2017年11月25日04時35分掲載  無料記事
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アフリカ

【西サハラ最新情報】  新東京勉強会−西サハラ  平田伊都子

「アフリカのジンバブエ大統領が辞任」、「大西洋クロマグロの漁獲枠をモロッコ会議で拡大」などなど、気になるニュースが飛び交う11月21日午後6時半、日本プレスセンタービル9階にある日本記者クラブ会議室で、西サハラの話を始めました。 主催は「新東京勉強会」で、前身はロンドンでプレスを始めとする駐在員の方たちが立ち上げた「東京勉強会」だとか、、東京に戻ってこられても勉強好きな皆さま方は、奇数月に一回、「新東京勉強会」と改名して、活動を続けておられます。 その11月の会にお招きを頂き、西サハラ難民の話をさせていただくことになったという訳です。 この日においでにならなかったあなたに、ざっくりと、講演内容をお教えします。 
 
(1)西サハラって?: 
 西サハラは地球規模で言うと日本の真裏にあり、日本本州の1・1倍の大きさだ。アフリカ大陸の北西端にあり、<アフリカ最後の植民地>と、国連が1960年の<植民地独立付与宣言>で指定している。その時、同じように対象地域とされた東チモールは、1999年の住民投票の結果を受けて2002年に独立を果たした。昨今、世界中で住民投票が大流行りだが、カタルーニャの住民投票は住民が自主的に住民投票をして独立を宣言したもので、、西サハラの方は国連が1991年に約束し、未だに実施されていない国連主催の住民投票だ。西サハラ民族はモロッコに祖国を奪われて42年、国連が約束した国連西サハラ住民投票を待ち続けて25年、になる。1991年に住民投票を受諾したにもかかわらず、2007年から拒否し続けるモロッコと、モロッコを庇うフランスの妨害で、モロッコ・西サハラ両当事者の交渉も暗礁に乗り上げたままだ。 
 モロッコが造った2、500kmの<砂の壁>と呼ばれる600万個以上の地雷防御壁で分断された西サハラは、大西洋岸に面しリン鉱石鉱山などがある五分の四のいい所をモロッコに占領されている。残り五分の一の不毛の砂漠を西サハラ難民政府が管轄している。現在、モロッコ占領地西サハラに約10万人の西サハラ被占領民が、アルジェリアにある西サハラ難民キャンプに西サハラをモロッコの銃で追われた約20万人の西サハラ難民がいる。 
 1990年代半ばになって西サハラに石油、天然ガス、ウラン、、などという鉱物資源が確認された。大西洋クロマグロなど漁業資源も豊富だ。但し、国連は未確定地域(植民地)の天然資源に手を付けてはいけないと、封印をしている。この西サハラ天然資源を狙うモロッコとフランスは、住民投票で西サハラに負けると判断し、モロッコ領有権を主張するようになった。国連決議に逆らってモロッコは、大西洋クロマグロとリン鉱石を取り続けている。が、国連はモロッコを罰しない。 
 
