2017年08月02日21時37分掲載  無料記事
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社会

リニア新幹線の建設残土はどこへ 千葉県の採石場跡地?川崎港の埋立て?  樫田秀樹

 建設中のリニア新幹線工事からは膨大な量の建設残土が出ます。それをどこにもっていくかは重大な問題です。二次、三次の汚染と環境破壊、住民生活への脅威につながるからです。リニア新幹線問題を追い続けているフリージャーナリスト樫田秀樹さんのブログ「記事の裏だって伝えたい」から、その一端をお伝えする。(大野和興) 
 
●リニア計画での川崎市の残土は、千葉県の採石場跡地に行く? 
 
 真剣に書けば長くなるので、ごく簡単な報告です。 
 
 6月22日、千葉県に行ってきました。 
 なぜ千葉県かと言うと、今年3月の時点で、JR東海は川崎市での住民説明会で、神奈川県川崎市の梶ヶ谷非常口(川崎市高津区梶ヶ谷)から排出される残土を、すぐ近くのJR貨物ターミナル駅から貨物コンテナで川崎港に運び、川崎港からは船で千葉県に運び、内陸部の「採石場跡地」に埋め立てると説明しました。 
 
 それまでは、確かに川崎港までJR貨物で運ぶ・・までは公にされていましたが、その先、残土がどこに行くのか全く分からなかったのですが、「千葉県」という具体的地名が出たのは、ああ、やっぱりねというかんじでしょうか。 
 
 ともあれ、千葉県で残土についての市民運動を展開している佐々木悠二さんに連絡を取り、果たして残土山とはどういうものなのかをまずはこの目で確認したいので、案内をお願いできないでしょうかと連絡してみました。 
 
 その佐々木さんは、私からの連絡で「リニアの残土が千葉県の採石場跡地に」との言葉に「あ、つながった」と何かがひらめき、すぐに返信をくれ、本日の案内となりました。 
 
 ごく簡単に書きます。 
 
 千葉県南部には鋸南町(きょなんちょう)という町があり、そこでは鋸南開発という会社が長年、鋸山(のこぎりやま)から採石を行ってきました。その周囲の道はかつてダンプ街道と化すほどのダンプカーが行きかったようです。(写真) 
 
リニア鋸山←鋸南町の採石場の一つ。長年の採石で山が段々畑のようになってしまった。 
 
 
 ところが、鋸南開発は採石をしすぎてしまい、山肌を削るだけではなく、地面も掘り下げてしまい、県から「約束違反だ。埋め戻せ」との指示を受けていました。その深堀したのは47万立米。 
 10トントラックで約7万台もの量になります。 
 
リニア鋸山の深堀地1←深堀りし過ぎて県から「埋め戻せ」との指導を受けた鋸山のふもとの土地。 
 
 そこで会社が県に約束したのが「埋め戻しは採石場内の(売れなかった)土砂で行う。有害物質は入れない」ということです。 
 ところが、この会社、埋め戻し用に置いていたはずの土砂も売ってしまったため、埋め戻し材がなくなってしまった。 
 そこで、会社は「汚染土で埋め立てる計画」を県へ提出。有害物質はダメだと言っていた県は、この計画を受理。 
 
 なぜ? 住民の質問に県は「ここで埋め立てることで不法投棄を辞めさせることができる」と次元の違う回答を返します。 
 
 埋め立てる汚染土壌は47万立米。さらに、その上に100万立米を積み上げるため、合計147万立米の汚染土を受け入れることになります。 
 
 ちなみに、梶ヶ谷の立坑からは(立坑+トンネルで?)約150万立米の「残土」と約100万立米の「建設汚泥」が発生。量としてはほぼ合致します。 
 
 
 汚染土からの浸出水は近くの佐久間川に入り、わずか2キロしか離れていない港にも流れていく。さらに、汚染土の粉塵や泥はねが起こることに、2012年7月、住民が「鋸南町の環境と子どもを守る会」を設立。反対署名や反対協議会も立ち上げ、人口8000人の町でじつに8割の人が反対するまでの大反対運動に発展しています。 
 
 この件は、2014年11月14日、千葉地裁木更津支部に会社への「操業差止仮処分」申立を行うと、8回の審尋を経て、2016年7月20日、裁判所は仮処分を決定。しかし鋸南開発はこれを不服として今年2月8日に異議申立。現在、保全異議審が進行中。 
 
●自然由来の汚染土にこだわる 
 
 住民がもっとも不思議だったのは、鋸南開発がなぜ「普通の残土」ではなく「自然由来の汚染土」にこだわっているかでした。 
 
 そこで佐々木さんが「あ、つながった」と思ったの話になります。もう30年も残土に関する市民運動を展開している佐々木さんは、建設業者が残土をどう排出し、どう運ぶかを熟知しているのですが、リニアの梶ヶ谷非常口は深さ85メートルまでの立坑を掘るわけですが、深く掘るほどに発生するのが地中のヒ素や六価クロムなどです。これは環境に放出されると汚染物質になる。 
 そして、立坑を建設した後は、今度は横方向ににシールドマシンでトンネルを掘り進めるわけですが、佐々木さんの説明では、シールド工法は、薬剤、水、石灰などを混ぜながら、トンネルを巨大掘削機で掘り進めるため、削った岩盤や土砂がいわゆるドロドロの状態になり、また、深い地下から地上へとポンプアップするためにはドロドロにせざるを得ず、そうなると、それはもはや「残土」ではなく、「産廃」になるということです。 
 
 ここで関係者の情報と推測とを整理すると、 
 
●鋸南開発は「汚染土」を待っている。普通の「残土」では受け入れない。 
 
●JR東海は、評価書では、「残土」と「建設汚泥」が出ると書いている。この「残土」も佐々木さんが予想するところの「ドロドロ」の状態で出てくるとしても、JR東海が評価書で書いているように「無害化」をすれば「残土」となる。 
 
●だが無害化にはカネがかかる。実際に非常口やトンネルの建設を担う建設業者がもしそれをやらない、中途半端にしかやらない場合は、「汚染土」となる。 
 
●逆に、「汚染土」を引き受けてくれるのであれば、あえて無害化しない残土をそのまま運ぶとの可能性もある。 
 
 ただし、憶測は書くべきではありません。現時点ではとりあえず情報の材料だけを集め、引き続きの情報を待ちます。 
 
 
●●川崎港の埋立てに使われる? 
 
 千葉に行く数日前に入ってきた新たな情報ですが、 
 
 JR東海は6月1日、川崎市長に宛てて、「梶ヶ谷非常口から搬出する発生土を、川崎市の東扇島の土地造成事業に受け入れていただくよう検討をお願いいたします」と、梶ヶ谷からの残土を港の埋立てに使わせてくれと要請している。埋め立て体積は約150万立米。 
 
 梶ヶ谷の立坑からは約150万立米の「残土」と約100万立米の「建設汚泥」。なるほど、量としてはちょうどいいわけです。 
 
 これに対して、川崎市は6月8日、JR東海に「残土受け入れの可否については、今後、本市としての考え方を整理します」と回答を保留している。 
 
 
 千葉県に運ばれるのか、それとも、川崎港での埋め立てか。 わかりません。 
 
 鋸南町の住民も町役場などに確認をするかもしれず、情報を待ちます。 


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