2017年09月19日22時09分掲載
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文化
アラブ文学の英訳者、デニス・ジョンソン・デイビーズが死去 Obituary of Denys Johnson-Davies
今頃になって知ったことだが、今年5月にアラブ文学の偉大な翻訳者だった英国人が亡くなっていた。享年94。名前はデニス・ジョンソン・デイビーズ(Denys Johnson-Davies )で、デイビーズ氏が翻訳活動を始めた頃はこんな風に言われていたと言う。「アラビアに文学などない。あるのは『コーラン』と『千夜一夜物語』だけさ」
こうした中でデイビーズ氏が最初に「近代アラブ短編小説集」として英語で翻訳紹介した作家にはYusuf Idris, Tayeb Salih, Zakaria Tamer, Naguib Mahfouzeら20人がいた。1967年のことで、ナギブ・マフフーズがノーベル文学賞を取るのは1988年のことだから、相当初期から注目していたことになる。今ここに書いてあることはニューヨークタイムズとガーディアンの簡単な紹介なのだが、とにかく英語圏で英語でアラブ文学を読もうと言う読者は当初は少なかったに違いない。だから、デイビーズ氏は子供時代からアラブ世界に関心を持っていたものの、長い間弁護士などの仕事で食いつなぐしかなかったそうだ。そしてカイロで暮らし、カイロの文学者たちと交友したと言う。
翻訳という作業は作業自体に長い時間と労力を費やすし、それ以前に外国語の習得にもっと長い時間を費やさなくてはならない。だから今日の日本のように翻訳が年々停滞している時代においては採算が取れないだろうから、翻訳をする人は教師とか、その他の職業を持つことも求められることが多々あるだろう。翻訳がなぜ大切かと言うと、未知の民族や国民の感情や願い、欲望や美意識を文学を通して学べるからである。外国人の国民性がより理解できれば外交やビジネスの選択肢や可能性もまた広がるはずである。というのも無知であるほど、相手に関して最悪の事態しか想像できなくなり、その結果、最悪の事態を招来する可能性があるからだ。
村上良太
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