2018年01月01日22時24分掲載  無料記事
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社会

「彼女は声を上げた。しかし彼女の国はそれを無視した」 伊藤詩織さんのたたかい、ニューヨークタイムズが1面で報道 

 元TBSのワシントン支局長で安倍首相礼さん本を書いて安倍側近ジャーナリストとして有名になった山口敬之氏がTBSへの就活で面会したフリージャーナリストの伊藤詩織さんを強姦した事件は、本人の証拠をあげての訴えにもかかわらず日本の新聞・テレビはほとんど黙殺したままだ。その一方で米国のニューヨークタイムズ(NYT)、フランスのルモンド、スェーデンで最大の部数を誇る日刊紙ダーゲンス・ニュヘテル紙電子版など欧米の有力誌が相次いで大きく取り上げている。Twitterでは「#FightWithShiori」のタグが立ち、海外紙の報道をもとにこの事件の大拡散が始まっている。国内メディアの沈黙の奇妙さが目立ってきた。(大野和興) 
 
 山口元TBSワシントン支局長の強姦事件を報じたのは、前記メディアばかりでなく、フランスのフィガロ、英国BBCの詩織さんインタビュー、スペインのsン分など多数にのぼる。そのうちNYT2017年12月29日に1面と8面を使って報じた記事を紹介する。1面記事の見出しは「彼女は声を上げた。しかし彼女の国はそれを無視した」という強烈なもの。長文の記事で、事の顛末を加害者の山口氏の話を含め詳細に報じている。その中の次の一節はこの事件に対するNYTの姿勢を示している。 
 
「他の場所では、彼女の主張が大騒動を引き起こしたかもしれない。しかし、ここ日本では、わずかな注目を集めたにすぎなかった」 
 
 言外に、なぜこんな大問題を日本のジャーナリズムは報じないのか、といっている。記事はこんな書き出しで始まる。 
 
「それは春のある金曜日の夜のことだった。日本の有名なテレビジャーナリストが伊藤詩織を飲みに誘い出した。彼女は東京のニュースサービスでのインターンシップは終了しようとしており、そのジャーナリストのつてで新たなインターンシップを探していた」 
 
 記事はその後に起こったことを詳細に追う。焼き鳥屋で軽くいっぱいした後、彼は彼女を食事に誘う。その最中、彼女は意識がもうろうとして気を失う。そしてそのままホテルに連れ込まれ、強姦される。彼女の意識が戻るのは、すべてが終わった後だった。記事は次のように書いている。 
 
「彼女が目を覚ましたとき、伊藤さんはホテルのベッドで山口氏の下におり、裸で、痛みを伴ったと語る」 
 
 彼は詩織さんにレイプ剤を使用したのではないかという推定もある。彼女は警察に訴え、当初は気乗り薄だった警察を動かす。警察は彼がもうろうとした詩織さんの抱きかかえて運び込んだタクシーを突き止め、運転手の話を聞く。運転手は「地下鉄の駅でおろしてくれ」と頼む詩織さんの声を聞いている。山口氏はそれを無視して、ホテルにタクシーをつけさせ、半分意識がない詩織さんを車から引きずり出してホテルに入る。警察はホテルの防犯カメラも入手した。「映像でも、伊藤さんは脱力状態に見えた。ニューヨークタイムズ紙が確認した映像の写真では、山口氏は午後11時20分ごろ、ロビーを抜けて彼女を支えている」と同紙は書いている。 
 
 警察は準強姦罪が適用できると判断、逮捕状をとる。彼女の下着に山口氏のDNAを検出したとの強い証拠も出た。その後の顛末は良く知られている。 
 
 2015年6月8日、ワシントン発の飛行機で東京に到着する山口氏を空港で逮捕するため、刑事が空港に張り込んだ。しかし、逮捕直前、その刑事に電話があり、上司から逮捕しないようにという命令があった。 
 
 詩織さんは話した。 
「私は『どうしてそんなことができるの?』と彼に尋ねました。しかし彼は私の質問に答えることができませんでした」 
 
 官邸が動き、警視庁出身の官邸スタッフが警視庁に働きかけて首相お気に入りのジャーナリストを助けた、というのが有力な筋書きとしてネットメディアでは語られている。間違いないところだろう。山口氏強姦事件はすでに国会でも取り上げられている。国会で問題になり、世界の有力メディアがこれだけ書いているのに、なぜ日本の新聞・テレビは黙殺しているのか。不可解すぎる。 


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