2017年08月08日21時47分掲載
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核・原子力
【たんぽぽ舎発】東電福島第一原発大事故の責任を問う「上」勝俣・武藤・武黒の刑事裁判始まる 山崎久隆
東電の取締役3名、勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長に対する「業務上過失致死傷罪」の刑事裁判が6月30日、初公判を迎えた。2011年3月11日に発生した福島第一原発事故で大量の放射性物質を拡散させ、16万人あまりの住民が避難を強いられた。その際に大熊町の双葉病院や介護施設のドーヴィル双葉から避難した患者44名が死亡、事故収束に当たった作業員など13名が負傷した、業務上過失致死傷罪を問う刑事裁判が始まった。
刑事告発が原発震災の翌年2012年6月、2013年9月に検察が不起訴処分にしたため、同年10月に経営陣6名に絞っての検察審査会への申し立て。2014年7月に勝俣、武藤、武黒の3名について起訴相当の議決があり、検察が再度捜査したものの2015年1月に東京地検が改めて3名を不起訴としたため、同年7月31日に第5検察審査会は再度起訴相当の議決を行った。検察審査会が2回「起訴相当だ」と議決した場合、被疑者は自動的に起訴される。その後、裁判所
が指定した弁護士が検察官役として立証を担う。
1万4千名あまりの市民が、東電取締役や国の責任者など40名を告発してから5年、ようやく責任を追及する刑事裁判が始まった。
◎訴因…東電は以前から巨大地震と津波発生を予見できていた
原発が炉心溶融を起こし放射性物質を拡散させるに至った最大の原因は、福島県沖を含む太平洋岸において発生する可能性が指摘されていた地震と津波だった。
東電は起訴された勝俣元会長と武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長の3人が、それぞれ社長、会長、あるいは柏崎刈羽原発所長、原子力立地本部長、あるいは福島第一原子力発電所技術部長、原子力・立地本部長などを歴任した。
ただ単に東電取締役だったわけではない。経営と原子力安全の最高責任者だった。
事故直後に勝俣会長は「原子力損害賠償法の第三条に基づく免責」を考えていた。これは、民事つまり損害賠償についての考え方だが、刑事裁判でも3被告は同様に主張するだろう。すなわち「異常な天災地変であり予見可能性はなかった」
と。
しかし検察審査会では異なる判断が行われた。
東電は以前から福島県沖を含む太平洋岸で巨大地震とそれに伴う津波発生を予見できたし、実際にしていた。そのための対策も立案し、実行直前に経営判断により先送りした。
結果として3.11で15mを超える津波により原子炉3基を炉心溶融に至らしめ、大量の放射性物質を拡散し多くの人々に甚大な影響を与えた。 その内の一環として事故対応作業に伴う障害の発生と、避難住民に犠牲者を出した。
(下)に続く。
※『月刊たんぽぽニュース2017年7月号に掲載された原稿』
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