2017年11月06日22時49分掲載
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コラム
リベラル保守とフランス革命
フランス革命というと平民が王や貴族の首を切り落とした革命、という印象ばかりが強い。だが、そもそも革命の始まりは国王、ルイ16世が始動したことはあまり語られていない。財政難になったルイ16世がそれまで免税されてきた貴族や僧侶の階級にも課税しようとしたことが始まりだった。この時、裁判所のアドバイスを受けて三部会を再開してそれぞれの階級の代表を集めて議論しよう、と提案をしたのはルイ16世だった。だが、議席の配分を巡って人数的に圧倒的に多い人口の99%を占める平民にもっと議席配分を与えよ、という要求が出された。しかし、この声は無視された。そこで平民たちが国民とは税金を払っている私たちだ、と目覚めることになっていった。
しかし、ここで強調したいのは、これですぐに王を処刑したわけではなかったことだ。最初は英国のような立憲王政を目指していたのだ。ルイ16世その人が国政改革の中心にいた。余計なことをしなければそのように進んでいた可能性はあった。実際、ルイ16世は当初は国民に慕われていたのだ。ところが、その過程でルイ16世が自分の軍隊に不審な動きをさせたり、家族で外国へ逃亡しようとしたりしたことから、外国の勢力と結んで改革派を鎮圧しようとしていると考えられ裁判にかけられるに至った。王の死刑を決めた評決もわずかな差だったと言われている。フランス革命は最初から王を殺せ、と言って始められたのではなかったことに注意したい。
フランス人が理性が万能だと考えて、演繹的に革命を起こしたと言うように単純化されがちだが、歴史を見ると経緯はそれほど単純ではないのだ。そのように理性に沿って歴史が進む、と考えるのはむしろ冷戦終結までに主流だった革命史観とか階級史観ではないのだろうか。フランス革命を批判している人自身がそのような歴史観を都合よく切り張りして援用してはいないだろうか。社会主義思想が生まれてきたのはそもそも19世紀である。フランス革命は18世紀の出来事であり産業革命以前の段階なのだ。そしてまた法哲学と言う理論的な面を見ても英国とフランスは影響を与え合っていた。ロックやホッブズの政治思想はルソーよりもはるかに先行して生まれたし、その革命性において遜色がなかったことも思い出すべきではなかろうか。
■保守主義のバイブル 「フランス革命の省察」 下僕と王と貴族と Reflections on " Reflections on the Revolution in France"
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■リベラル保守とフランス革命と日本国憲法
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■保守と革新 言葉の定義に混乱がある 欧州には「プログレッシブ」(進歩主義)という言葉がある。
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■共産党は「保守」政党なのか?
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