2017年06月22日13時41分掲載  無料記事
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政治

フランス国会議員選挙 極右政党FN(国民戦線)が国会議員を4倍に増やす  マリーヌ・ルペン党首自身も初の国会議員に

フランスの国会議員選挙で予想外にマクロン新党、REM(共和国前進)が350議席を獲得する事態となり、2〜3年前は風が吹くと見られていた極右政党の国民戦線(FN)が得たのは全577議席中の8議席だった。だから、これを失敗と見る人も少なくない。 
 
  しかしながら、2012年の国会議員選挙で国民戦線が得た議席が2議席だったことを考えると、見方によって4倍に急増したとも言える。これはフランスの選挙システムが2回投票制を基本としていて、決選投票で勝たせたくない政党に勝たせないために、多くの有権者が結束する、というフランスの伝統と無縁ではない。国民戦線は2011年に二代目のマリーヌ・ルペン党首になり、先代のジャン=マリ・ルペン党首時代のえげつない強面の政党から普通の市民が選択肢に入れてよい普通の政党に転換しようとしてきた。そして、6年後の今年、国会で議席8を獲得し、マリーヌ・ルペン党首自ら国会議員となった。 
 
  意外なことだが、マリーヌ・ルペン党首自身はこれまで国会議員を経験したことがなく、地方議員を経て欧州議員だったのだ。だから、マリーヌ・ルペン党首にとってもフランスの政治の中心に自分の立場を築いた、ある意味で手堅い前進の年だったともいえるだろう。国政に参画すると言うことはこれまで以上にメディアでの露出度が増えることを意味する。その影響力や発言力も増すだろう。そして、もしマクロン大統領の5年間で経済が上向かなかったら、その時、国民戦線が前進する可能性がある。 
 
  マクロン新党は2009年に政権を取った民主党のように小選挙区制で勝ち抜くために、急ごしらえで左右両派の人々をかき集めた政党だからだ。だから勢いがある時はいいものの、向かい風になった時に脆い可能性がある。大統領の若さも今はそれがプラスに作用しているが、苦難に陥った時に未知数だ。マクロン氏の日頃の言動を見ていると、ワンマン的なメンタリティに思える。一方、国民戦線は長い間に渡ってコツコツ着実に票を伸ばしてきた政党である。国民戦線の人々は今回は鳶に油揚げをさらわれた思いがしているのではないだろうか。そして、もしマクロン新党の支持率が5年後に低迷している場合、国民戦線が再度、注目されるだろうし、その時は左派の「服従しないフランス」との闘いも激化するかもしれない。これら左右両陣営は今の与党に代わる可能性を孕んだ政党である。 
 
 
■マリーヌ・ルペン党首、国会議員に初選出(フランス24) 
https://www.youtube.com/watch?v=Q9d3aqukJeA 
https://www.youtube.com/watch?v=RzwW98Zs6UM 
 
 
村上良太 


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