2017年08月30日11時09分掲載
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山川出版社 「フランス史」(福井憲彦 編) フランスの歴史に関心のある人には必読書
フランス史について一通り知りたければ山川出版社の「フランス史」(福井憲彦 編)を読むことは非常に役に立つに違いない。6人の研究者がそれぞれの時代を分担して、丁寧でわかりやすく綴っている。先史時代やローマに支配された時代から中世、そして革命に彩られた近代とミッテランが登場する現代までがつづられている。
筆者が今、一番読みたかった部分は近代の革命史から19世紀なのだが、このあたりは編者のリーダーである福井憲彦氏と谷川稔氏が担当している。フランス革命がどのようなプロセスで起き、それがどう進展していったのか、恐怖政治はどう始まったのかは非常に面白いところだが、同時に、もっと興味深いのはその後、19世紀に入って皇帝が出てきたリ、王政が復活したりすることだ。フランス革命と言えば一度、ルイ16世の首をギロチンで落としてから共和制に入った、と思いがちだが、19世紀に王政が復活しており、それほど歴史は単純とは言えない。
日本人から見れば王政(ルイ18世やルイ・フィリップら)と帝政(皇帝となったナポレオンやナポレオン3世)と共和政が入れ替わり立ち替わり現れるのも不思議な現象に見える。さらにナポレオン3世になると、国民投票の手続きで皇帝に就任しているのだ。フランス革命を起こした国民が50年もすると国民投票で皇帝を容認しているのである。ナポレオン1世の場合は革命後の混乱の収拾、という見方あるいは革命に対する反動という事もできるだろうが、甥のルイ・ナポレオン(ナポレオン3世)の場合はその背後に産業資本主義の発展があった。フランスが植民地争奪に積極的に挑戦した時代でもある。資本主義が植民地争奪を必然的に求めた、ともいえる。フランスは日本にもやってきて徳川幕府と関係を結んでいる。革命で自由・平等・博愛を掲げたフランスが、次の世紀にはアジア、中東、アフリカなど海外では植民地支配を広げていく。帝政が終わるのが普仏戦争に敗れる1870年のことで、王政を廃した1789年のフランス革命から100年近い歳月が流れていた。読んでいると歴史は一筋縄でいかない複雑なプロセスであることを感じさせられる。
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