2017年09月21日14時57分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201709211457514
欧州
【フランス反ラシスト運動の現場から(1)】「反植民支配アジア人団体」の会議に顔を出しました 青山栄次郎
石川さん、長い間手紙に返事出来なくて申し訳ありません。日本は台風が激しいと聞いています。都会の方では被害は少ないと思いますが、田舎の親戚は御無事でしょうか。先日の土曜日、仕事先でハーフの方と出逢ってそれを報告したかったのです。
ご存知かと思いますが、反ラシスト運動(注1)の仕事を続けています。拙い口調が目立っている所為か、イベントに招待される様になりました。テーマも様々で、政党が関われば数百人という人数の前で発言する事になって色々と嬉しい限りですが、その反面扱う内容が上辺のものに留まり、不安が残るまま拍手を浴びるのは中々慣れません。
息抜きに少数団体の会議に加わる事にしています。マルクス主義を厳守するグループにはやはり感服します。植民支配的外交、資本主義に徹底した反対を貫く人達です。差別とヘイトスピーチには誰でも反対するが、実際に偏見を棄てて生活している人は少ないのは世界のどこに行っても同じではないか。2016年度のフランスにおける人種差別調査によると、“人種は存在すると思いますか?”という質問には60%程の応答者がyesと答えています。あくまでも、”人種は存在しているが、平等であるべき”という意見だそうです。他に”人種は存在しない、即ち上下関係は論外”が30%、”人種は存在して、不平等で当然”が8%という数値でした。平等には肯定的だが人種論に賛成が多数を収めるという事です。なら、ネアンデルタールは別人種ではなく別人類と言う事でしょうか?
土曜日の会議は「反植民支配アジア人団体」と呼ばれるグループによるもので、テーマは:“望ましきマイノリティの神話を考える”でした。参加者は当然肌の色が違う人ばかりで、男性は自分を含めて二人だけでした。インド人が一番の発表者だったことから考えられるのは、十九世紀の人種論では、”黄色人種”なるものは定義が広かったみたいです。日本は豊かな国のイメージがあるだけでやはりアジアの一部として受け止められているという証拠でしょうか。
発表者のいずれも政治活動の初心者であったり、駆け出し社会学者ですが、志の若さを感じる頼もしい方々でした。アジア人と言えば、フランスでは評判が良いのに差別に反対する必要があるのかと度々聞かれます。ゴビノー伯爵という19世紀の思想家によると、アジア人は「文明家が求める様な人材ではあるが、社会に美しさを発揮する人種ではない」と書き、従順かつ勤勉な素質が評価されていました。真面目故に下賎と言われれば悪循環になりかねません:郷には郷に従えば従うほど偏見に適うという事です。アジア人が人種差別を語るのは相変わらず難題ですね。
しかし日本は二次世界大戦前、イタリアとドイツと枢軸という同盟を結んだおかげで、人種差別を主張した国というイメージが定着しています。フランスの極右の代表であるルペン氏が親日を公言し、愛国心家国際ミーティングを開催する程です。2010年の事だったと思いますが。今年は中国人、韓国人、ベトナム人と肩を並んで差別反対を訴えられたのは時代の移りのお陰なのか、欧米ならではの光景でしょう。
”ハーフ”という混血児の存在は今の日本では珍しくもないのは前回の話でしたね。カルチャーギャップを感じるのと、差別という拒絶反応を感じるのと大分違いますし、外国に行けばそれを利用する人もいます。外国育ちとなると、日本に憧れる分、更に希少なものです。今回、人種差別を考えるハーフ仲間の紅一点が出現したという事です。アジア系フェミニストと言うグループの一員で”アジア人女性フェチズム”を考える人だそうです。反ラシストは低学歴という偏見を完璧に翻す人です。その上、日仏カップルは男性が日本人の方が良いと言ってもらえたのは初経験でした。白人が主張するフェミニズムと日本人が主張するフェミニズムは少し意味が違うという事だそうで、日本人が外国人と結婚するとどちらが外国人になるのかという疑問が残るという事です。果たして父は喜ぶのか。細かい話はまだ聞いていないのですが、石川さんも話が合うのではないでしょうか。フランスに遊びに来て頂ける予定は相変わらずないのですか。
来月は人権委員会(注1)の前で活動の年度報告を提出しますので、それまで無音に致しますのでご容赦下さい。
くれぐれもお身体にご配慮下さい。
青山栄次郎
注1:ラシスト=人種差別主義者
注2:フランス国家人権委員会
http://www.cncdh.fr/fr/actualite/rapport-2016-sur-la-lutte-contre-le-racisme-lantisemitisme-et-la-xenophobie
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。