2017年09月16日17時15分掲載  無料記事
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福島から

“沖縄と福島”の絆をより一層強めよう 〜福島大学名誉教授・真木實彦さん寄稿〜

 福島大学で教鞭を執ってきた福島大学名誉教授の真木實彦さんは、現在、沖縄県を取り巻く現状を福島県内で伝える活動に携わっている。 
 昨年10月には福島県内の市民団体と協力し、真木さんの大学教授時代の教え子の1人で、現在、沖縄県政策参与を務める照屋義実さん(元・沖縄県商工会連合会会長)を講師に招き、県内各地で講演会を催した。 
 福島市内で長年暮らす真木さんが沖縄県の問題に関わるのは、ご両親が沖縄県出身であるという自らのルーツだけが理由ではない。福島第一原発事故に苦しむ福島県の現状と、米軍基地問題に苦しむ沖縄県の現状が重なって見え、そのことに憂いているためでもある。 
 その真木さんに今回、福島・沖縄両県に対する思いを寄稿していただいた。両県民が互いの境遇を共有し、さらに交流を深めていくよう呼びかけている。(館山守) 
 
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「“沖縄と福島”の絆をより一層強めよう」 真木實彦 
 
 ここ数年、沖縄と福島の間で市民レベルの交流が着実に広がっている。その事例のほとんどは、2011年3月の東京電力福島第一原発事故以降に見られる。 
 この底流には、年を追ってあからさまになる“日本政府と東京電力の事後処理における事なかれ主義”と“全国的な原発再稼働への執拗な動き”が福島の人々の心を深く傷つけている事実が存在することは否めない。 
 事実、福島において「最低限、福島県内の原発10基は完全廃炉の政治的決断に踏み切ってほしい」という県民の総意があるにもかかわらず(福島県が打ち立てた「原発に依存しない福島の再建」という長期ビジョンは、福島県議会を始め、県内59市町村の全てで確認されている)、東電福島第二原発の原子炉4基の廃炉に関しては頑なに県民の声を無視し続けており、さらには条件も整わぬまま一方的に避難住民に帰還を促すなど、あたかも「原発事故など些細なことだった」と言わんばかりである。 
 
 福島で暮らす市民の多くは、沖縄県民の度重なる強固な意志表示にもかかわらず、それらを一顧だにせず、沖縄県名護市辺野古の新基地建設を強行し続ける日本政府の強引かつ強権的な姿勢を見て、自分たちが置かれている状況とダブって見えるが故に、米軍基地問題で苦しむ沖縄県民の痛みを自分のこととして深く受け止めているのだと思われる。福島・沖縄両県の市民レベルの交流が進んでいるのは、こうした背景があるのだろう。 
 
 今後は、次のような観点から、福島・沖縄両県の市民の交流がより一層深まることを願っている。また、他県の方々にも福島・沖縄両県の置かれた状況に関心を持っていただければと思う。 
 
● それぞれが当面している実態を、生の形で出し合い、共通の認識を拡げていく。 
 
● 民主主義の在り方を考える。とりわけ、“地方自治”を無視し続ける国の政策を乗り越えて“民主主義”を私たちの手に取り戻す。 
 
● 両地域が背負ってきた歴史的背景に着目す 
る。 
(沖縄)米軍基地の負荷をもっぱら負い続ける問題。太平洋戦争時に本土防衛の捨て石として唯一の実戦場とされた沖縄が負った負荷。日本近代化の起点での“琉球処分”で傷を負ったウチナンチュの心、など。 
(福島)もっぱら日本の高度経済成長を支えたエネルギー供給基地(水力から原子力まで)。戦前日本を支えた“資源”と“兵士”の供給基地。日本の近代化の起点で“朝敵=賊軍”として負った負荷、など。 
 
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<寄稿者プロフィール> 
 
真木實彦(まき さねひこ) 
 
1932年東京生まれ 
東京大学大学院経済学研究科博士課程中退 
福島大学経済学部(1964〜1997年)、東日本国際大学経済学部(1997〜2005年)での奉職を経て現在、福島大学名誉教授。 
専攻:政治経済学、社会主義経済論、世界経済論 
 
(編著書・主要論稿) 
 
『新マルクス経済学講座』第2巻(有斐閣、1972年) 
 「資本主義の帝国主義段階とレーニン主義」 
 
『科学と思想』29号(新日本出版社、1978年) 
 「現代社会主義の歴史的位相−先進国革命との対比で」 
 
『講座 資本論の研究』第5巻(青木書店、1980年) 
 「『資本論』における『未来社会』把握」 
 
『ロシア帝国主義研究』(ミネルヴァ書房、1989年) 
 「ロシア帝国主義論」 
 
『土地制度史学』147号(1995年) 
 「『20世紀社会主義』の世界史的位相」 
 
『福島は訴える』(かもがわ出版、2011年) 


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