(2)収録した西サハラ民族の決意: 
 2015年末に4年に一度の西サハラ民族大会が、モロッコの妨害を避けるためサハラ砂漠の奥深くで開催された。民族大会にはモロッコ占領地・西サハラからも50人が参加し、 
約3,000人がこれからの独立運動方針を討議した。 
「この14回大会は今までになく重要だ。参加者の多数が国連の延滞沈滞にうんざりしている。.今大会でモロッコや国連への対応を再検討する。モロッコと国連にはこの状況を打破する重大な責任がある。一方で我々の外交努力が実ってきた。やっと国際社会が忘れられた西サハラ紛争に注目し、RASD(サハラ・アラブ民主共和国)を国家承認するようになってきた。」と、ハダドMINURSO(国連西サハラ住民投票監視団)西サハラ代表が語った。「国連西サハラ住民投票に関して、国連が提案し両当事者が受諾し、西サハラは今日まで国連に協力し続けてきた。が、モロッコは住民投票をやりたくない。それに、大国がモロッコに加担している。フランス、、そして、日本もだ。国連と国際法が禁じている西サハラの天然資源、魚とリン鉱石をモロッコから日本は活発に買い上げている。。この密輸行為は西サハラ民族に対する資源侵略で、遅かれ早かれ、我々は日本政府に正式抗議をすることになる」と、ブハリ国連西サハラ代表は筆者を酷く叱った。 
筆者は、西サハラ外交代表団に加え一般難民の声を収録したDVDを、国連事務総長個人特使や国連事務総長室長に送った。みんなの声が届いて、2016年3月5日にパン前国連事務総長が、事務総長としては初めて西サハラ難民キャンプに入った。 
 パン事務総長難民キャンプ訪問に大反発したモロッコは、MINURSO(国連西サハラ住民投票監視団)の文民職員を全員追放し、8月には国連緩衝地帯に軍事侵攻する。モロッコの実力行使に、2016年の国連は振り回された。馬鹿にされた国連安保理がモロッコに対して非難決議を出せなかったのは、フランスが庇ったからだ。 
2017年に入って、東チモール独立運動を助けた元ポルトガル首相で元UNHCR(国連高等弁務官)のグテーレスが新国連事務総長に就任すると、西サハラ民族は喜びに湧いた。 一方、モロッコはフランスの指導の下、AUアフリカ連合に出戻り、西サハラをAUから排除しようと画策し始める。UNからも排除し世界地図から<西サハラ>という名称も排除しようという計略だ。 
 
(3)買収と賄賂に金をつぎ込むモロッコは大金持ち?: 
 モロッコはAU復帰選挙の為、金でアフリカ諸国の投票権を買った。国連第4委員会の席も金で買った。日本のODAを当てにするモロッコのどこにそんな金があるんだろう? 
2017年10月20日、アルジェリア外務大臣アブデルカデル・メッサヘルがアルジェリア経済フォーラムで、「モロッコは麻薬ハシッシを、国営銀行を通じてマネーロンダリングをし、サハラ以南のアフリカにそのあぶく銭をばら撒いている。さらにロイヤル・エア・モロッコが、モロッコ産麻薬ハシッシの運搬を担っている」と、発言した。「誰でも知ってるよ、モロッコ資金源の話は、、」と、外務大臣は一言付け加えた。 
「2016年の米大統領選挙中に、モロッコ国王はクリントン財団へ14億円を振り込んだのも、、」と、筆者の話が佳境に入ったところで「時間です」と、司会者ストップが入った。それ以上の情報はお教えしなかった。 
でもあなたには、続きをお話しします。「14億円振り込みは、米大統領選挙戦中の2016年10月23日にワシントン・ポスト主幹のボブ・ウッドワードが<賄賂>だと、断言している。講演当日2017年11月21日に、モロッコのメデイアMWN(モロッコ・ワールド・ニュース)が、<モロッコ国王がクリントン財団へ14億円を振り込んだことに、トランプは今も不快に思っている。だから、モロッコ米大使の指名が1年近くほったらかしにされていた。駐アルジェリア米大使はとっくの昔、7月に決まったのに、、トランプはモロッコよりアルジェリアがお好き?、、>と、恨めしい思いを吐露している。クリントン大統領に<モロッコの西サハラ領有権>を認めさせようとしたモロッコ王の目論見は<捕らぬ狸>に終わってしまった。 
 
 会の主催者で元朝日新聞大阪局長の後藤尚雄さんや幹事の木方元治さんを始め、30人以上の方々がお集まりになりました。 先輩を前にして、最初のうちは丁寧な口調で話しておりましたが、そのうち皆さんの顔が友達に見えてきて、ついつい乱暴な仲間言葉になっていき、笑い飛ばして終わりました。 楽しかったとおっしゃってくださる皆さんに、「ぜひまた、講演の機会をお願いしま〜す」と、手を振って退散しました。 西サハラ難民の話を聞いていただけるならどこにでも出かけていく積りです。 
 読者の皆さま、もし講演の機会がありましたら、ぜひぜひ、お声をおかけください。 
 
 
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之     2017年11月25日 
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子 


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