2017年08月02日21時39分掲載  無料記事
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政治

林芳正・新文科大臣とマンスフィールド研修  日本をアメリカ的に構造改革させた政治家と「美しい国」

   自民党の林芳正氏が安倍改造内閣の文科大臣に就任することになった、と報じられている。安倍政権は日本会議の後押しを受け、アメリカが敷いた戦後レジームを終わらせることを目的にしてきた。安倍首相にとって教育は最も重要な政策であり、長年、安倍首相は日本の軍国主義を批判的に教えてきた日教組を嗤い、批判してきた。しかし、皮肉にも今回、新たに安倍首相が文科大臣に抜擢した林芳正氏は非常にアメリカンな政治家と言ってよい。 
 
  というのも真っ先に、林氏で思い出されるのは林氏がアメリカのレーガン政権の新自由主義政策を推進してきたウイリアム・ロス(William V.Roth,Jr 1921-2003)上院議員の事務所でインターンとして働いたことがあるということだ。ウイリアム・ロス上院議員は1971年から2001年まで5期30年に渡って上院議員を務めた共和党の重鎮であり、「米政界ではレーガン政権下での減税法案で知られ、90年代後半には上院財政委員長として、日米貿易摩擦などに影響力を持った。」(ワシントン共同 2003年12月15日の死亡記事より)このロス議員と林芳正氏が築いた制度に「マンスフィールド研修」という制度がある。アメリカの連邦政府職員が同等の日本の省庁に1年間在籍して日本の官僚システムを体験する制度である。 
 
   マンスフィールド研修に選抜された米連邦職員はまずワシントンDCで10ヶ月間研修を受ける。この10ヶ月の間に日本語と日本に関する知識を集中的に学ぶ。その間に、彼らの専門に合わせた詳細な計画を立て、1年目の終わりに6週間来日し、語学研修とホームステイに参加する。2年目は東京で過ごし、各省庁でフルタイムで勤務する。彼らが派遣される日本の省庁は「国防と安全保障、医療、エネルギーと環境、貿易と経済、電気通信、運輸、教育、銀行など」多岐の分野にわたる。警察庁も含まれる。この制度、どう見ても日本の官僚の人脈や様々な事情がアメリカに筒抜けになる制度である。 
 
   マンスフィールド研修は1994年に始まったのだが、アメリカが日本をアメリカ化するための「日米規制改革および競争政策イニシアティブ」(規制改革イニシアティブ)が設置されたのが2001年のことである。この規制改革イニシアティブから毎年日本政府につきつけられる要望書がいわゆる年次改革要望書である。これは多岐にわたって日本に規制緩和を迫るものだ。2001年と言えば小泉総理とブッシュ大統領の時代である。つまり、その間、アメリカは日本の省庁を分析して、どのような規制が存在するのか、そしてその規制官庁の人脈はどのようなものか、詳細に情報を集めていたと思われるのだ。恐らくその水脈は安倍政権が規制緩和のために官僚を従属させるための内閣人事局を設置した現在までつながっているのではなかろうか。 
 
  このように日本の情報をアメリカにもたらし、日本をアメリカ化する構造改革の準備作業の手はずを整えて出世した林芳正氏を文科大臣に据えることで、安倍首相の考えるいわゆる「美しい国」は推進されるのだろうか。それとも「美しいニッポン州」だったのだろうか。 
 
 
村上良太 
 
 
■マンスフィールド研修と対日政策 
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