(大野和興)
◆監視し暴く
4月22日付けの読売新聞を開いて、「やられた」と思った。記事を抜かれたという意味でに「やられた:ではなく、権力に反抗する人がその権力に「やられた」という意味だ。すぐ、以下のような文章を書いてツィッターに投稿した。
加計ご意向文書の出元とささやかれている文科省前川前次官がやられた。今日の読売で「出会い系バー通い」。ウィキリークスのアサンジやられたのも女性問題。読売記事の出所は官邸だろう。これで第二第三の文書が出るのを抑えたつもりだろうが、FBI長官をクビにしたトランプになるか。記者の出番だ。
ここで書いた「加計ご意向文書」とは、内閣府が文科省に対し、「官邸のトップレベルのご意向」というカンムリをつけて、文科省に加計学園獣医学部新設の認可を迫ったという文書のことだ。前の文科省事務次官の前川喜平氏は、実名で文科省の内部文書をもとにこのことを暴いた。
この読売の記事を見て、同じことを感じたジャーナリストもいる。『LITERA-本と雑誌の知的再発見』というネットメディアが同日付でこんな記事を出した。
読売新聞が22日の朝刊で突如、報じた文部科学省の前川喜作・前事務次官の“出会い系バー通い“記事。刑事事件にもなっていない官僚の下半身ネタを、大手新聞がなんの物証も提示せずに報じるのは前代未聞だが、当サイトはこの読み内新聞記事が官邸による加計学園問題の実名告発ツブシの謀略だったと22日に断じた。次いで週刊新潮が、「安倍官邸は警察当局などに前川前次官の醜聞情報を集めさせ、友好的なメディアを使って取材させ、彼に報復するとともに口封じに動いた」と書いた。
要するに安倍官邸は加計学園問題が出る前から、要注意人物をみなされる人に公安警察を張り付かせで個人情報を収集、その人物の口を封じる必要が生じたら、その情報をちらつかせたり、権力側のマスメディアを使って報道したりした、ということである。今回、官邸に使われたマスメディアが日本一の部数を持つ読売新聞だった。
◆逮捕状を握りつぶし、もみ消し
警察上層部が安倍首相に最も近いとされているジャーナリストの准強姦罪をもみ消し。まるで江戸次代の悪代官が登場する時代劇を彷彿とさせる出来事が現実に起こった。そのジェーナリストとは元TBS記者で、『総理』(幻冬舎)などの著書があり、ひところテレビに出まくって安倍首相を持ち上げていた山口敬之氏。彼に対し逮捕状まで出たのに、なぜか逮捕状が執行されず、その後東京地検で不起訴処分となった。なかったとして、今月29日、被害者の詩織さん(苗字は非公開)が会見を開いた。
詩織さんによれば、2015年4月、当時TBSワシントン支局長であった山口氏と都内で飲食した際に意識を失い、詩織さんが気がつくとホテルで山口氏に性的暴行を加えられていた。薬を使われたともいわれている。準強姦罪の「準」とは意識がない相手に性行為を行うことを指す。詩織さんは、ホテル従業員の証言や防犯カメラの記録映像、山口氏の体液などの証拠をそろえて告発。警視庁高輪署は2015年6月に山口氏の逮捕状を取った。だが、高輪署の捜査官は捜査官は詩織さんに次のように伝えてきた。
「今、(山口氏が)目の前を通過していきましたが、上からの指示があり、逮捕することはできませんでした。私も捜査を離れます」
この事件を最初に報じた週刊新潮によると、山口氏の逮捕をやめさせたには中村格警視庁刑事局長(当時)だという。この事件にはさらに安倍官邸で情報部門を総括する北村茂内閣情報官が絡んでいるといわれている。北村氏は首相直属の内閣情報調査室のトップで安倍首相とはきわめて近く、公安部門を握り、安倍特務機関ともいうべき働きをしているともいわれている。
準強姦罪が週刊新潮に掲載されることをつかんだ山口氏は、その対応を北村氏に相談していた。そのことが明かになったのは、山口氏が北村氏に相談したメールが誤送信で週刊新潮に届いてしまった、というあほくさい出来事からである。いずれにしろ、山口氏に準強姦罪もみ消しに安倍官邸がぐるみで当たったことを、このエピソードは示している。
◆私的な会話が筒抜け
外務省は6月1日、韓国・釜山の森本康敬総領事(60)を退任させ、後任に道上尚史ドバイ総領事(58)をあてる人事を発表した。政府の方針に異を唱えたことで、事実上更迭されたと見られている。産経ニュースなどが報じた。
森本氏が釜山総領事に着任したのは2016年6月でまだ1年しかたっていない。総領事の任期は通常2〜3年間で、約1年での交代は異例。日本政府は同年末に在釜山日本総領事館前に慰安婦を象徴する「少女像」が設置されたことへの対抗措置として、長嶺安政・駐韓大使とともに森本氏を2017年1月から4月まで一時帰国させていた。森本氏は、集団的ヒステリー状態に陥って、大使や総領事を帰国させた安倍政権の対応を批判したとされている。
朝日新聞デジタル版は、複数の政府関係者の話として、森本氏が帰国中に、私的な会食の場で安倍政権の対応を批判したことを、首相官邸が問題視していたと報じている。私的な会食での話がなぜ官邸の漏れ、こうした処分となって現れたのか。いたるところに密告網をつくり、自身が批判されたら報復する政治が、最高権力者によって行われていることがわかる。どうにも気持ちの悪い話である。
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