2017年07月03日11時10分掲載  無料記事
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検証・メディア

首都で安倍政権の歴史的敗北を受け、各紙社説はどうみたか

 東京都議会選挙は小池知事与党の都民ファーストの圧倒的勝利と自民党歴史的惨敗に終わった。一夜明けた6月3日の各紙社説はどう見たか、さわりを追ってみた。(大野和興) 
 
 朝日新聞は、投票結果は小池知事への期待もあるが、それよりも「安倍政権のおごりと慢心に『NO』を告げる、有権者の審判と見るほかない。」という。自民党は自壊したという認識だ。 
 そして、数々の疑惑や共謀罪強行採決などをあげながら「数の力で議論を封殺」した安倍政権の批判、そのうえで臨時国会を召集せよと要求している。 
 都政については、小池都政はこれから政策で力が問われる、とだけ簡単に指摘する。 
 
 「おごりの代償と自覚せよ」と迫るには毎日社説。「この選挙結果は「1強」のおごりと慢心に満ちていた政権に対する、有権者の痛烈な異議申し立てと受け止めるべきだろう。それほど自民党への逆風はすさまじかった」と述べる。与党となった都民ファーストに対しては「新たな知事与党が小池都政を追認するだけになれば、都庁の情報公開は進まない。知事と議会の間には健全な緊張関係が必要だ」と注文を付けている。 
 
 これまで安倍政権寄りというより、政権の機関紙・広報紙ではないかとさえ見られてきた読売はどうか。「『安倍一強』の慢心を反省せよ」と題した同紙社説は、「安倍政権の驕りと緩みに反省を求める。それが首都の有権者が示した意思」ととらえる。しかしその処方箋はといえば、「言葉で『低姿勢』を強調するだけではすまされない。疑惑や疑問には丁寧に説明し、重要政策で着実に結果を出すべきだ」というもの。政権に不信任が突きつけられた以上、官邸のリークで個人の名誉と人権を貶める記事を大きく出した自身の責任にも言及すべきだろう。 
 
 日本経済新聞の社説「安倍自民は歴史的大敗の意味を考えよ」には失望した。日本を代表する経済紙として、一般紙のように政治的な一般論を述べるのではなく、安倍政権の経済運営、いわゆるアベノミクスについて有権者がどう判断したかをきちんと整理すべきだと思うのだが、そこへの言及は一切なかった。 
 
 首都圏の新聞である東京新聞は、地元紙だけあって二本の社説を出した。一つは「大敗の自民『安倍政治』への怒りだ」。もう一本は「都民ファースト風で終わらせぬよう」。 
 安倍政権を論じた一本目は「問われているのは、民主主義の基本理念や手続きを軽んじる安倍政権の体質そのものだ。それを改めない限り、国民の支持を取り戻すことは難しいのではないか」という指摘で締めくくられている。政権の「驕りと慢心」という表面だけの指摘にとどまった読売との姿勢の違いがみえる。 
 もう一本は都民ファーストと小池都政のこれからのあり方に、具体的に注文を付けていて、さすが地元紙という感じがする。 
 
 注目したいのは安倍政権に強引な政治手法に正面から対峙している沖縄二紙の論及である。 
 首都の有権者が示した安倍政権への痛打を、辺野古・高江を抱える地元紙はどう受け止めたか。残念ながら沖縄タイムス、琉球新報とも本土の新聞以上の指摘はなかった。 


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