2018年01月08日00時10分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

浜田雅功のブラックフェイスはなぜ問題か? 人種差別問題に詳しいフランスの政治学者Françoise Verges さんに聞く

  お笑いタレント「ダウンタウン」の浜田雅功が大晦日のお笑い特番で顔を黒塗りしたいわゆる「ブラックフェイス」でアメリカの黒人俳優エディ・マーフィのギャグを披露したことが批判を呼んでおり、海外紙でも報じられている。これに対して日本でも批判する声が上がっているが、同時に、顔を黒塗りすることがなぜ問題なのか、という疑問の声も上がっている。 
 
  そこで人種差別問題に詳しい外国人の識者の論に触れた。すると、.屮薀奪フェイスを番組に使った日本人の意図や動機の問題と、△修譴鮃人がどう感じるか、あるいは黒人にとってどのような影響があるのか、という問題とこれら2つの観点を同時に考える必要がある、ということがこのテーマを論じる彼らの考えの基礎にあることがわかった。 
 
  ラシズム(人種差別)の問題に国境を越えて取り組んでいるフランス人の研究者、フランソワーズ・ヴェルジェス(Francoise Verges)さんは日本におけるブラックフェイスの問題を考えるにあたって、まずThe Japan Timesに掲載された1つの記事に着目した。そのリンクは以下。2015年に日本在住のアメリカ人の学者が寄稿した記事である。ちなみにヴェルジェスさん自身もフランスの旧植民地だったレユニオン島出身の黒人である。英国の大学でも教鞭を執ってきたヴェルジェスさんは英国とフランスを往来しながら人種差別や女性差別について多くの本を執筆してきた政治学者だ。 
 
■The Japan Times に掲載された日本におけるブラックフェイスを論じた2015年の寄稿記事。タイトルは”Historically, Japan is no stranger to blacks, nor to blackface”(歴史的に見て、日本は黒人と無縁ではないし、ブラックフェイスとも無縁ではなかった) 
https://www.japantimes.co.jp/community/2015/04/19/voices/historically-japan-is-no-stranger-to-blacks-nor-to-blackface/#.Wk5xb1Q-dBw 
 記事の冒頭で10代の黒人と日本人の混血の少女がブラックフェイスを見て感じた困惑の思いを紹介している。彼女はブラックフェイスをする人たちが本当に黒人に敬意を感じているのか。それならば黒人として生まれてきてもよかったと言えるのか?と問いかけている。この書き込みをした女の子は小学校で皮膚の色が黒いためにいじめを受けたことを告白しているのである。寄稿した日本在住のアメリカ人学者は日本人と黒人との関係、そしてブラックフェイスの日本における歴史を書いている。この問題を考える上で貴重な情報だ。 
 
  このThe Japan Timesへの寄稿記事を紹介しながら、ヴェルジェスさんはこう指摘する。 
 
Francoise Verges 
" Un article de 2015 sur le blackface au Japon, introduit par les nord Americains a la fin du 19e et performe par des acteurs japonais des les annees 1920. L’auteur, Afro-japonais, qui raconte comment ell' etait insulte a l’ecole, fait une critique de l’ignorance << intentionnelle >> - expression de Chomsky pour decrire une ignorance qui masque l’intention de nuire. 
Le blackface n’est pas apparu, comme on a pu le lire, pour justifier l’esclavage mais apres l’abolition pour contrer l’avancement social des Noirs. Jim Crow etait le nom d’un caractere blackface joue par acteur blanc connu qui a donne son nom aux lois Jim Crow." 
 
フランソワーズ・ヴェルジェス 
  「日本のブラックフェイスに関するこの2015年の記事には、19世紀末の北米におけるブラックフェイスの事情や、1920年代に日本でも流行した俳優たちによるブラックフェイスの史実などが取り上げられています。冒頭に出てくる黒人と日本人との混血少女がどのように日本の小学校でいじめにあっていたのか、ということを考えると、『意識的に形成された』無知という問題がそこにあることがわかります。 
 『意識的に形成された』無知というのはノーム・チョムスキーが使った言葉なのですが、人を傷つけようとする意図が潜んでいても実体としては無知である、というようなあり方です。無知といううわべが人を傷つけようとする意図を覆い隠しているのです。 
  ブラックフェイスは記事で書かれているように、奴隷制を正当化するために行われたことではありませんでした。しかし、ブラックフェイスが奴隷から解放された黒人が社会的な地位を上昇させるのを妨げるために行われていたことは事実なんです。ジム・クロウというのはアメリカの白人俳優がブラックフェイスで演じていた黒人キャラの名前です。このジム・クロウの名前をつけたジム・クロウ法というのがありました。」 
 
  ヴェルジェスさんが指摘したジム・クロウ法は「1876年から1964年にかけて存在した、人種差別的内容を含むアメリカ南部諸州の州法の総称。主に黒人の、一般公共施設の利用を禁止制限した法律を総称していう」(ウィキペディアによる)。 
  リンカーン大統領が1862年に行った奴隷解放宣言後に、なんと100年以上に渡ってアメリカの南部諸州に人種差別的な法律が存在していたのである。黒人と白人がバスの座席に同席できないとか、同じ学校に通えない、と言った人種差別の歴史がこのジム・クロウ法に集約されている。この法律がブラックフェイスの出し物と深く結びついていた、というところに歴史の真実がある、ということなのだ。ブラックフェイスの見世物で黒人を笑うことで人種差別を正当化していたのだとしたら、それを日本のTV番組で大々的に行うことは無知を超えて罪深いことだろう。 
 
 
村上良太 
 
 
■マクロン勝利宣言の裏で  反ラシズム(反人種差別主義)集会が開かれる  年々勢いを増す人種差別主義にどう立ち向かうか 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201705080721241 
 
■「個々の政治家以前に『構造的ラシズム(人種差別主義)』を解体しなくてはならないのです」 パリの討論会から 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201707291556216 


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