2017年06月08日23時07分掲載
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欧州
フランス:「テロ対策」の名で歯止めのない弾圧
フランスでは新しい大統領になっても国家非常事態の延長を重ねていると本紙では6月5日に報じた。国際人権団体アムネスティはテロと闘うためにあるはずの権限が、平和的な抗議行動の鎮圧に頻繁に使われており、法の支配にもとづく民主主義が危険にさらされている、と懸念を示している。アムネスティの調べでは、移動の自由と平和的な集会の権利を規制する数百もの不当な措置が、テロ対策という口実で発令されてきた。(大野和興)
アムネスティ国際ニュースは次のように述べる。
非常事態法は、市民をテロの脅威から守るためではなく、市民の抗議行動を抑えつけるために乱用されているのが実態だ。
非常事態と称して、何百人もの活動家、環境保護主義者、労働者の権利を訴える活動家らの抗議への参加を不当に禁止し、彼らの抗議する権利を奪ってきた。
2015年11月13日のパリ襲撃事件の翌日に出された非常事態宣言は、これまで5回延長されてきた。非常事態宣言の下、広範囲な介入措置が正当化されている。曖昧な根拠でデモを禁止したり、個人のデモ参加を妨げる措置もあった。先日、マクロン大統領は、非常事態の6回目の延長を議会に要請すると表明した。
非常事態では、各県の知事が「治安への脅威」などという極めて広範で漠然とした理由で、予防的措置としてあらゆる集まりを禁止することができる。こうした権限で、平和的な集会の自由がしばしば過度に制限されている。
これらの制限は、当局が特に根拠を示さない限り、抗議行動は平和的とみなすべきだとする国際法の前提に反する。抗議が基本的権利ではなく、潜在的脅威とみなされているのだ。
非常事態で敷かれる規制に勇敢にも抵抗して、多くの人びとが抗議に繰り出してきた。しかし、治安への脅威とは思えない平和的なデモに対して、治安当局はしばしば、警棒、ゴム弾、催涙ガスなどで無用なあるいは過剰な力を行使した。
その結果、少なくとも数百人のデモ参加者が、警官らの暴力で負傷した。参加者の中にも、暴力行為におよぶ者もいたが、数は少なかった。救急隊員の団体の推定では、労働法改正に反対するデモの参加者で、警官らの暴力で負傷した人は、パリだけでも1,000人近くにのぼった。アムネスティは、警官4人が学生のパコさん(16才)を、警棒で殴る、蹴るなど暴行を加えながら逮捕する様子を撮った映像を入手した。目撃者2人がアムネスティに「パコさんはなんの暴力もやっていないのに、警官に襲われた」と証言した。
学生のジャン=フランソワさん(20才)は、警官が撃ったゴム弾が左目に命中し失明するという悲劇に見舞われた。「激しい憤りを感じている。以前は、警察を信頼していたのに」とアムネスティに語った。
選挙期間中、マクロン氏は、市民の抗議する権利を守ると公約をしていた。大統領となった今、大統領は、その公約を実行に移さなければならない。労働法改正を巡って、新大統領と組合の間では、すでに亀裂が生まれている。マクロン大統領は、テロ対策の権限を乱用して平和的なデモを規制するのをやめ、恒久的な非常事態国に陥る前に、悪循環を断ち切らなければならない。
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