2017年10月06日06時10分掲載
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欧州
“北朝鮮にミサイルを撃たなくてよいのか?” 総選挙のテレビ討論が白熱
10月10日公示、22日の投票の総選挙が事実上、始まった。争点の一つは、核兵器と弾道ミサイルの開発を続ける北朝鮮への対応をどうするか。あなたは選挙に勝利して政権についた時、差し迫った脅威に直面した時、北朝鮮への攻撃ボタンを押すのか、どうなのか――。 そんなテレビ討論が先日行われた。
日本ではなく、今年6月に前倒し総選挙がおこなわれたイギリスでの話だ。
野党・労働党のジェレミー・コービン新党首は長年、社会主義者を名のり、反核運動にも熱心にかかわってきた。その彼はこの選挙で、与党・保守党や大手マスコミ、さらには身内・労働党内の右派からも、「核のボタンを押さないつもりか? 押さないなら首相の資格なし」と攻撃され続けた。
6月2日にイギリス放送協会BBCがコービンを招きスタジオの視聴者と司会で質問を浴びせるという番組もその一つだった。
以下、長くなるが、該当部分のあらまし。
スタジオの視聴者(男性):イギリスが核攻撃の差し迫った脅威にさらされた場合、どう対処する?
コービン: 私は、核の脅威を事前に交渉で解決するために、あらゆることをする。NPTの(核軍縮交渉の)義務に従い、北朝鮮の核問題を解決するために、中国と話し合い、6カ国協議を再開させる。オバマ大統領がイランの核問題を解決するためにやったようなことだ。私はこの世界で、誰であれ、どこであれ、核兵器を使用するということは、とんでもない恐るべきことだと思う。それは、数百万人の生命とコミュニティー、環境の破壊をもたらす。だから私は、そうした危機が起きないよう、積極的に動く。
司会者: 労働党はトライデント(核巡航ミサイル)の近代化を公約しているが、どんな状況下でも核兵器は使用しないと言うのか?
コービン: わが党はトライデントの近代化を公約しているが、それは党の国会議員による決定だ(*コービンは不同意だった)。私は、核兵器を使用しなければならないという考えは、全世界の外交システムが破たんした結果によってもたらされると考える。核兵器の先制使用はあってはダメだ。最終的に世界規模の核廃絶につながる軍縮プロセスに関与すべきだ。簡単ではないが、そうしなければならない。核戦争ですべてが破壊された世界など想像できない。
司会者: あなたが首相になった場合、先制使用だけでなく、報復のためにも核兵器を使用しないのか?わが国の最も高価な防御兵器を、決して使用しないというのか?
コービン: 最も効果的な使い方は、使用しないことだ。
司会者: 質問を回避している。どんな状況下でも使用しないのか?
コービン: いかなる状況下であれ、誰であろうと、核兵器を使う準備をしているという事態は、地球全体にとっての大参事だ。だからこそ、多国間の、一方的ではない、核軍縮政策がなければならないのだ。
司会者: しかし、いまある現実はどうなのだ?
コービン: もちろん、防衛のためにあらゆることをするが、(核兵器の)先制使用はない、使えば、何百万人が死ぬということだ。
視聴者(男性): 北朝鮮やイランが我々を攻撃するのを認めるというのか?
コービン: もちろん違う。だから、先ほど言ったように、オバマ大統領がイランの核問題で合意をつくったようなことをやるべきなのだ。簡単ではないが、北朝鮮を軍縮に向かわせるのだ。
こんなやり取りが6分あまり続いたところで、若い女性が手を挙げた。
「私、人権問題で質問したいのですが、その前にいいですか?(司会者「どうぞ」)このスタジオの皆さんは、核兵器で何百万人もの人を殺すことに熱中しているみたいですね。私にはまったく理解できません!」
ここで大きな拍手が沸き、議論は次のテーマへと移った。
最後までコービンは、核のボタンを押すとも、押さないとも言わなかった。その意味では、逃げ回ったとも言え、実際、マスコミではそう酷評された。しかし、多くの有権者は、彼がけっして「押す」とは言わなかったこと、核とミサイルによる「抑止力」ではなく、外交での紛争解決を最後まで主張したことに、政治家としての一貫性、誠実さを見てとった。
そのこともあってだろう。労働党は、政権奪還はならなかったものの、コービンという偏屈者の指揮の下で大敗するという事前の予想を覆し、1997年以来初めての議席増と、1945年以来最大の得票率の増加を達成したのだった。
さて、日本では――。(西条節夫)
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