2017年10月25日23時26分掲載
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政治
『争点から外された原発問題 〜〜10/22衆院選を終えて』 池住義憲
「自公大勝 3分の2」。今月22日の第48回衆院選結果を、大手各紙はこのような一面大見出しで一斉に報じた。自民・公明両党で、絶対安定多数(261議席)を上回り、3分の2(310議席)をまたしても超えた。解散がなければ、衆院のこの状態は、2021年10月までの四年間、続く。
◆衆院選結果
今回の衆院総選挙は、安倍首相が解散権を乱用して、急遽行ったもの。首相はこれを”国難突破解散”と名付けた。私は今回の総選挙は、「安倍さんが首相であることが最大の“国難”であることを本人が気づいていない/理解していない選挙」である、と思っている。「森友・加計」問題への追求をかわす、大義なき解散総選挙だった。
安倍自公政権がこの4年間、やってきたことは何か。それは、多様な民意を正しく反映しない歪んだ選挙制度下で、多数を得た多数派が行った「数による暴力行為」だ。一例を挙げれば:
・2013年12月の特定秘密保護法
・2016年9月の安保関連法
・2016年11月のTPP関連法
・2017年6月の共謀罪法
など、いずれも強行採決という「数による暴力行為」だった。今回自民党は、小選挙区制下で比例得票は33%だった。しかし、小選挙区を含めた全議席(465議席)の 61%(284議席)を得た。
◆語られなかった「原発」問題
今回、「原発」問題は、争点にならなかった。いや、させなかった。自民党は選挙公約に、「原子力は重要なベースロード(基幹)電源。原発再稼働を進める」と掲げていた。選挙で多数を得た自民党は、原発の新増設に含みを持たせている。国民の信を得たとして、原発依存への逆戻りを着々と進めようとしている。
東京電力福島第一原発事故から、6年8ヵ月。安倍政権は、原発ゼロを目指した前政権のエネルギー政策を、白紙に戻した。原発推進へと、流れを変えた。時計の針を、311事故前に戻した。
現在国内には、廃炉決定済みを除いて、42基の原発がある。このうち、5基がすでに再稼働している。川内原発 1、2号機(鹿児島)、高浜原発 3、4号機(福井)、伊方原発 3号機(愛媛)だ。衆院選公示一週間前の 10月3日、原子力規制委員会は柏崎・刈羽原発(新潟)が 3.11後の新基準に「適合」する、と判断した。そして、福島で大事故を起こした東京電力に、原発を運転する「適格性」がある、と認めた。
この他にも、玄海原発 3、4号機(佐賀)と大飯原発 3、4号機(福井)は、再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査をすでに終えている。2018年にも運転を再び始めようとしている。また、原発運転開始から40年を超えて老朽化が指摘されている美浜原発3号機(福井)と高浜原発 1、2号機(福井)も、2019〜20年に順次再稼働の方向だ。
たまり続ける核のゴミ(高レベル放射性廃棄物)の保管場所や最終処分場の目途は、まったく立っていない。福島県からの避難者は、いまだに5万人を超えている。廃炉や賠償の進展を遥かに上回るスピードで、福島の風化を進めようとしている。
これで、ホントにいいのか。私は、ここでも、多数派による「数の暴力行為」に対して、抗(あらが)う。(了)
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