2017年08月08日00時37分掲載  無料記事
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国際

マクロン大統領夫人、ブリジット・マクロンさんの「ファースト・レディ」職と巨額手当に対する波紋 ついにマダムも風刺漫画の対象 すでに支持率は36%に

  フランスでも日本やアメリカとよく似たことが話題になっている。それは首相や大統領が奥さんや娘など、選挙で選ばれたわけでもない家族に公務を割り振っていいのか、という議論である。フランスで今起きている騒ぎはマクロン大統領夫人のブリジットさんに「ファースト・レディ」職として特別にオフィスと手当てをつけるという動きにフランス市民が怒って反対の署名を行っていることである。 
 
  フランスの著名な風刺漫画家のWillem(ウィレム)はリベラシオン紙に新作を発表した。共和党の大統領候補だったフランソワ・フィヨン氏が「手紙の返信係の仕事は僕の妻、ペネロープの仕事だったんだ」とぼやいている、というものだ。ペネロープさんと言えば、フィヨン氏が架空の公務を割り振って月々かなりの手当をもらっていたという疑惑が今春浮上して新聞などで糾弾され、大統領選で本命だったはずが、致命的な傷を負って落選しまったことが記憶に新しい。ウィレムがブリジット・マクロンさんの話題を語るのにフィヨン氏の妻の件を持ち出してきた視点は卓抜だし、考えてみるとこの2つの事象の本質は同じなのだ、と考えさせられた。 
 
  すでにマクロン大統領の支持率はYouGov のデータによると36%にダウンしているということである。これはハフィントンポストと提携して調査をしているようだ。インディペンデントやガーディアンなど英国の新聞などが一斉に掲げ始めたのがこの数字なのである。もしかすると、通常のフランスの世論調査会社よりも数字が若干低めかもしれないが、逆に言えばフランスの世論調査会社の数字が少し高めなのかもしれない。いずれにせよ、大きく支持を下げてきているのは確からしい。その不人気の現れが風刺漫画家や人気歌手らにローマ神のジュピターやナポレオンになぞらえられていることだろう。 
 
  ヒラリー・クリントン候補が昨年、米大統領選で惨敗した理由は彼女自身がファーストレディ時代から政界の大物を何年も続けてきて目新しさがなかったこともあるが、その本質はビル・クリントン大統領の妻がさらに大統領になるかもしれないということで、それは民主国家よりも自分たちが銃を取って独立したところの英王朝を想起させたことにある。マクロン大統領もナポレオンに例えられ始めたように、フランス人が革命を起こしたところの王朝とか皇帝を再び思い出させていることが原因のようだ。妻に公務を割り振る、ということは民主国家の市民の目には王朝的に映るのである。韓国の朴槿恵大統領に対して国民的な反対運動が起こり、最終的には投獄に至ったケースも大統領が私的な友人に国家機密を漏洩し、公務に関与させていたことだった。 
 
  これら一連のことは昭恵夫人に秘書が5人もつけられ、安倍首相の任務を密かに受けて動き回ってきたのではないか、という疑惑によって、安倍政権の支持率が激減してきたこととも通底するところだろう。現代ではグローバリズムの進展によって過去よりはるかに先進諸国間で同じ現象が起きている。野党は安倍昭恵氏の証人喚問を要求し続けることで、今後も内閣支持率を下げることができる火種を得たのである。 
 
 
※リベラシオン紙に掲載されたウイレム(Willem) の漫画 
https://www.facebook.com/Liberation/photos/a.329987802393.196415.147126052393/10155497326312394/?type=3&theater 
 
 
■ニュースの三角測量 その2 
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■ニュースの三角測量   村上良太 
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