2017年09月25日15時48分掲載  無料記事
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欧州

スイス:食料安全保障を憲法に明記へ 国民投票で可決

 9月24日に実施されたスイスの国民投票の結果、憲法に食料安全保障を盛り込むことが79%の圧倒的な賛成で可決された。スイス26州全てで賛成が反対を上回った。憲法に食料安全保障が明記されるのは“主要国”では初だという。新たに憲法に盛り込まれる項目は、モノカルチャーや多国籍企業による自由主義的な食料支配とは一線を画したもので、食料廃棄について消費者の責任を明記した点も画期的だ。(有機農業ニュースクリップ) 
 
 スイスインフォによれば、今回の国民投票の結果、次の5項目が憲法に明記されるという。 
 
農業生産の基盤を守る必要性 
食料生産はその地域の条件に合わせた手法で行い、資源も有効活用する 
農業と食料サプライチェーンが市場志向型であること 
国際貿易関係は農業と食料サプライチェーンの持続的発展に寄与するものであること 
生産された食料は資源を尊重する方法で利用すること。消費者は無駄な廃棄食料を減らし、この点において自らの責任を一層意識する。 
 
 2つ目の「地域の条件に合わせた手法」は、緑の革命以来の大規模単一栽培(モノカルチャー)からの脱却と、生態系農業(アグロエコロジー)の考え方を明記したものといえるだろう。4つ目の国際貿易が「農業と食料サプライチェーンの持続的発展に寄与するもの」という規定も、「持続的発展」という縛りが入っていることで、議論はあるとしても、基本的に多国籍企業による食料支配とは一線を画するものになっている。 
 
 また5つ目で、食料廃棄への消費者の責任と意識することを求めたことは注目に値する。こうした憲法に盛り込まれる規定が、農業政策や消費者行政にどのように具体的に展開されるのかが注目される。 
 
 
◆<解説>対岸の火事ではない食料安全保障 
 
 スイスのカロリーベースの食料自給率は55%。日本の39%よりは高いとはいえ、欧州の中では低い。そうした状況の中で、今回の食料安保を憲法に明記するという発議があったという。国内的には農業保護という側面もありつつ、どのように安定的に食料を確保するかという点で、日本の状況はスイスより厳しい。しかし、日本での食料安全保障の議論はあまり進んでいないようにみえる。いつまでも安定して輸入できるとは限らないだろう。できることに限界があるとはいえ、市民レベルでの「自給」を日常的に意識することが必要ではないか。 
 
 世界的には20億トンの食料が廃棄される一方で8億人が飢餓に直面しているという。農水省のまとめによれば、日本でも年間621万トンのまだ食べられる食料が廃棄されているという。その約半分282万トンが家庭からの廃棄食料だという。4人家族で年間約100キロの食べられる食品が廃棄されていることになる。無駄の多さに驚かされる。食料安全保障は対岸の火事ではない。 


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