2017年06月17日10時57分掲載
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コラム
共謀罪とIT産業 IT産業はソーシャルメディアの自由な言論を支援する声明を出すべきではないか
ソーシャルメディアでの言論も対象になると国会で語られた共謀罪が可決し、来月から効力を得ることになりました。そのことで今後、ソーシャルメディアはどう変わるのでしょうか?もし、「危険な」人間関係から自分を切り離そうと思って、様々なグループから参加者が離脱したとすると、だんだんソーシャルメディア自体が中身の乏しい、刺激の乏しいツールになっていく恐れがあります。
そのことはソーシャルメディアを推進するIT産業にとっても産業の危機ということにならないのでしょうか。美しい花畑やレストランの料理の写真と話題ばかりになった時に、それに人々は満足できるのでしょうか。基本的にこのツールは人々が関係を持つことが前提にあります。しかし、共謀罪はそれに反対する力学を及ぼすに違いありません。
そもそもツイッターはその当初から「アラブの春」みたいな政治変革を起こすツールだったのではないでしょうか。実際、アメリカのヒラリー・クリントン元国務長官はオバマ政権時代にソーシャルメディアを使った「民主化」の計画を世界で推進していたという証言があります。アラブの春の起源にも、米国務省の支援があった、と言うのです。ツイッターは瞬時に人々が集会に参加しうる強力なツールですし、フェイスブックは運動の内容やその進展を日々発信していけるツールです。だからこそこの数年、若者だけでなく世界中のあらゆる世代に広まっていきました。今でも民主化運動と切り離せないツールになっています。
今、テロに襲われた英国ではイスラム原理主義武装勢力の洗脳的なサイトを閉鎖すべく、インターネットの世界に国防の手を入れようとしています。この「テロとの戦い」のために、一方で民主化のための運動が抑圧される、ということが起きるとしたら、これらのツールを推進してきたIT産業も、あるいは世界の民主化運動組織も慎重な運用を求める必要があるでしょう。そのことは日本の共謀罪の運用についても言えることだと思います。特定秘密保護法の制定の際に、特定の政治上の主義主張を他人に「強要」したらテロだというとんでもないテロの定義を日本政府は行いました。このことが今も、共謀罪の適用を前にして大きく日本の民主化運動に立ちふさがろうとしています。
ソーシャルメディアを使って非暴力の集会を開いたり、真摯に政治に関する意見交換をしてきた人々をIT産業も業界をあげて、支援すべきではないでしょうか。はっきりと声を上げて欲しいと思います。盗聴や監視、密告が当たり前になるような社会の到来を防がなくてはなりません。
村上良太
■安倍政権の「ニュースピーク」 〜特定秘密保護法の「又は」と「かつ」〜 自民党と官僚の日本語に対する攻撃が続く
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