2017年06月23日15時27分掲載
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検証・メディア
読売”鉄の独裁”にもほころびか 前川出会い系バー報道で混乱する同紙を『週刊文春』がスッパ抜き
白石読売グループ会長が6月22日、日本新聞協会会長に再任された。安倍政権機関紙と化した読売新聞が新聞協会会長を握るということは、これまで機関紙だからという理由で新聞協会に入れなかった赤旗や公明新聞や自由新報も新聞協会に加入可ということになる。同じ日発売の『週刊文春』6月29日号が「読売『内部文書』スッパ抜き」というスッパ抜きを行った。太文字のリードは「『安倍の個人広報紙か』――本誌は入手した文書には、出会い系バー報道への読者の怒りが大量に列記されていた」というものだった。ナベツネ体制への反乱を小さな芽まで含めて押しつぶし、鉄壁の独裁を誇ってきた読売に何が起こったのか。(大野和興)
『週刊文春』がスッパ抜いたのは「東京読者センター日報・週報・月報」など一連の社外秘の内部文書。まず驚くのは、読者からの厳しい批判の声が次々と紹介されていること。もちろん読売の記事を支持する意見もあるが、圧倒的に少数で、加計学園や前川前文部事務次官関連では9割が読売の安倍政権寄りの報道を批判するものだった。
『週刊文春』の記事で分かったことがいくつかある。一つは、の出会い系報道を行ったのは、これまで読売の安倍支持・改憲推進路線を主導してきた政治部ではなく社会部だったということ。読売社会部はかつて、警察当局を向こうにまわして果敢かつ地道な取材で数々の特ダネをものにしてきた伝統がある。それが今や権力の走狗となってしまったということなのだろうか。
第二は読売における権力交代。読売といえば中曽根元首相と親しく、社内で独裁体制を築いているとされてきた渡辺恒雄主筆いわゆるナベツネ体制という印象があるが、いま同紙は現社長である山口独裁体制にあるという。変な動きをすれば、数人の記者を使って行動を確認される。いま、読売社内は「物言えば唇寒し」の状況だと『週刊文春』の記事は書いている。前川氏出会い系バー報道もナベツネはその記事が出るまで知らなかった、という証言を同記事はナベツネ本人から取っている。
第三は、この出会い系バー通い記事は社内の「適正報道委員会」を通っていなかったということ。同委員会は読売内部では「適正」と呼ばれている機関で、記事の正確性を期するため、事前に取材方法や表現、十分な取材がなされているかなどを検討し、掲載の可否を判断する機関。ここでは取材メモの開示や情報源のすべて明かさなくてはならない。つまり確実なウラ取り」がなされていまい記事がはねられることになる。
この「適正」にかからなかったというのは、この記事が政権との関連がある「訳あり」記事で、ウラ取りなさされていなくて、情報源を明かすことができないものだったということになるという推測が成り立つ。
いずれにしても、安倍政権の牙城が官僚の抵抗で揺らいできていると同様、読売の鉄の縛りもほころびが出てきているということだろう。日本の政治の現状を招いた原因の多くは、ジャーナリズムの衰退にある。ここにきて少し変化が出てきたことはうれしいことではある。
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