2017年06月19日06時45分掲載
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欧州
フランス国会議員選挙 フランソワ・リュファン候補が当選 映画「メルシー・パトロン!」で市民運動に火をつけたジャーナリスト
今回のフランスの国会議員選挙で最も注目された選挙区がパリの北にあるアミアンだった。なぜなら、この選挙区はマクロン大統領の故郷であり、空洞化が進むフランス工業都市の象徴でもあったからだ。そして、この選挙区でマクロン大統領の新党グループや極右の国民戦線の候補者らの間で激しい選挙戦が繰り広げられたが、左派グループの「服従しないフランス」の支持を得たフランソワ・リュファン氏が決選投票で逆転勝利を飾り当選した。
リュファン氏はアミアンで出版している左派の新聞「Fakir」の創刊者でジャーナリストだ。アミアンにはタイヤなど自動車の部品工場などが集積している。リュファン氏はこの町に腰を据え、工場の東欧移転などで空洞化し、解雇される労働者のためにペンを執って闘ってきた。
昨年春、3年越しで撮影したドキュメンタリー映画「メルシー・パトロン!」を上映し、この映画が「Nuitdebout(立ち上がる夜)」と呼ばれる市民運動を起こし、運動は瞬く間にフランス全土に広がった。「メルシー・パトロン!」は工場閉鎖に伴い、解雇された労働者の家族が経営者の大富豪を相手に闘うドキュメンタリー映画だった。この1本の映画が既存の政治に甘んじていたフランス人の心に火をともした。この映画の特徴はジャーナリストであるリュファン氏が自ら、闘いの指南役となって映画に登場し、家族に寄り添っていることだ。20代から新聞を立ち上げ、コツコツ地道に積み重ねてきたことが実った。「Fakir」は事実を伝えるだけでなく、労働者に闘いのための情報を与えてきた。
そして、今回の選挙では「彼らには金がある。我らには仲間がいる」「銀行家が大統領になるなら、庶民を国会へ」などのスローガンで手弁当のボランティアを組織して選挙戦を戦ってきた。
筆者は選挙戦中のリュファン氏をアミアンに訪ね、なぜジャーナリストが選挙に出るのかを訪ねた。すると答えはこうだった。
「そもそも僕は物事を変えるためにジャーナリストになったんだ。最初は人々のものの見方を変えようとしていた。そのうち労働組合などとのつながりができて運動にコミットするようになり、映画『メルシー・パトロン!』の場合は半分がジャーナリスト、半分が運動家みたいな感じだった。そんな風にして僕は選挙に立候補するに至ったんだ」
来年閉鎖を予定しているアミアン郊外のWhirlpoolの洗濯機工場には国民戦線のマリーヌ・ルペン党首やマクロン大統領らが訪れ、それぞれの主張を行うなど、工場移転を軸に欧州連合との関係が議論された。リュファン氏も工場前でマクロン氏と激しく論戦したが、マクロン大統領の新自由主義政策を批判している。
1回目の投票ではマクロン氏の新党En Marche!の候補者に24%対34%と10%もの得票率の差をつけられ2位に甘んじたリュファン候補だったが、昨日行われた決選投票で55%対45%と。逆転勝利を収めた。パリの国会で今後、どうマクロン大統領と闘うかに注目が集まっている。
■フランスの政治を変えたい ジャーナリスト・映画監督のフランソワ・リュファン氏が国会議員選挙に初立候補 マクロン大統領の故郷アミアンで始まる熾烈な選挙戦
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村上良太
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