2017年06月10日20時03分掲載
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コラム
分裂する日本 神のための政治と人間のための政治 〜宗教原理主義政権と世俗派デモクラシー勢力の政治闘争〜
森友学園や加計学園の便宜供与疑惑やレイプのもみ消し疑惑など、安倍政権の言動がすでに限界を超えたと見る人が増えているようだ。何の限界かと言えば民主主義の限界であり、日本国憲法のもとの法秩序や倫理ということになるだろう。ところが、安倍首相も菅官房長官も萩生田内閣官房副長官も責任を取って辞職するような構えはない。だから、一層、安倍政権に反対する人々は不条理劇を見ているような感覚に襲われているのだと思う。この状況をどう見たらよいのだろうか。
その前に、私はこの一文に「分裂する日本 神のための政治と人間のための政治 〜宗教原理主義政権と世俗派デモクラシー勢力の政治闘争〜」といささか仰々しいタイトルをつけたのだが、宗教原理主義とは特定の宗教を政治の中心に据えて民衆を統治しようとする政治イデオロギーである。当然ながら信仰の自由は奪われる。イスラム国がキリスト教徒などにスンニ派イスラム教徒に改宗しなければ殺す、と迫るのも宗教原理主義の立場である。一方、世俗派とは政教分離を原則とする政治勢力である。世俗派とか原理主義と言えば中東の宗教戦争のことで、自分は無関係と思っている日本人が多いかもしれないが、日本人も無縁ではない。昨今、日本会議や神道政治連盟といった言葉がよく語られるように、日本でもすぐそこにある問題なのだ。
安倍首相や菅官房長官や萩生田内閣官房副長官ら日本会議や神道政治連盟のメンバーは日本の神々を信奉している。日本固有の神々の存在を信じ、日本人よりもむしろ神々のために政治をしている人々ということになるのではなかろうか。近代法の原則である政教分離原則にも抵触していると私は思う。昨年のG7のサミットも伊勢神宮のある伊勢志摩で行った安倍首相である。先進国の首脳たちは安倍首相と並んで伊勢神宮の鳥居の前で記念写真を写した。これは世界に対して日本の政治の原点が神々であることを示したシンボリックな儀式だった。
今、日本には戦後導入された日本国憲法というものが存在しているのだが、安倍首相らはこの憲法に反対しており、尊重する姿勢が乏しい。それには理由がある。戦後米国の主導によって制定された、という以上に、この憲法は人間が作り出したものに過ぎない、ということだ。安倍首相は地上に暮らす人間が作り出した法秩序より一段と高みにあるのが神々の秩序だ、と考えているのではないだろうか。だから、今は仮にこの憲法のもとで政治を執り行っているとしても、未来に実現すべき安倍首相の理想とする美しくかつ神聖な秩序から見れば間違った法体系であり秩序であるのだ、と思う。だから、野党の政治家や市民がいかに現行の法律をもとに政権批判をしたとしても、所詮は市井の人間の声であり、さして意味のないことだとやり過ごすことができるのではないだろうか。長い日本の歴史の中で戦後民主主義の70年間は単なる一過性の誤りだったと考えているのだろうからだ。将来、現行憲法は影も形もなく屑籠に入っていると内閣の閣僚たちが思っているならば〜たとえ未だ日本国憲法が有効であったとしても〜彼らの精神の奥には最早憲法を遵守する必要はないのだ、というようなよこしまな思いがあるのではないだろうか。それが首相らが国会の場で野党議員を冷笑する姿勢に現れているように思う。神々のために働いている自分たち政治家の前に、いかなる世俗的な政治組織も立ちふさがることはできないのだ、と。そしてそのことが地上に暮らす国民のためには良いのだ、と。
中東やアフリカでイスラム原理主義の武装勢力が世俗派の法秩序に対する闘争を行っているが、そこにおいても自分たちの信じる宗教的秩序が唯一絶対の価値体系であるのだから、人間が作った世俗的法秩序というものは無視して構わないに違いあるまい。信仰も原理主義となってそれが政治権力や武力と結びつけば宗教的真実に逆らう事象はすべて払拭すべき事柄に過ぎないだろう。滅びるべき悪しき人間の法秩序に彼らが従わなくてはならない理由などは1点もないと信じているに違いない。彼らにとって一番大切なものは人間の言葉ではなく、神の言葉なのである。彼らにとって神々は世俗的な善悪の彼岸にあるのだ。神のためであればいかなる行為も合理化できると首相たちは思っているのではなかろうか。
※安倍内閣の閣僚20人中19人がメンバー 神道政治連盟とは?
(NEWSポストセブン)
https://www.news-postseven.com/archives/20161014_454987.html
村上良太
■共謀罪(テロ等準備罪)を知りたければ昨年トルコで起きた”クーデター未遂”後の政府による野党、ジャーナリスト、教職員、裁判所判事らの一斉逮捕・粛清を参照しよう
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201704010818466
■トルコで憲法改正国民投票 エルドアン大統領の権力を絶大にする憲法改正派が優勢か "第一次大戦後レジーム”からの脱却を100年ぶりに狙う
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201704170100341
■ジョン・ロック著 「統治二論」〜政治学屈指の古典〜
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201312221117340
■トマス・ホッブズ著 「リヴァイアサン (国家論)」 〜人殺しはいけないのか?〜
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201312292346170
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