2017年09月29日23時31分掲載  無料記事
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国際

EU各国は受け入れ合意を果たしていない イタリヤとギリシャに残されたままの難民

 イタリアとギリシャには数千人の難民と庇護希望者がいる。EU加盟国はこれらの人びとの受け入れに合意しているが、履行期限の9月26日を過ぎてもその合意はほとんど果たされておらず、受け入れは3分の1にとどまっている。国際人権NGOアムネスティ国際ニュースがその実態を伝えている。(大野和興) 
 
 9月25日付のアムネスティ国際ニュースは次のように伝えている。 
 
 同計画の合意から2年、ほとんどの国が約束を果たしていないため、このままでは数千人の難民と庇護希望者が、イタリアとギリシャに取り残され、見捨てられかねない。 
 
 国別にみると、ポーランドとハンガリーは、これまで受け入れをことごとく拒み、受け入れ数はいまだにゼロだ。同計画への異議を欧州裁判所に申し立てをしたスロバキアは、割り当てられた受け入れ枠902人のうち16人を受け入れただけで、チェコの受け入れは、同2,691人のうち、わずか12人である。 
 
 スペインは受け入れ枠の13.7%を履行し、ベルギーは25.6%、オランダ39.6%、ポルトガル49.1%という状況である。 
 
 EU加盟国では唯一、マルタだけが100%の受け入れを実現した。非加盟のノルウェーとリヒテンシュタインは、自主的にこの計画に参加し、それぞれ、約束していた1,500人と10人の受け入れを果たした。 
 
 特筆すべきはフィンランドで、1,951人(履行率94%)を受け入れた。アイルランドは459人(同76.5%)だった。 
 
 アムネスティが求めるのは、同計画で割り当てられた人数の達成だけではない。労働ビザや家族が再会する施策など別の手段でも受け入れるようにすることだ。 
 
 2015年9月に合意された受け入れ計画は、庇護希望者に平穏な生活を取り戻す機会を提供しようというものだった。しかし、ギリシャでは、昨年3月のギリシャとマケドニア間の国境閉鎖後、数千人の庇護希望者が身動きが取れなくなり、離散した家族との再会をあきらめざるを得なかった。そういう人にとっても、同計画は残された数少ない合法的な選択肢であった。 
 
 計画の期限が切れる前に、ギリシャやイタリアに入国した人には、移住の資格を与えるべきだ。安全でまっとうな生活が送れるとわかれば、不安が減り、国を追われてからこれまでうけてきた心身の傷を少しは癒すことができる。 
 
 同計画が終了しても、各国は、対象となった人びとを引き続き引き受けることができるし、そうしなければならない。それが義務である。 


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